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第20話:レイナの罪

レイナの告白は、まだ終わらなかった。

戦場の喧騒など、もうどうでもよかった。俺は、彼女が紡ぐ過去の真実に、ただ聞き入っていた。


「私は、あなたのお父さん、ケニーに憧れてハイペリオンに入った。彼の作るものは、いつも夢と優しさに満ちていたから」


彼女は、俺と兄貴が知らない、父の顔を知っていた。


「でも、私たちが関わった『プロメテウス・プロジェクト』は違った。その本当の目的は、人の感情を抽出し、現実そのものを書き換える、非人道的な技術の開発。ケニーはその危険性にいち早く気づいて、計画を内部から止めようと、たった一人で戦っていたの」


英雄。俺の父親は、英雄だったのか。

だが、その事実は、次の彼女の言葉で、血塗られたものへと変わる。



「あの日、プロジェクトは暴走した」


レイナは、涙ながらに語り始めた。その声は、長年抱えてきた罪の重さに、押し潰されそうだった。


「私が開発を担当していた安全装置の、判断ミスだった。私のせいで、暴走は止められなかった。そして、ケニーは……」


言葉が、途切れる。

彼女は、嗚咽を漏らしながら、ついにその罪を吐き出した。


「私が…あなたのお父さんを殺したのも同然なの…!」


父親の真実。

そして、たった一人、信じていたレイナの「裏切り」。

俺がよすがにしていた、最後の拠り所が、音を立てて砕け散った。

心に、ぽっかりと穴が開く。いや、違う。心が、完全な虚無になった。



その、心の隙間を。

プロメテウス・コアが、見逃すはずもなかった。

虚無は、奴にとって最高の苗床だった。


『見ろ、誰もがお前を裏切る』


脳内に、直接声が響く。

もう、あの優しい男の声じゃない。冷たく、絶対的な、神のような声だ。


『信じられるのは、この世界を作り替えるほどの力だけだ』


そうだ。

力さえあれば。

兄貴を救える。誰も失わなくて済む。誰も、俺を裏切れない。


俺の瞳が、青白い光を放ち始める。

次の瞬間、俺の周囲の空間が、ぐにゃりと歪んだ。瓦礫が、空気が、光が、俺の意思に従うように、形を変えようとしていた。


俺は、完全にコアに心を明け渡した。

もう、俺は、俺じゃなかった。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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