32話:狂犬ラカム、港を離れる
30話、31話、32話(最終話)を連続投稿しています。
港の朝は早い。
空が白む前から、人は動き始める。
縄が鳴り、帆が上がり、樽が転がる。
眠っているのは、海だけだ。
俺は桟橋の端に立ち、船を見ていた。
小さな貨物船だ。
武装もない。
目立たない。
今の俺には、ちょうどいい。
荷は少ない。
剣と外套、それから替えの靴。
港を出るのに、それ以上はいらない。
――名も、噂も、置いていく。
そう決めたはずなのに、
足はまだ、桟橋に根を張っている。
「……ラカムさん」
声がして、振り返った。
仲介人の使いの少年だ。
まだ背が低く、肩も細い。
だが目だけは、港の色をしている。
「また来たか」
「はい」
少年は小さく頷き、俺の前に立った。
この子とは、何度も顔を合わせている。
走り役。伝言役。
裏市場の空気を吸いながら、
それでもまだ、踏み込みきらない位置にいる。
――昔の俺とは、違う。
「これ」
少年が差し出したのは、短い伝言だった。
手紙ですらない。
口伝えの言葉。
「“研究は順調です。
心配はしていません。
だから、あなたも前へ進んでください”」
……ああ。
あいつらしい。
少年は、少し困ったように言った。
「内容は、これだけです。
……すごく短くて」
「十分だ」
俺はそう答えた。
言葉が短いほど、強い時がある。
あいつは、それを分かっている。
俺は少年から視線を外し、港を見た。
船が動き始めている。
出航の合図だ。
ここで立ち去らなければ、
俺はまた、この港に縛られる。
「……ラカムさん」
少年が、もう一度声をかけた。
「俺、聞いてます」
「何をだ」
「“狂犬”のこと」
やはりな。
噂は、もうこの子の耳にも届いている。
「怖い人だって。
噛みついたら離さないって。
灰色商会を潰したって」
少年は言葉を選んでいる。
英雄と言いたいわけでも、
非難したいわけでもない。
ただ、確かめたいだけだ。
「……本当なんですか?」
俺は少し考えてから、答えた。
「噛んだのは事実だ」
「……けど、それって」
「正義じゃない」
即座に言った。
「守るためでも、世界を良くするためでもない。
噛まれたから、噛み返した。
それだけだ」
少年は黙り込んだ。
失望したか?
それとも、安堵したか?
どちらでもいい。
だが、ここで言っておくことがある。
俺は少年の方を向いた。
「なあ」
「はい」
「仲介人を支えろ」
少年の目が、大きく見開かれた。
「……え?」
「今すぐじゃなくていい」
俺は続けた。
「お前は港に残る人間だ。
俺は出ていく。
エリスは、もっと先へ行く」
少年は、理解しようとする顔をしている。
「港にはな、
“外へ行く人間”と“残る人間”がいる」
「……仲介人さんは」
「残る側だ」
俺は言った。
「だが、あいつは一人で背負いすぎる。
噂も、金も、命も」
少年は、ぎゅっと拳を握った。
「俺には……」
「今は、できなくていい」
俺はそう言った。
「走れ。聞け。覚えろ。
誰が嘘をつき、誰が本当のことを言うか。
港は、それを知っている奴が生き残る」
少年は、小さく頷いた。
「……はい」
その声は、震えていなかった。
――悪くない。
「ラカムさん」
少年が、恐る恐る言った。
「また……戻ってきますか?」
俺は、すぐには答えなかった。
戻るかもしれない。
戻らないかもしれない。
だが、それを俺が決めることじゃない。
「必要ならな」
そう答えた。
「剣が必要な時は、呼べ」
「……はい」
少年は、少し笑った。
「じゃあ、俺は……行きます」
「ああ」
少年は踵を返し、桟橋を走っていく。
その背中を見ながら、
俺はふと思った。
――あの子も、いつか港を出るかもしれない。
エリスのように。
俺のように。
港は、残る場所じゃない。
行き交う場所だ。
◆
船頭が声を張り上げた。
「出るぞ!」
縄が解かれる。
船が、ゆっくりと岸を離れる。
俺は最後に、港を見た。
仲介人の姿は見えない。
だが、いる。
あの影のどこかに。
あいつは、ここで生きる。
男の顔をして、女の心を隠して。
港の裏側を支えながら。
エリスは、別の場所で生きる。
研究と未来の中で。
世界を変えるために。
俺は――
そのどちらでもない。
狂犬だ。
吠えず、名乗らず、
噛む必要があれば噛むだけの存在。
船が港を離れる。
潮の匂いが、少しずつ薄れる。
名を捨て、噂を置いて、
俺は港を去る。
だが、噛み跡は残る。
それでいい。
狂犬ラカムは、港を離れる。
世界は、まだ続いている。
チャッピーの凄さ?
!あまりにも短いので、少年とのやり取りを追加指示にて生成し直す。
!エリス推しを指示すると、一気に仲介人が男性になって全体編集されたなぁ。最後だけ無理矢理設定出したけど、ラカムが甲斐性のない感やどっちつかず感が出るからかな?
◎読んでくださった方へ
本当にありがとうございます。
人に読んでもらう書き方も知らない、チャッピーの使い方も試行錯誤なのに、この物語を読んで頂き、これほど嬉しいことはありません。
おんぶに抱っこで作成したのに、あたかも「チャッピーがどうなの?」的な後書き書くのは良くないなと、最後まで終えての感想です。
小説を書くのは難しいどころか、まさに話しにならないレベルで構想もできません。それを完結まで漕ぎ着けたのはチャッピーがあったからです。
アイデアだけでは、まずもって作成できませんでした。
TRPGとしてチャッピーにマスターをしてもらい、プレイヤーとしてラカムを動かして話しを作ることができました。(まあ、判定で失敗することがないのでゲームにはなっていなかったですが…)
そのやり取り全体を小説として、内容変更ありで編集指示をして話数とタイトルを決めてもらいました。
各話の構成や出だしを3パターン程度生成し、そこから各話を生成しました。
そこから調整版生成や、直接手直しで各話を仕上げていきました。
途中何度もやめよう思ったものの、なんとか完結させ、投稿をすることができ、できないとずっと思っていたことが、ひとつ叶いました。
AIはサポーターです。結局のところ出来の良し悪しは使う人次第だと実感しています。




