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第17話:砕かれた絆

隠れ家に戻った途端、俺たちの間に溜まっていた感情が爆発した。


「なんで邪魔するんだ!」

「あなたを死なせたくないからよ!」

「俺がどうなろうとあんたには関係ないだろ!」

「関係なくなんかない!」


互いの正義が、刃物のように相手を切りつける。もう、彼女の言葉は俺を苛立たせるだけだった。兄を救う唯一の蜘蛛の糸を、断ち切ったのはお前だ。


「もうあんたは関係ない。俺一人でやる」


俺は最低限の機材をバッグに詰め込み、彼女に背を向けた。

レイナの息を呑む音が、背中に突き刺さる。

俺は一度も振り返らず、隠れ家のドアを閉めた。



俺は独りで、アリシアの要求に応え始めた。

彼女が指定する、企業の機密データが眠る危険地帯へ潜入する。失敗の許されないミッションの連続。


思考は、いつしか一点に収斂されていた。

どうすれば、最も効率的に兄を救えるか。


目的のためなら、手段は選ばない。

敵対するギャングのドローンを、躊躇なく撃ち落とす。行く手を阻む警備員を、ためらいなく無力化する。

ターゲットの回収を最優先し、人を傷つけることに、心が少しも痛まなくなった。


俺の口から、言葉が消えていく。感情が削げ落ちていく。

魔改造の代償。魂の摩耗。

俺は、兄を救うための、冷たい機械になりつつあった。



打ちひしがれたレイナは、マーカスの部屋のドアをそっと開けた。

マーカスは、ベッドの上で静かに体を起こしていた。全てを、察しているようだった。


「レイナさん…ケイを、止めてくれ」


力なく、しかしはっきりとした口調で彼は言った。


「あいつは、俺のために、どんどん人間じゃなくなっていく…」


そして、彼は告白する。

レイナが、そして俺が決して知り得なかった、残酷な真実を。


「俺はもう…そんなに長くはないんだ。だから、あいつには…俺のために壊れるんじゃなく、普通の人生を送ってほしい」


兄の本当の願い。そして、残された時間の短さ。

最後の希望を求めてここに来たレイナは、最大の絶望を突きつけられた。

彼女は、その場に崩れ落ちるしかなかった。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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