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悪魔オヤジのムソウ  作者: 祇神 安紀
バーレン
589/596

求愛

猫人族の少年には恥も外聞も無いのかもしれない。

強心臓の持ち主であるメタンティが話し合いをリードするが

話の内容に大きな問題がある。


「それで、いつブラウさんを嫁にいただけるのですか?」


「挙式は何時が良いですか?」


「挙式の招待客はどの種族にしましょうか?」


「やはり全種族を招待すべきでしょうか?

 ・・・いや、それは少し無理があるかも・・」


ブラウを嫁に貰い受ける前提で自分勝手に話を勧めている。


流石に呆れるしかない。

一人勝手に喋るメタンティを誰も止めようとしない。



占領地側から話し合いに参加しているのはメルテ、イトラ、ブラウ

彼女たちも余りの話の内容に茫然としている。

と言うより(何言ってんだこいつ)という面持ちだ。


恐らくオヤネのこの場で話したい内容と乖離が甚だしいだろう。

彼女もメタンティの話す内容に混乱を隠し切れない。


「おい、ガキ、お前はいい加減黙れ!!!」


テーブルには着かず後方で成り行きを見守っていたアグラットが吠えた。


「それ以上、余計な事を言うと潰すぞ!」


アグラットの声を聞いてオヤネが慌てふためくように弁明する。


「もっ、申し訳ございません。

 如何せんまだ毛も生え揃っていない様な

子供のした事ですのでどうかご勘弁を・・・」


親の方は必死に謝罪を述べるが叱られた当の本人は

“なんで???”という顔つきだ。

叱られた理由すら分かっていない。

婚姻の申し込みの為の話し合いとでも思っているのだろうか?

・・・・バカである、と思ったのは秘密だ。


「待って下さい、これは交渉を有利に進めるための手段であって

 決して他意があるわけでもなく・・・」


手段と言っている時点で他意はあるだろう、と思ったのは秘密だ。


メタンティはブラウと婚姻関係を締結できれば

それを利用して交渉を有利に進めることが出来ると判断した。


「姑息なガキはもう二度と声を出すんじゃないよ」


「まっ、待って下さい。

 そちらに僕と同じ様な年齢の人が発言しようとしてるじゃないですか。

 それは余りにも不公平です!」


同じ年齢って誰の事?と思ったのは秘密だ。


「オヤネ、お前はブラウを嫁に貰う為の交渉をしたいのかい?

 若しそうだとしたら、トットト帰りな。

 そして二度とここに来るんじゃないよ。

 じゃなきゃ、分かってんだろうね・・・」


アグラットはドスの利いた声でオヤネに念を押すが

あなたの以前の職業は一体何なんですか?と思ったのは秘密だ。


「お、お待ちください、アグラット様。

 そのような事でこの地まで出向いたわけではありません」


「じゃあこの小僧の言った事は何なのさ。

 世迷言でも言ったってのかい?

 もしそうなら血迷った奴をこの席に着けるんじゃいよ!」


乱心者扱いされて黙っている様なメタンティではない。


「何を失礼な事を言われるのですか!

 僕は血迷ってません。

 至ってこの上なく正気です。

 真面目な話をしているのです。

 僕の覚悟は本物です。

 彼女を・・ブラウさんを僕の嫁にします。

 既に覚悟を済ませています。

今日この場で今すぐにでも皆さんの前で

見事に彼女を腹ませてご覧に入れて見せます。

さあ、ブラウさん、今すぐこの場で、皆の前で初夜を!」


今はまだ夜でもないんですが、と言いたいのだが言わないし

別に言うべきことがある。

しかし何か言う前にやるべきことが俺にはある。


そう思いメタンティの元へ駆け寄ろうとすると

俺の腰の辺りを掴んでいる者がいた。


「旦那様、ここは落ち着いて成り行きを見守って下さいませ」


ケイが俺を制止し耳元でそう(ささや)いた。

本来ならメタンティの奴をブッ飛ばしてやりたい所だが

ケイが俺に珍しく意見して来たので暫く様子を見ることにした。



「貴方は品性の欠片もなく下品で愚劣な方なのですね。

 その様な人の元へ輿入れしたいと思う女性がこの世に存在すると

 真剣にお考えなのですか?

 気持ちが悪く非常に不愉快です。

貴方の顔など見たくもありませんし

声を聞くだけで吐き気を催します。

もう二度と話さないで奥に引っ込んで下さいませ

気持ちが悪くて仕方がありませんわ」


ブラウに悪し様に言われたメタンティのショックは計り知れない。

まるでこの世の終わりでも見た様な顔付きだが

正に自業自得としか言いようがない。

放心状態に陥ったメタンティを担ぎ上げるノラネは

甥を憐れんでいる様な顔をするが

あのような求婚をされたブラウの方がある意味哀れなのかもしれない。

結婚しましょう=この場で直ぐヤリましょう!

そう求婚され嬉しく思う女性っているのか非常に疑問に思う。

というよりまずいないだろう。

・・・あれ?

あり得ない様な求婚をされた彼女にとっては

前代未聞な出来事である。

長い人生の中で滅多に出来ない経験をしたと考えれば

どうなのだろうか?

しかし俺が彼女の立場であったとしたら

絶対に経験したくない出来事であり

記憶から消し去りたいし無かった事にしたい。

もしブラウがこの事を引き摺っている様なら後で慰めよう。


しかしこの様な場であの様な求婚を行うメタンティに非がある。

もしこの後もあの様な愚行に走る様なら制裁を加える。





メタンティよ、この世から抹消される覚悟しろ!!!!


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