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プロローグ 盗んだ宝を盗まれる

 財宝部屋の床に無造作に置かれた一枚の犯行声明を、少女は呆然と眺めていた。



【月の境界が幻影となる良き日に。0時ちょうど、この部屋から失わせしめるは、かの秘宝〝ブラックカーテン〟なり。――――怪盗Missing、参上!】



 怪盗。


 そんなものが実際に、現実の、現代社会に存在するのか……などとは、言わない。事実として、財宝は無くなっている。

 この部屋に保管してあったはずの、秘宝〝ブラックカーテン〟は、跡形もなくなっている。

 今夜は月食。影に隠れゆく満月が、窓の外で暗く輝いていた。


「……………………はぁ!?!?」


 ようやく状況を呑み込んだ少女は、その上で、理解できずに頭を抱えた。小柄な少女の小さな手が、己のウルフヘアをグシャグシャと掻き乱す。


 意味が分からない。憤慨よりも、困惑と呼ぶべき感情だ。

 怪盗なんてものが実在したから――――ではない。


「どうなってんのよ……っ!?」


 少女は室内を見渡す。

 何の変哲もない部屋。財宝を保管するためだけにある、質素で厳重な部屋。窓ははめ込みの強化ガラス。壁も天井も無傷。抜け穴も無い。鍵はかけた。いくつもかけた。監視カメラだってあるし、何ならトラップだってある。


 不可能なのだ。この部屋から、かの秘宝を盗み出すことなど。

 しかし。


 この不可解が少女の困惑の最たる要因――――というわけでもない。


「私だって……、」


 徐々に現れ始めた月光が、悔しさとも憤りともつかない表情の少女を明るく照らした。



「私だって……、怪盗だっつーのっっっ!!!!」



 まさか自分達が盗まれる側になるとは思ってもみなかった。

 怪盗少女の叫びは、アジトの一室、財宝部屋に切なく響く。


 ここは、とある組織のアジトである。盗みを専門とする、神出鬼没の犯罪組織。


 その名も――――怪盗結社〝ファントム・ガールズ〟。


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