曖昧
アイラの指示でケイが魔力を解き放つと
猫人族を取り囲むように結界が張られた。
そこには誰一人として逃がしはしないと言う強い意志が込められている。
結界が張り終わると同時に暗雲が広がり稲光が立ち込める。
薄暗い雲の中走る雷は不気味である。
その不気味な光に照らされる猫人族を取り囲む影。
その影は異様な気配を漂わせる。
その影の後方から様々な魔力が感じられるが
一つは淫靡なもので他に暴風に似たものもある。
暗雲の主はボナディア、淫靡な気配の主は大福たち
暴風は恐らくノアル率いるエルフの軍勢
その他に生きる屍の禍々しい気配、これはディアナか?
もしや奥様たち勢揃いで?
魔力は徐々に強くなるがそれに簡単に屈する猫達でもない。
特にオバサンたちは増々、毛を逆立て荒い息を吐き唸るように声を出す。
「メルテ様、これはどう言うことですか?
わ、私たちに敵対するとでも?」
オバサンは固唾を飲んだ後、意を決した様に話しかけるが
メルテは鼻で遇うかの如く真面に話そうとしない。
「それは、こちらの台詞ですよ、オヤネ」
猫人族の親玉であるオバサンの名はオヤネ・コニャンと言うらしい。
メルテもそうだがイトラもオヤネとは顔見知りの様だ。
「オヤネ、あなたがここまで馬鹿だとは思いもしませんでした。
私たちを敵に回したことを後悔しなさい」
イトラが言い終わるや否やそれまで俺の側にいたアグラットが
魔力を激しく増大させた。
その膨大な魔力は留まることを知らない。
確実に猫人族をこの世から葬り去るつもりだ。
「お前ら、この場にやって来たことをあの世で後悔しな!
アイラ、打ち漏らしは全員、始末おし!!」
アグラットはそう言い終わるや否や
容赦のない広範囲爆裂魔法の詠唱に入った。
それを聞いた猫人族たちは顔面蒼白になり明から様に怯えた。
「まっ、待て!!!」
先程まで俺が殺ろうと思っていたが
それは自分を見失い感情に任せた結果だ。
冷静になればそれが如何に悪辣な行為であるか分かる。
その様な最悪な行為を奥様たちにさせるわけにはいかない。
俺がアグラットに制止を求めると彼女は直ぐに詠唱を止め
俺に振り返り又、耳元で囁く。
「旦那様がこれをやろうとしていたんだよ」
(人の振り見て我が振り直せ)と言いたいのだろう。
アグラットが魔力を収めるとケイも結界を解き
それの習うかのように暗雲も晴れ
猫人族を取り囲む異様な気配も消え失せた。
この場から全ての異様な気配は消え去ったのだが
それで猫人族が消えたわけではない。
しかし彼らは自分たちが攻撃されないと悟ったのか
少し安堵の表情を浮かべたオバサンがイトラに話しかける。
「イトラ殿、我々は何も争うつもりで
この場にやって来たのではないんだよ。
ただ、息子を連れ戻しに来ただけなんだ。
どうかご配慮を宜しく頼む」
イトラに向かい深々と首を垂れる。
イトラは一つ大きな溜息をつき彼女に言う。
「それはなりません。
旦那様の判断により捕らえられたのです。
そなたの子息にはそれ相応の報いを受けて貰います」
「報いって・・ 息子が何をしたって言うんだい!
私たちの元へは冤罪で捕まり酷い仕打ち受けたって知らせが・・」
猫のもとへ知らせ?
誰が何時どの様にして知らせったって言うんだ?
そう言えばメタンティの情報源も定かではない。
オバサンの所へも出所不明の情報が齎されたというのか?
曖昧な情報を基に行動を起こすのは
猫人族の習性なのだろうかと思ったのは秘密だ。
情報収取能力を磨けや!!!!




