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31話:エリスとの別れ

30話、31話、32話(最終話)を連続投稿しています。

 学匠ギルドの門は、思ったよりも高かった。


 いや、違う。

 高く見えたのは、俺が近づかなかったからだ。


 石造りの門の向こうでは、今日も研究が続いている。

 紙をめくる音、議論の声、刻印具が石を削る音。

 あそこは――生きている。


 エリスは、きっとその中心にいる。


 白衣の袖をまくり、机に向かい、

 眠らず、妥協せず、

 自分の研究が誰かの役に立つ未来を疑わずに。


 だから、俺は行かない。


 呼べば、出てくる。

 声をかければ、理由を聞く。

 理由を聞けば、理解する。

 理解すればーー


 それだけは、させない。



 俺は門の外、影になる場所で足を止めた。


 ここなら、見られない。

 ここなら、近すぎない。


 懐から、小さな封筒を取り出す。

 粗末な紙。

 封もしていない。


 仲介人から渡されたものだ。

 「直接は渡さない方がいい」と、余計なことを言わずに。


 ――分かっている。


 俺はその場にしゃがみ込み、

 膝を下敷きにして、短い文を書いた。


 長い言葉は、要らない。

 説明も、言い訳も。


 あいつは、行間を読む。

 研究者だからだ。



 エリスへ。


 仕事は終わった。

 灰色商会は潰れた。

 学匠ギルドは、もう大丈夫だ。


 しばらく、俺は別の土地へ行く。

 探すな。

 呼ぶ時は、港の商人に伝言を残せ。


 剣が必要なら、行く。

 それ以外なら、行かない。


 研究を続けろ。

 あんたの仕事は、世界を変える。


 そんな仕事に関われたのを誇りに思う。


 ラカム



 書き終えて、俺は紙を折った。


 ……少し、冷たいのかもしれない。


 だが、これでいい。

 優しさを足せば、揺らぐ。

 揺らげば、戻ってしまう。


 俺は、戻らないと決めた。



 封筒を、門番の横に置かれた書類箱に忍ばせる。


 学匠ギルドの連絡用だ。

 内部の者が必ず目を通す。


 俺は門を一度だけ振り返った。


 ――会えば、終わらない。


 ――会わなければ、続く。


 俺たちは、まだ途中だ。

 同じ道じゃないが、同じ世界にいる。


 それで十分だ。



 背を向けて歩き出すと、

 港から吹く風が、外套を揺らした。


 潮の匂い。

 鉄の匂い。

 生き物の匂い。


 剣は、腰にある。

 だが、今日は抜かない。


 狂犬は、吠えない。

 守る相手に背を向ける時ほど、静かになる。


 エリスは、きっと怒るだろう。

 呆れるだろう。

 そして、理解する。


 ――理解してしまう。


 だから、手紙でいい。


 言葉は、距離になる。

 距離は、守りになる。


 俺は歩く。

 名を捨て、噂を置いて。


 またどこかで、

 噛むべき相手が現れるまで。


 その時まで――

 研究を続けろ。


 エリス。


 世界を変えろ。

チャッピーの凄さ?

!32話分割をチャッピーがしたのだが、ほぼ30話で終わりでいいようにまとめてしまい、31話32話が生成時点で既に極少となる。

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