【悲報】測定不能の新人、現る。あとステータスが色々と手遅れな件
ダンジョン探索の翌日。俺は自宅のベッドで、スマホの画面を眺めながら頭を抱えていた。
湊から「お前、ネットで話題になってるぞ」と不穏なURLが送られてきたからだ。
それは、国内最大の探索者コミュニティサイト『ダンジョン・チャンネル(通称:Dチャン)』のスレッドだった。
【都内】新人探索者スレ Part.102【大穴】
125:名無しの探索者
なあ、昨日第一ダンジョンで変な奴見なかったか?
スライム相手に盛大にズッコケて、その拍子に投げた短剣でレアボス仕留めてた奴。
128:名無しの探索者
あー、俺も見たわ。その後、目潰し粉バラ撒いてステルスアサシン暴いてた奴だろ?
顔は普通なのに、動きが完全に「魅せる」構成だったな。
132:名無しの探索者
あいつのギフト、現場の検査員から漏れてるけど**【万象幸運】**らしいぞ。
しかもLUK値が測定不能のカウンターストップ。
140:名無しの探索者
は? LUKカンスト?
そんなの理論上ありえねーだろ。
LUKって「ドロップ率が数%上がる」程度の死にステじゃなかったのか?
145:名無しの探索者
それがそうでもないらしい。
あいつが通った後の通路、なぜか「回復の泉」が湧いたり、普段は絶対出ない「黄金のミミック」が自ら蓋を開けて待ってたりしたっていう目撃証言が……。
150:名無しの探索者
マジかよ。まさに「歩く特異点」じゃねーか。
しかも隣にいた連中、あのエリートの結衣と、最近噂の「どっちか分からない超絶美形」の凪だろ?
なんなんだよそのラノベ主人公みたいなパーティー。
「……特異点って、何のことだよ」
俺はスマホを放り出し、天井を仰いだ。
あんなの全部ただの偶然だ。俺は自分の実力が「最低値」であることを知っている。
確認のために、俺は自分のステータスウィンドウを呼び出した。
そこには、昨日の「事故」の結果、さらに更新された絶望的な(あるいは希望的な)詳細が記されていた。
【詳細ステータス:佐藤 蓮】
■基本特性:【因果逆転の幸運】
効果: 本人の「意図した行動」が失敗した際、その失敗を「より大きな利益を生むためのプロセス」として世界が再構築する。
副作用: 本人がカッコつけようとすると、強制的に成功率が0.01%に固定される。
■固有スキル:【黄金の指先】
詳細: 宝箱を開ける際、罠にかかる確率を0%にし、最高レアリティのドロップ率を「極限」まで引き上げる。
現状: ダンジョン側が「こいつにこれ以上奪われたくない」と恐怖し、自らレアアイテムを差し出すレベル。
■特殊耐性:【全状態異常無効(ただし不運のみ)】
詳細: 毒、麻痺、混乱などは全て「たまたま飛んできた解毒草を飲み込む」等の偶然によって即座に解消される。
■パーティーバフ:【勝利への道導】
詳細: 蓮が「やる気がない」時、仲間のクリティカル発生率が1000%上昇する。
「……なんだこれ」
攻撃力10。防御力10。
それなのに、付与されているスキルの説明が、もはや物理法則の破壊宣言だった。
特に『カッコつけると成功率0.01%』って何なんだ。呪いか?
その時、ピンポーンとインターホンが鳴った。
モニターを確認すると、そこには……。
「蓮くん、迎えに来ちゃった。今日は深層まで行ってみない?」
凪がいた。
今日はフリフリのついたブラウスにショートパンツという、昨日以上に「どっちなのか混乱する」格好をしている。
「蓮、準備はいいか。お前のLUKを前提にした攻略チャートを組んできたぞ」
後ろには、分厚いタブレットを抱えた湊の姿も。
そして。
「ちょっと! そこで何してるのよ!」
さらに後ろから、見覚えのない少女が走ってきた。
ツインテールを揺らし、勝ち気な瞳を吊り上げた少女。彼女こそ、S級探索者として名を馳せ、俺の「運だけ」の噂を聞きつけて飛んできた**紬**だった。
「アンタが佐藤蓮ね? 運だけでダンジョンを舐めるのもいい加減にしなさい! アンタみたいな危なっかしい奴、私が横で見てなきゃ、いつか事故で死ぬんだからね! 勘違いしないでよね、別に助けたいわけじゃないんだから!」
……初対面で、ものすごい勢いのツンデレを食らった。
というか、なんで俺の家を知ってるんだ、この人たち。
俺が戸惑っている間にも、階下からは何やら音楽が聞こえてくる。
**最近、巷で流れている『何でも叶うと歌う、中毒性の強いダンスミュージック』**だ。
そのポジティブすぎるメロディが、俺の「意思」とは無関係に、今日という一日を「最高のラッキー」へ導こうとしているのがわかって、俺は深く溜息をついた。
「……今日、休んじゃダメですかね?」
「「「ダメに決まってるでしょ(だよ)!」」」
三人の声が重なる。
こうして、俺の意思を置き去りにした「最強の幸運艦隊」が、本格的に動き出したのだった。




