1話 起床
~六時三十分~
ビービービー、ビービービー
五月下旬の朝。夏が近づいているはずなのにまだ少し肌寒い。布団から手を出し、目覚ましを止めることすら憂鬱だ。
どうせ二度寝するのに。
~三十分後~
ビービービー、ビービービー
スヌーズ機能。くそったれ。これで三度目だ。十分ごとに俺の睡眠を邪魔してくる。
次はないぞ。仏と俺の顔は三度までだ。
~五分後~
「いつまで寝てんの?もう起きないと遅刻するわよ」
母親が肩をゆすりながら語り掛けてくる。
「わかってる。もう起きるから静かにしろ」
布団を掴み、母親がいない方向に寝返りを打ちながら答える。
「お母さんは起こしたからね。遅刻しても知らないよ」
「……」
返事を返さない息子に対し、ため息をして部屋から出ていく。
最悪な寝起きだ。自分のペースを崩された。朝起きるだけで睡眠で貯めた気力がガス欠。この状態で学校生活を乗り切る必要があるなんて。
だが俺は学生。勉強しなければならない。何の役に立つかも分からない知識を蓄えなければならない。
周囲に置いてかれないためにという義務感。これが気怠い体を動かす。そこに自分の意志はない。
まるでロボットだな。と自嘲する。
まだ残っている睡魔を振り払いベッドから出て、一階へ。
歯を磨き、軽く寝癖を直す。キッチンにある菓子パンを手に取り、リビングのソファーへ。スマホでYoutubeを観ながら食べていたら、もう通学の時間。
制服に着替え、玄関へ。
いってきます なんて言葉は発しない。
憂鬱で何もない日常の繰り返しにため息が出る。
「はぁ…死にたい」




