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第12話:白衣の悪魔

隠れ家に戻った俺は、一直線にレイナの元へ向かった。

リカルドの言葉が、脳にこびりついて離れない。

ハイペリオン・スパイア。Dr.アリシア。


「レイナ、ハイペリオンって会社を知ってるか?」


その名を聞いた瞬間、レイナの顔から血の気が引いた。彼女が淹れていたコーヒーカップが、ガチャンと音を立てて床に落ちる。


「……なんで、その名前を」

「いいから教えろ。兄貴を救う手がかりになるかもしれないんだ」

「あかん」


レイナは、低い声で呟いた。


「あそこだけは、絶対にダメ」


その瞳には、ゼウスの時とは比べ物にならない、本物の恐怖が宿っていた。

まただ。また、こいつは俺に何も教えず、ただ「ダメだ」と繰り返す。

俺の不信感は、確信に変わりつつあった。



「いい加減にしろよ! いつまで俺をガキ扱いする気だ!」

「あなたを心配してるからでしょ!」


俺とレイナの怒声が、狭い隠れ家にぶつかり合う。

彼女は俺の魔改造デバイスを掴むと、自分のコンソールに接続しようとした。


「何するんだ!」

安全装置リミッターを組ませてもらうわ。これがあれば、最悪の事態は…」

「ふざけるな!」


俺は、その手を荒々しく振り払った。

「兄貴を救うのに、リミットなんてあるか! 俺の技術を信じないのか!」

「あなたのその力が、あなた自身を壊すのよ!」


レイナの悲痛な叫びが、空気を震わせる。

だが、もう俺の耳には届かなかった。


「兄貴を救うためなら、俺は悪魔にだって魂を売る!」

「その先に、救いなんてないのよ!」


互いを想う言葉が、互いを深く傷つけていく。

俺たちの間に生まれた亀裂は、もう修復不可能なほどに広がっていた。



俺はレイナを無視し、一人でハイペリオンのネットワークにハッキングを試みた。

だが、相手はゼウスとはレベルが違った。俺のコードは、鉄壁の防御システムの前で、まるで子供の小石のように弾き返されるだけだった。


「クソッ…! なんだよ、この壁は…!」


その姿を、レイナが部屋の隅から静かに見ていた。

彼女の瞳に、過去の誰かの姿が重なる。無謀な挑戦、止まらない探究心、そして、悲劇的な結末。


「……また、同じ過ちを繰り返す」


彼女は小さく呟くと、何かを覚悟した表情で自室にこもった。

やがて、部屋の奥から、古い端末が起動する、低い駆動音が聞こえてきた。

それは、彼女が封印していた過去への扉を開く音だった。

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