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第四話:新しい日常

 俺は昨日帰ってきて誰かと飲み明かしていた汚物を、白い目で見る。

 汚物は、途中で潰れたのか、何故かソファーで眠っていたが。

「おきろー元」

 汚物は少し体をよじらせ。

「後、5時間30分28秒・・・・」

 ただの睡眠じゃねぇか、しかも秒数まで指定しているし。

 俺はいらっとして腹に一撃を入れようとした瞬間、汚物はその場から消えていた。

「甘い、それは残像だ。」

 ・・・・・朝から疲れるわぁ・・・・

「元さまが憑いている。やったね?」

 何その悪夢?

「ん、制服渡していなかったな、ほれ。」

 俺は箱とまだ未開封のブラウスだったかそんなものをうけとる。

「これ・・・着るの?」

「あたぼうよ、スリーサイズを寝ているブルまぁ」

 俺が殴ると、奇妙な声を上げながら元がとんでいった。

「・・・・」

 反応がない・・・死んだか?

「うーん、とっさの反応がブルマとかありえねぇよ。」

 隣に、苦笑を浮かべている元がいた。

「I still have lots more to work on.」

 英語でなんか言ってるし・・・・しかもやたらうまいのが腹が立つ。

「とりあえず、男としての京は死んだことにしなきゃいけないからさ。可哀想だと思うが、我慢してくれ。」

 その言葉には、さっきまでのようなふざけは入っていなくて、ただ優しさだけが入っていた。

 少し、ドキっとしてしまった自分に自己嫌悪。

「あと、アドバイスなんだけど精神っていうのは体に依存するんだ。」

 つまり?

「自分をしっかり持たなきゃ、精神まで女になるぞ?」

 俺は地面に手をつきうなだれる。

「そんなに嬉しがるなよ。」

 うれしかね~よ。


 学校につくと、元はどこかに消えてしまった。

 そして俺は自己紹介という、果てしなくかったるい作業を終わらせて、指定された自分の席に座る。

 普通、転入生の隣は空席はないはずなのだけど・・・

「転入生のほかに、復学する人もいます。入ってきて」

 入ってきたのは、あの汚物だった。

「「「「きゃ~」」」」

 な・・・なんだ?一気に女性陣が騒ぎ出したぞ?

「名前は・・・・皆さん知ってそうですね?」

 キラリという擬音が似合いそうな笑顔を元が浮かべると、また女性陣が騒ぎ始める。

「年は・・・仕事をしていた関係上年上ですが、気にせず話しかけてくださいね?」

 誰だこいつは?

 朝のふざけていた馬鹿はどこ行った?

 チェーンジ、チェーンジ。

「あ、京さんもこのクラスだったんですね?よかった。」

 ちょ・・・おま・・・

 それをここで言うと、女性陣の嫉妬が・・・・

 ほら来たよ・・・大丈夫かな?俺の胃持つかな?

 ちらりと見ると、汚物のさわやかな笑顔の中に、どす黒い笑顔が見えた。

 ・・・・確信犯かよ。


 昼休みになり、隣ですうすう寝ている汚物をまるで汚らしいものをみるかのような目で、見る。

 こいつは常時寝ていたけど、大丈夫なのだろうか?

「京さん、一緒に学食に行きませんか?」

 ナルシスト・・・という言葉が似合いそうな男が近づいてくる。

「えっと、貴方は?」

「失礼、僕は「ナルシス☆太郎だ」・・・違うからね?」

 やっと目が覚めたのか、のっそりと元が起きてきた。

「兄さん?食事に誘う邪魔はしないでくれるかな?」

 あれ?今なんか聞き捨てならんことをナルシス☆太郎がいったなぁ?

「あぁ、こいつは・・・俺の幼馴染の相沢 隆弘っていう名のナルシストだ。」

 幼馴染かぁ、安心した。

 こいつの血族がさらに増えるとなると、どんな心労を被るのか、解ったもんじゃないからな。

「ナルシストは固定なのか?兄さん。」

 元はハッハッハと笑っていた。

 ナルシストってとこは俺も同意だ。

「ひどいなぁ」

「さぁて、太郎は置いておいて、飯食いに行くか。」

 あ、太郎はやっぱり固定なんだ。


 さぁて、太郎と京をひきつれて、鬼退治(食堂の席取り)だ。

「キャー元様よ。」

「元様、こちらの席をお使いください。」

 という具合に、なんなく席をget。

「すごい人気だな?お前。」

「流石、兄さんです」

 いや流石の意味がわからん。

「つうかなんでこんなに人気なんだ?顔ばれもしてるし」

「あそれなら、これだとおもう。」

 太郎は何故か持っている鞄から、一冊の本を出す。

「五聖院で一番強いのはだれか?っておい」

 何々?この五聖院の中で一番強いと言ったら、『エンジェル』の『そばに遍在する混沌』こと『篠崎 元』氏であろう。

 彼は能力者でもありながら・・・・・・っておいなんだこれ。

 なんで、TOPクラスの秘匿事項が乗ってんだよ。

 大丈夫か?『エンジェル』とその他の諜報部。

「僕の情報も載っていて、うちの諜報部に問い合わせたら情報がを持ってきたのは、美少女だったってことしかわからなかった。」

 謎の美少女・・・・各機関の諜報部を出しぬけるほどの実力ねぇ・・・・

 一人しか思いつかん。

「なぁ、隆弘。うちのって言ってたけど、所属は『エンジェル』じゃないのか?」

「あれ?京ちゃんにまだ言ってなかったっけ?俺は魔法使いだよ?」

「童貞乙」

 俺はすかさず、そういう。

「黙れ『wizard』」

 oh、太郎の奴ガチ切れしたでござる。

「え?え?」

 混乱している京を俺は、笑いながら見る。

「さっき、この汚物のこと、兄さんって呼んでたのはなぜ?」

 おーい、本音が漏れてるぞ~

 つうか、心の中でそんなこと思っていたのか・・・・

 少し、OHANASIが必要だなぁ。

「あぁ俺は昔『魔法協会』にいたんだよ。その時に、こいつの教育係しててなぁ。」

「その時に、年が近かったから兄さんと呼ぶようになったわけだ。」

 ちらってみると、京は居心地の悪そうにしている。

「そういえば、京って姉さんに似てない?」

 ボソっと呟いた太郎を俺はにらむ。

「は・・・じ・・め?」

 おっといけない、殺気をダダ漏れにしちまったか。

 京はこういうのなれていないからなぁ~

「兄さん、まだあの時のこと・・・」

 俺はどうだろなぁといいながら、物思いにふける。


 帰ろうと思うと、下駄箱に何か入っていることに気づく。

 ラブレター?とおもったが、いまどきなんて古風なと思う。

 しかも、今は女性なのに、その手紙は女の子特有の丸文字で描かれていた。

「ん?」

 そっこに書かれていた言葉は・・・・・

『貴方みたいなのが、元様のそばにいることは、私たちが認めませんわ。』云々

 嫉妬?でもなぁ~

 そう思っていると、元が天井からぶら下がっていた。

「何やってんだ?」

「コウモリごっこ(キリ」

 めっちゃいい笑顔で言い切ったよこいつ、本当に大丈夫か?

「まてまて、スルーしていくな。」

 俺が何も言わず歩き始めると、しゅたっという音とおともに、そんな言葉が飛んでくる。

 さっきまで宙吊り状態だったよな?

 なんで足で着地しているんだ?

「ゲーセン行くどぉ~」

「なに、このいきなりな展開ぃぃぃぃぃぃ」

 俺の叫びもむなしく、ゲーセンに連れて行かれた。

「すごいな。」

 『研究所』の支部もあるせいもあってか、五聖院のゲーセンはヤバいことになっていた。

「お勧めは、体感型格ゲーだな。」

 何その不吉な名前・・・

「殴る蹴る、能力、魔法、機械が反映されて、攻撃に変換できるんだ。ちなみにダメージ食らうと実際の1/10ぐらいのダメージが降りかかる。」

 え、やだ何それ怖い。

「流石に、機械に関しては似せて作った専用のユニットがあるけどな?貸し出しは自由だ。」

「お~っとここでチャンプの登場だぁぁぁぁ」

 格ゲーに実況がついているのか?

「「「おぉぉぉぉぉぉ」」」

 しかもあんなにギャラリーがたくさん。

「信じるは、おのれの肉体と機械のみ。負け知らずの鬼神『チャンプ』」

「あ~あいつは確か・・・」

 知っているのか、元は顎に手を当てている。

「すまん。次、彼に挑戦したい。アバター名?『wizard』だ。」

 にやりと笑う元の顔は、出会った時よりも凶悪で・・・

「あぁこいつを肩に乗せてろ。」

 ポンと元の手のひらに二頭身の元が現れた。

「なんだ?これ?」

「SD俺だ。お前への攻撃に対して、そいつは等身大となりお前を守る。んじゃ行ってくる。」

 もう能力者ってなんでもありなんだね?


「お~っと、ここでチャンプに新しい挑戦者だぁ~。」

「「「おぉぉぉぉぉ」」」

 この歓声が妙に懐かしい。

「身の程知らずな挑戦者『wizard』その名の通り、魔法使いなのかぁ~?」

 俺のアバターはスピード重視の小型ファイタータイプ。

 攻撃力とスピードは極端に高いが防御、魔法力が極端に低い。

 チャンプのアバタータイプは普通。

 スピード、攻撃力、防御がやや高めで、魔法力がない。

 ちなみにステータスの平均は、どのアバターでも一緒だったりする。

「おぉっとこれは意外だ、チャレンジャーは小型ファイターだ~~」

 その言葉と同時に、チャンプのアバターが動く。

「おっと?」

 俺はそれを反射神経だけでよけた。

「ただものじゃないみたいね?」

 先ほどの戦いをちらりと見て、こいつは高速戦闘型だと思っていたのだが・・・間合いの取り方も熟知している。

「つうかいつからこのゲーム、声出せるようになったし。」

「話していて大丈夫かい?」

 俺は相手のこぶしを受け止める。

「さっさと本気出せよ。退屈しのぎになりゃしねぇ」

 その言葉に、ショットガンがはなたれる。

 通常のショットガンの球はよけきれないが・・・

 俺の身体能力を1/30ぐらい反映してくれるこいつなら、よけ切れる。

 一瞬にして、視界が灰色になり音が聞こえなくなる。

「な!?」

 正面から突撃してきて、よけ切ることを想定していなかったのだろう。

 通常は範囲外に飛んでよけるものだからなぁ。

【通常の人間はそもそもよけれません。】

「驚くなよ?チャンプ。魔法使いと、能力者はこれぐらい普通にやってくるぞ?」

「おもしろい」

 チャンプが、どこからともなく取り出したマッチを投げると、マッチが大爆発した。

「そのマッチを分子レベルで解析、変化させる機械か・・・」

 変化の能力を機械で再現したものといったほうがいいか・・・・・

 っちやっかいな。

「この力の意味をわかるのか?」

 俺のアバターは答えもせずに・・・・・消えた。

 そして・・・・・・

「勝ったぁぁぁぁぁ、勝利したのは『wizard』まるで魔法のような攻撃は、彼にはきかなかったぁぁぁぁ」

 ふぅと俺はため息をつき、相手のほうに近寄っていく。

「流石だよ『wizard』。」

「そっちこそ。」

 そこにいたのは、青い髪を持ち赤い濁った眼をした少女だった。

 噂には聞いていたけど、ここまで濁っていたなんてな。

「貴方はまさか。」

「ここで言うなよ?関係者がわんさかいるから面倒なことになる。喫茶店でもどうだい?」

「ナンパかい?」

 挑発的な笑顔。

 ふむ・・・なかなか、悪くない。

「残念ながら、連れがいるからナンパってわけじゃぁない。」

 俺はやれやれといった調子で、両腕を上げ首を横に振る。

「それは残念。でも、貴方のようないい男の連れっていうのも興味あるわね。いいわ、付き合ったげる。」

「いい女に、いい男と呼ばれるのは光栄だ。」

「何やってんだよ。」

 終わってから人込みをかき分け来たのか、京がジト目で俺を見ている。

「「ん~いい女いい男ごっこ。」」

 俺と彼女の声がぴったりと合う。

 う~ん最高。


 私はさっきのやり取りを思い出し、冷汗をかいていた。

 なぜなら、彼のあの芝居がかった口調も何か考えている風な目もすべて何も企んでいないことを隠すためのものだったからだ。

「ここも変わらないな。」

「来たことが?」

 彼は紅茶をすすりながら、少し微笑む。

「あぁ、『エンジェル』の施設があるところに小さいが、家を持っていてね?二年前まで住んでいた。」

「どこが小さいんだよアレが。」

 彼女の口調に少し違和感を感じる。

「彼女は男なのかい?」

「男っぽい口調の女と思っていてくれ。」

 ほぅ、初めて彼が焦りを見せた?

 よほど、知られたくないようなことなのだろうか?

「とりあえず。敵に回るというのなら、俺は最善の方法をとらなくちゃいけなくなるけど?」

 違った。

 知られたほうが、彼にとっておもしろい状況になるというだけのことだったようだ。

 さしずめ今は、彼にとって望ましくない状態なように思える。

「まぁあんまり深読みするな。あんた・・・・も味気ないなぁ~一応自己紹介でもしとくか、学生の篠崎 元。こっちは植村 京。」

「私は・・・西嶋 愛音。『研究所』に所属しているわ。」

 彼の唐突な自己紹介に焦りながら、名乗った。

「驚いた。『研究所』きっての天才と知り合えるなんてね?」

「貴方こそ、『エンジェル』に所属しているんじゃないの?」

 彼はとっさに、何か企んだようだ。

 急にまじめな顔つきになる。

「ちょっと野暮用で休業していてね?」

「野暮用?」

 私はそれに乗ることにする。

「学生をやるという仕事をおろそかにしていたわけ・・・・あれ?二人とも何故ずっこけてんだ?」

 そりゃずっこけるわよと愚痴りそうになるが、必死に飲み込んだ。

「彼、少し面白いね?京。」

「嫌、ただ疲れるだけだから。」

 ふふふ、と私は笑う本当にこの人は何を考えているのだろうか?

 実に興味深い。

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