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第19話:父の遺産

企業間戦争。

そのチェス盤の上で、俺はハイペリオンの駒として、ノヴァ・アームズの駒と殺し合っていた。

爆炎が空を焦がし、プラズマがコンクリートを抉る。

俺は、何も感じなかった。


『友軍機、第三セクターにて撃墜』

モニターに表示される無機質なテキストを、ただ認識する。心が、少しも動かない。

悲しみも、怒りも、とうの昔に魂の摩耗で削り取られてしまった。

そこにあるのは、任務の遂行という目的と、効率的な結果を求めるだけの、冷たい思考回路。

俺は、孤独な機械だった。



その、戦場の片隅に、彼女は現れた。

遮蔽物から遮蔽物へと、危険を顧みずに走り、俺の目の前に立つ。

レイナだった。


「もうやめて、ケイ。お願いだから」


彼女の必死の懇願が、ノイズの混じった風のように耳を通り過ぎていく。

俺は戦術モニターから目を離さずに、冷たく言い放った。


「今更何しに来た。あんたに、俺の何がわかる」


その言葉に、レイナは息を呑んだ。俺の瞳の奥にある、底なしの虚無を見たのだろう。

彼女は、何かを覚悟したように、唇を固く結んだ。



「……話さなければならないことがある」


レイナは、震える声で告白を始めた。

この戦場の喧騒が、嘘のように遠のいていく。


「あなたのお父さん、ケネス・ダックワースのことよ」

「彼は、ただのエンジニアなんかじゃない。元ハイペリオン社の主任開発者で、『ゴッドハンド』と呼ばれた、天才だった」


俺は、眉一つ動かさない。過去の話だ。興味はない。


「そして…彼の専門は、生体-機械インターフェース。生物の神経と機械の回路を、直感で繋ぐ技術」


レイナは、俺の目をまっすぐに見て、言った。


「ケイ、あなたに備わっているその力…機械を、まるで自分の体の一部みたいに、直感で理解できるその才能は、あなたのお父さんから受け継いだ、たった一つの遺産なのよ」


――なんだって?


俺の中で、冷たく回転し続けていた思考の歯車が、軋みを立てて、止まった。

俺は、伝説のエンジニアの、息子…?

突然告げられた事実に、俺は衝撃で言葉を失い、ただ、立ち尽くすしかなかった。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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