25話:連続拠点破壊
夜は、静かなほど仕事がしやすい。
人の声が減り、灯りが消え、街が眠りに落ちる頃。
動くのは、盗人か、殺し屋か――俺のような傭兵だ。
灰色商会の拠点は、思ったよりも多かった。
倉庫、仮の事務所、昼間だけ使われる商館。
表の顔と裏の顔を使い分け、責任の所在を分散させている。
やり口は、商会としては賢い。
だからこそ、要を潰す必要があった。
倉庫では、殺さない。
商館でも、殺さない。
殴り、縛り、使えなくするだけだ。
恐怖と混乱を残し、「次はない」と理解させる。
だが――
荒事を請け負う連中だけは、別だ。
あいつらには、逃げ場を作らない。
俺と同じで、金で命をやり取りをすることを生業としているのなら、生かす理由がない。
◆
扉を開けた瞬間、空気が変わった。
逃げ道を塞ぐ配置。
視線が交差し、誰一人として動かない。
――逃げる気がない。
それだけで、分かる。
“灰色渦”だ。
最初に動いたのは、俺じゃない。
左右から、同時に踏み込んできた。
速い。
息が合っている。
刃が交差し、火花が散る。
受け止めるだけで、腕が痺れた。
「……港の剣か」
奥から声。
出てきた男は、一段低い構えをしていた。
重心が落ちている。
逃げない構えだ。
「ここまで来るとはな」
「仲介人の使いに手を出した」
「知ってる」
即答だった。
迷いがない。
「だが、引く気はない」
その言葉通り、誰一人下がらない。
包囲が、静かに締まる。
――今までと違う。
俺は一歩引き、距離を取ろうとした。
だが、追ってくる。
退かせない動きだ。
刃が肩を掠めた。
焼けるような痛み。
血が流れる感覚で、歯を食いしばる。
それでも、誰一人、怯まない。
連携。
交代。
互いの死角を補う動き。
商会の下請けというより、
――戦場を知っている兵だ。
俺は踏み込み、最初の一人の喉を裂いた。
倒れる。
だが、誰も声を上げない。
空いた隙間を、即座に埋めてくる。
死体すら踏み台にする。
刃が腹を掠めた。
息が詰まる。
視界の端で、血が飛ぶ。
それでも、引かない。
引けば、終わる。
俺は刃を低く構え直し、重心を落とした。
――ここからは、持久戦だ。
一人、また一人。
確実に数を削る。
だが、そのたびに、俺も削られる。
腕が重い。
呼吸が荒くなる。
奥の男が動いた。
速い。
読みが深い。
互いの刃がぶつかり、鍔迫り合いになる。
「……狂犬だな」
「違う」
俺は歯を食いしばり、押し返す。
「噛まれたから、噛み返すだけだ」
男は笑った。
「それでいい」
刃が離れる。
次の瞬間、俺は一歩踏み込み、
相手の膝を斬った。
男が崩れた。
その首を、迷わず断つ。
残りは三人。
息を合わせて、同時に来る。
俺は避けない。
受ける。
刃を交差させ、体で押し返し、
距離を殺す。
一人の心臓を突く。
二人目の喉を裂く。
最後の一人は、傷だらけでも立っていた。
視線が合う。
逃げない。
だから、俺も迷わない。
刃を振るう。
男は膝をつき、それでも倒れなかった。
「……ああ……」
何かを言おうとした口を、
最後の一太刀で塞いだ。
静かになった。
息を整える時間はない。
俺は壁にもたれ、ようやく深く息を吐いた。
腕が震えている。
血が滴り落ちる。
――逃げなかった。
誰一人。
だからこそ、全員を殺した。
◆
建物を出る頃には、夜が少しだけ明るくなっていた。
ここには、噂を残さない。
残るのは、結果だけだ。
「狂犬に噛みつかれた灰色渦も、全滅した」
それで十分。
俺は傷口を押さえながら、歩き出す。
エリスの顔が、一瞬だけ浮かんだ。
――知ったら、一緒に来るだろう。
だから、知らせない。
仲介人の言葉を思い出す。
「港の剣は、守る相手を決めた」
――違う。
俺は、ただの狂犬だ。
噛まれたから、噛み返すだけ。
それだけの話だ。
だから――この牙が向く先は、もう決まっている。
灰色商会。
そして、その背後にいる連中全てだ。
俺は歩く。
次の拠点へ。
血と影を引き連れて。
チャッピーの凄さ
!灰色商会幹部視点の話が生成されるのを待ったかけたら、ほぼ24話の繰り返しの話になってしまった。荒事屋との戦闘シーンを汚れ仕事専門の下請け灰色渦として、強敵として調整してもらい、その部分を抜き出す様にして作成することができた。




