第18話:鉄と秩序
俺の独走と、ハイペリオンの不穏な動き。
それを、「秩序」を重んじる連中が見過ごすはずもなかった。
ある日、ネオ・コンプトンの空と陸は、突如として沈黙した。
通信網は寸断され、リニアモーターカーは緊急停止する。上空には、これまで見たこともない漆黒のステルス戦闘機が、威圧的に旋回していた。
ノヴァ・アームズ。そして、都市インフラを掌握するアトラス・インフラ。
「軍産派閥」が、ついに実力行使に乗り出したのだ。
街は、企業間戦争の様相を呈し、市民は混乱に陥っていた。
だが、俺には関係ない。ただの障害物が増えただけだ。
◇
俺は、アリシアから与えられた次のミッションを遂行していた。
その道中で、奴らと正面からぶつかった。
ノヴァ・アームズの精鋭部隊。その動きは、これまで相手にしてきたギャングや警備兵とは次元が違った。統率された、一切の無駄がない動き。
そして、その部隊を率いていたのは、巨大なパワードスーツだった。
歩く要塞。暴力の化身。
その機体から響いてきたのは、女の声だった。
「面白い。ハイペリオンの犬が、これほどの牙を持つとはな」
スピーカーから響く声には、余裕と、戦士だけが持つ闘争への喜びが満ちていた。
俺の魔改造ドローンが放つ変則的な攻撃を、彼女――ノヴァ・アームズCEO、マリア・「アイアン」・ヴァスケスは、圧倒的な軍事力でいなしていく。
次元が、違いすぎた。
◇
激しい戦闘の末、俺のドローンは半壊し、活動限界を迎えていた。
マリアは、とどめを刺さずに、通信回線を開いてきた。
「見事な腕だ、戦士。ハイペリオンの小娘の言いなりになるな。お前のような男は、戦場でこそ輝く」
彼女は、堂々と、悪びれもなく言った。
「私の元へ来い。本物の力をくれてやる」
ゼウスの芸術家、リカルド。
ハイペリオンの悪魔、アリシア。
そして、ノヴァ・アームズの将軍、マリア。
巨大企業のトップたちが、次々と俺に接触してくる。俺の力を求めて。
その時、俺は理解した。
俺はもう、スラムに住むただのガキじゃない。
世界のパワーバランスを揺るがす、危険な「駒」になってしまったのだと。
兄貴を救いたい。
ただそれだけだったはずの俺の物語は、巨大な企業間戦争という、血生臭い渦の中心へと、その舞台を移していた。
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