23話:灰色商会からの襲撃
倒れていたのは、俺じゃなかった。
港裏の路地に、仲介人の使いが転がっている。喉を一太刀。迷いのない仕事だ。
血はまだ温かい。
死んでから、そう時間は経っていない。
……なるほど。
灰色商会は、俺を正面から潰しに来る気はないらしい。
まずは周囲。
情報。
足場。
そして――信用。
「悪い選択だな」
誰に向けた言葉でもない。
ただ、事実を確認しただけだ。
使いの懐を探る。
紙切れ一枚。印章。
偽名だが、裏では通じる符号。
――商会の下請けが動いている。
つまり、これは個人的な報復じゃない。
正式な“処理”だ。
俺は路地を離れた。
立ち止まっている暇はない。
次に狙われる場所は、すぐに分かる。
仲介人本人だ。
◆
裏市場に入ると、空気が変わる。
人の流れが微妙に逸れている。
誰かが「来る」と知っている動きだ。
仲介人は、いつもの場所にいた。
だが、今日は箱の上に座っていない。
立っている。逃げられる位置取りだ。
「……早かったな、港の剣」
「使いが殺された」
俺はそれだけ言った。
仲介人の目が細くなる。
一瞬の沈黙。
だが、動揺はない。
「やっぱり来たか」
「想定内か?」
「可能性としては、な」
あっさり認める。
だからこそ、この男は長生きしている。
俺は一歩、距離を詰めた。
「次はあんただ」
仲介人は肩をすくめる。
「違う。次は“俺たち”だ」
その言葉に、わずかに重みがあった。
「灰色商会はね、
個人を潰すときは静かだが、“情報の流れ”を消すときは派手にやる」
「つまり?」
「俺が黙れば、終わると思ってる」
「黙る気は?」
「ないね」
即答だった。
だが、理由は聞いておく。
「なぜだ」
仲介人は、死んだ使いの方角を一瞬だけ見た。
「商売だよ。
灰色商会は“金払いはいい”が、“口を塞いだ後”まで面倒を見ない」
「俺と組む方が、生き残れると?」
「正確には違う」
仲介人は、俺を見た。
「君は、まだ値段が決まっていない」
その一言で、全て理解した。
灰色商会にとって、俺は“邪魔”だが、仲介人にとっては、完全に切るにはリスクもある存在。
――なら、利用価値のある側につく。
合理的だ。
「条件は?」
「三つ」
仲介人は指を立てる。
「一つ。
俺の名前は、最後まで出すな」
「当然だ」
「二つ。
灰色商会の動きは、俺が流す」
「信用できるか?」
「信用しなくていい。
裏切った方が先に死ぬだけだ」
それで十分だ。
「三つ目は?」
仲介人は、少しだけ笑った。
「――君が“狂犬”であり続けること」
俺は鼻で笑う。
「勘違いするな。
俺はただの傭兵だ」
「知ってるさ」
仲介人は肩をすくめる。
「だが今の君は、
研ぎ澄まされた抜き身の剣に見える。
守る相手を決めた獣だな」
「違う」
即座に否定した。
「俺は、噛みつかれたから噛み返すだけだ」
仲介人は、楽しそうに笑った。
「それを世間じゃ“狂犬”って言うんだよ」
言い返さなかった。
否定する理由もない。
「仕事だ」と俺は言った。
「灰色商会を潰す。
情報を出せ」
仲介人は、ゆっくり頷いた。
「了解だ、港の剣」
「その呼び方は――
今は、悪くない」
俺はそう言って、路地を出た。
背中で、仲介人が呟く。
「……エリスには、知らせないんだろ?」
俺は振り返らない。
「研究者は、研究に集中させる」
「優しいね」
「違う」
立ち止まらずに答えた。
「――必要だからだ」
夜の港に、風が吹く。
ここから先は、牙を隠す意味はない。
灰色商会が選んだのは……
全面衝突だ。
なら、俺は俺のやり方で応える。
チャッピーの凄さ
!23話の書き出しで、A案:静かな異変(違和感から始まる襲撃)、B案:即座に暴力(読者を一気に掴む)、C案:第三者被害から始まる(怒りを抑えた冷え)と、今までの流れから、オススメでB→A→Cの順の提示してくれる。まあ、私の好みでC案を選択したんで、盛り上がりに欠けるとの批判があっても、チャッピーのせいではなく私に責任の所在があります。
!全くと言っていいほど調整していません。




