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第9話:呪いのフラッシュバック

あの男、サミュエルの言葉が頭から離れない。

「その力、どう使うかはお前次第だ」

答えなんて、すぐには見つからなかった。だから俺は、まず出来ることから始めることにした。

ゼウス社への復讐。そして、兄貴の本当の治療法。

隠れ家のコンソールに向かい、俺は情報収集を開始した。


だが。

ディスプレイが放つ青白い光が、網膜を焼いた瞬間――フラッシュバックが来た。


『いたい、いたい、いたい』

『ママにあいたい』


空っぽの瞳をした子供たちの顔が、画面いっぱいに重なって見える。


「――ッ!」


俺は椅子から転げ落ち、呼吸が浅くなるのを感じた。ダメだ。街のネオンサインも、この部屋のLEDライトも、すべてが地獄への入り口に見える。

何かを作らなければ。何かに没頭しなければ、この罪悪感に押し潰される。

ワークスペースに向かい、ガラクタの山に手を伸ばす。


だが、指が震えて、言うことを聞かない。


この手で、また誰かを不幸にするのか…?


プロメテウス・コアが植え付けた呪いが、俺の魂を内側から蝕んでいた。俺の全てだったはずの魔改造が、今は恐怖の対象でしかなかった。



「ケイ、少し休んだら?」


俺の異変に気づいたレイナが、心配そうに声をかけてくる。



その優しさが、今はナイフのように鋭く突き刺さる。

あんたには分からない。あんたに、俺のこの地獄が分かってたまるか。


「……ほっといてくれ!」


俺は、彼女を突き放してしまった。


レイナは傷ついた顔で、何かを言いかけて、やめた。俺たちの間に、重く気まずい空気が流れる。


俺は隠れ家を飛び出し、屋上へと続く錆びた梯子を登った。

冷たい酸性雨が、容赦なく体を叩く。眼下に広がるネオ・コンプトンの街は、まるで巨大な電子回路の墓場のようだった。

俺はなんて無力なんだ。

兄貴一人救えず、大勢の子供を不幸にして、そして今もこうして雨に打たれることしかできない。


消えない罪悪感が、俺を苛んでいた。



絶望の底で、俺の心に黒い感情が芽生えた。

違う。無力なんじゃない。


そうだ、力が足りなかったからだ。

ゼウスも、企業の連中も、このクソみたいな世界も、全部ねじ伏せるほどの力がなかったからだ。

もっと。もっとだ。

誰にも文句を言わせない、圧倒的な力が手に入れば!


俺は屋上から駆け下り、再びワークスペースに向かう。

今度はもう、指は震えなかった。

俺が手に取ったのは、解体した軍事用ドローンの残骸。

目的は一つ。最強の、戦闘用ドローンを作り上げる。


俺の怒りに、脳内のプロメテウス・コアが喜ぶように囁きかけた。


『その怒りこそがお前の力になる』


そうだろ。

俺の瞳に、復讐心と焦燥の入り混じった、危うい光が宿る。

俺の魔改造は、ここから、さらに危険で強力なものへと変貌していく。

もう、戻れない。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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