24話:反撃開始(狂犬の暴走)
裏市場を出て、港の外れまで歩いたところで足を止めた。
風向きが変わる。
潮の匂いに、油と鉄の臭いが混じる。
……いい。
ここから先は、騒がしくしていい。
仲介人から直接は何も来ていない。
代わりに、使いの少年が、息を切らして路地の影から現れた。
「……港の剣」
名前を呼ぶ声が、震えている。
無理もない。つい数刻前、同じ立場の人間が喉を裂かれている。
「伝言だ」
「聞こう」
少年は唾を飲み込み、言葉を選んだ。
「――灰色商会が動き出した。
荒事下請け連中と“灰色渦”も呼び寄せてる」
なるほど。
俺はそれだけで、位置も役割も理解した。
脅しじゃない。
交渉でもない。
力で黙らせる段階に入ったということだ。
「仲介人は?」
「姿を消した。
だが、あんたが動くなら、情報は流すって」
「十分だ」
俺は少年に小さな銀貨を渡した。
「帰れ。
次は来るな」
少年は何も言わず、深く頭を下げて走り去った。
◆
最初に向かったのは、灰色商会の直営倉庫だ。
夜の倉庫街は、相変わらず静かすぎる。
見張りは多いが、動きに迷いがある。
――商売人の警戒。
荒事を知っている連中じゃない。
裏口に回り、鍵を外す。
音は立てない。
中にいたのは五人。
全員、剣を持っているが、構えが甘い。
一人目。
顎を打ち、崩れ落ちる。
二人目。
腕を捻り、床に伏せさせる。
三人目と四人目は、背中合わせになったが、
互いを守る距離を知らない。
最後の一人は、腰が引けていた。
――殺さない。
刃は抜かず、殴り、縛る。
血は出さない。
ここは、“知らせる場所”だ。
「……な、何者だ……」
答えない。
帳簿を床に投げ、指で叩く。
「これを見て、思い出せ。
何を運んだ。
誰に渡した」
顔色が変わる。
「灰色商会に伝えろ」
喉元に刃を寄せるが、切らない。
「港に狂犬が出た。
だが、牙はまだ血を選んでいる」
縛ったまま、倉庫を出る。
恐怖だけを、置いていく。
◆
次は、昼間の商館。
日が高く、人通りも多い。
だからこそ、ここでは“見せる”。
裏手から入り、倉庫部分だけを荒らす。
帳簿。
書状。
隠し棚。
商館の人間が騒ぎ始める頃には、必要なものはすべて手に入っていた。
俺は姿を見せない。
名乗らない。
だが、証拠は残す
引き裂かれた書類。
刻印の上に走らせた刃痕。
意味は一つ。
次は、選ばれる。
◆
夜が深まる頃、俺は港の裏、破落戸の溜まり場に向かった。
ここだけは、違う。
空気が張り詰めている。
足音を殺す気配。
殺し慣れた臭い。
――汚れ仕事の専門。
中に入る前から分かる。
扉を開けた瞬間、刃が飛んできた。
速い。
狙いも正確だ。
俺は身を捻り、刃を弾く。
「……来たか、港の剣」
声の主は、一歩前に出た。
構えに無駄がない。
こいつは、破落戸なんかじゃあない。
「仲介人の使いに、手を出したな」
「仕事だ」
即答。
迷いがない。
「灰色商会の命令か?」
「違う。
だが、商会は文句を言わない」
――下請けの判断。
だからこそ、コイツらは生かせない。
俺は距離を取り、右脚は一歩前。両手で臍あたりに構えた剣の切先を相手の眉間に向ける。剣身に正中線を隠す。
相手の剣士は、左半身でやや腰を落とし、剣身を自身の背側、柄頭を俺に向けて腰だめに両手で剣を抱える。
俺は、股関節をたたみながら右脚へ重心を移しつつ左脚を前に伸ばす。体の入れ替えに合わせて、剣を右肩へ担ぎ上げ、右鎖骨は鍔、リカッソは肩甲骨で支える。柄頭を左腕で高く上げ、右手は後頭部へ向かう。
剣士の間合いの境界線に、左足先が触れたと同時に袈裟懸けで、剣士の左肘に切り込む。
剣士は右拇趾球を支点に体を入れ替え、左脚を半歩下げる。右構えに移行の中で、右腕を中段突きのごとく前へ突き出しながら、手首を布を絞るように内側へ返し、左手はL字レバーを掴んで引くようして柄を捻り、剣身を回転させながら正面に持って行く。
俺の剣は、横から打ちこまれた剣士の剣の鎬による、捻りで生まれた回転で、はたき落とされた。
剣士はそのまま平突きに繋ぐ。
切先を俺の首へ向けて伸ばし――ながら、そのまま崩れ落ちた。
剣士の首に刺さった小さい投げナイフから、地面へ血が溢れていく。
左片手の袈裟懸けをする剣の裏側で、右手で投げた、俺の襟首に仕込んでいた投げナイフだ。
「その構え、甲冑剣術だろ? 騎士崩れ。
裏路地じゃあ、甲冑なんか着てるわけねぇだろ」
他の連中が動揺して、動き出す前に、二人目、三人目を切り落とす。
それを見て、逃げようとした一人は、背中から。
最後に残った男が、震えながら聞く。
「……なぜ、俺たちだけ……」
俺は答えた。
「おまえたちは、線を越えた」
刃を振るう。
ここでは、噂を残さない。
◆
港に戻る頃には、酒場で囁きが始まっていた。
「灰色商会の倉庫が荒らされた」
「商館もだ」
「だが、死体は出てない」
「……いや、荒事屋は全滅だ」
噂は、自然に線を引く。
誰が殺され、誰が生かされるか。
それを考えさせる。
◆
裏路地で、仲介人の使いが再び現れた。
「……聞いた」
短い言葉。
「商会が混乱してる。
直営と下請けで責任の押し付け合いだ」
「計画通りだ。次は来るなと言ったはずだ」
少年は、少し間を置いて言った。
「……あんた、本当に狂犬だな」
「違う」
俺は歩き出しながら答えた。
「選んでいるだけだ」
少年は何も言わなかった。
それでいい。
エリスの顔が、一瞬、頭をよぎる。
刻印のことを語る横顔。
――あいつなら、このやり方に良い顔をしないだろう。
だから、俺は“俺に”手を出して来たヤツらを、勝手に潰すだけだ。
灰色商会は、まだ理解していない。
これは暴走じゃない。
どちらが生き残るかを賭けて潰し合う、冷静な暴力だ。
チャッピーの凄さ?
!自動生成の剣戟シーン「刃が交わる。一瞬の攻防。
腕は確かだ。だが、覚悟が違う。
俺は一歩踏み込み、相手の重心がずれた瞬間に、喉を裂いた。
床に血が広がる。」…嫌なら頑張って自分で作らないとダメですかー。まあ、そうですよねー。でもねー。剣道とかも知らないし、運動音痴だからなー。記述した動きが本当にできるかどうか、正直わからないなぁ。




