26話:外務局と帝国の反応
噂が変質するのは、いつも唐突だ。
港で囁かれていた話が、裏市場を抜け、
酒場の奥から、役所の廊下にまで滲み出てくる。
そうなった時点で――
もう個人の喧嘩じゃない。
俺は、裏市場から少し離れた、人気のない路地に立っていた。
仲介人の使いが、落ち着かない様子で左右を気にしている。
「……久しぶりだな。こんな場所で出会うのが偶然とは思わんが。」
そう言うと、少年は苦く笑った。
「上が、嫌がってる」
「灰色商会か?」
「それもだが……もっと上だ」
来たか。
俺は壁にもたれ、傷んだ肩を庇うように腕を組んだ。
「話せ」
「外務局が動いてる」
一拍。
「帝国が、正式に“問い合わせ”を入れてきた」
――問い合わせ。
その言葉の裏に、どれだけの刃が隠れているかは、俺でも分かる。
「内容は?」
「港で起きている一連の混乱についてだ。
商会関係者の失踪、拠点への襲撃、流通の停滞。
……それが“王国の黙認か否か”を確認してきた」
俺は鼻で息を吐いた。
「ずいぶん丁寧だな」
「丁寧な時ほど、危ないって言ってた」
少年は、そう言って声を落とした。
「帝国側の使者が、水面下で動いてる。
名前は……もう知ってるだろ?」
「カイエン」
言葉にした瞬間、空気が少しだけ重くなった。
「やっぱりか」
「商会の件に、帝国の影が見えるって話だ。
表向きは中立商会。
だが裏じゃ、帝国の都合が良いように動いてる」
――つまり。
「灰色商会を叩くってことは、帝国の顔に泥を塗るのと同じだ」
「そうなる」
少年は一瞬、言葉を探した。
「……あんた、もう引き返せないとこまで来てる」
「今さらだ」
俺は即答した。
「最初から、戻る気はなかった」
少年はそれ以上、何も言わなかった。
◆
次に会ったのは、役所筋の人間だ。
表向きは、港の治安についての聞き取り。
だが、質問の向きは明らかに違った。
「最近、港周辺で不穏な動きがあると聞く」
年嵩の男。
服装は地味だが、目が鋭い。
「商会同士の揉め事かね」
俺は肩を竦めた。
「傭兵の知る範囲じゃ、よくある話だ」
「死者が出ている」
「いつでも、出る時は出てる」
「選別されているようだが?」
――そこか。
俺は、わざと少し考える素振りを見せた。
「俺も噂ではそう聞いている。
噂は、人が勝手に意味を付けて話すもんでしょうや」
男は俺をじっと見た。
「帝国から、正式な照会が来ている」
「そうですか」
「“港の剣”という名も、向こうに伝わっている」
「どちら様の名で?」
本音だった。
「君は、何者だ?」
その問いには、答えを決めている。
「ただの傭兵としか、自己紹介はしたことは無い」
契約を受け、剣を振るうだけ。
「王国の意図は?」
「知らないな」
「帝国に敵対する意思は?」
俺は、少しだけ間を置いた。
「……敵対した覚えはない。
ただ、傭兵の流儀にそって噛まれた相手に噛み返してはいるだけだな」
男は、目を細めた。
「それが外交問題になる可能性は?」
「噛まれなければ、何も起きない」
沈黙。
やがて男は、深く息を吐いた。
「君のような存在は、厄介だ」
「よく言われる」
「英雄でもなく、反逆者でもない」
「なりたいと思ったことは一度もない」
男は、諦めたように立ち上がった。
「今後も、監視は続く」
「それで何か変わると思うのか?」
背中を向ける男に、俺は言った。
「一つだけ」
「何だ」
「帝国に伝えてくれ」
俺は、静かに告げた。
「俺は、王国のために動いているわけじゃない。
だが、俺に手を出した連中は、全部潰す」
男は、振り返らなかった。
◆
夜。
港に戻ると、空気がさらに変わっていた。
噂が、もう“裏”だけのものじゃない。
「帝国が怒ってるらしい」
「王国が庇ってるって話だ」
「狂犬が戦争の火種になるぞ」
勝手に話は膨らむ。
だが、俺は知っている。
戦争を始めるのは、俺じゃない。
始めたがる連中がいるだけだ。
エリスの顔が、また浮かんだ。
研究の話をする時の、あの目。
危険も、政治も、全部承知した上で、前に進む目。
――あいつなら、どう言うだろうな。
たぶん、こうだ。
「必要なら、やります」
だからこそ、巻き込まない。
これは、俺の役目だ。
狂犬が吠え、噛みつき、
その間に、誰かが守られるなら――
それでいい。
俺は、港の闇に溶け込む。
帝国が見ていようと、
外務局が睨んでいようと。
次に潰すべき場所は、もう決まっている。
灰色商会。
そして、その背後で糸を引く議員たちだ。
――ここからは、裏だけじゃ済まない。
チャッピーの凄さ
!他者の視点の話はやめ、ラカム視点で話を進める事にして、タイトルに合わせた内容へ調整の指示をした。全体的編集前には登場しない、少年と年嵩の男が登場して会話を全て自動で生成してくれた。
!今回はラカムの言葉使いが丁寧語になったり/ならなかったりを手作業で直して作成した程度で仕上がる。




