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悪魔オヤジのムソウ  作者: 祇神 安紀
バーレン
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慰撫

おば様方の迫力に怖気づいてこの場から逃げようとした時

後方から声がした。

恐ろしい気配を放つ方からだ。


その声を聞いた一瞬、自分の耳を疑ったが

紛うことなくケイの声だ。

彼女の声をこの俺が聞き間違える筈はない。


普段、彼女は無口で必要以上だれとも話すことはない。

俺と話す時も無駄口をたたく様な事などないし

会話らしい会話もなく殆ど俺が一方的に話をするだけだ。

ましてや自分の感情を表に出す事など一切ない。

その様な彼女にあの様な声を出させてしまった。


俺が上手く猫人族と交渉出来ていたならばあのオバサンたちも

この地には来ていないはずだ。

俺が下手を打ったばかりにこの様な事態を招き、その結果として

ケイにあの様な声を出させてしまった。

全ての原因は俺にある。


本来は反省しなければならない処だが

それよりも先に自分の不甲斐無さに怒りが込み上げてしまい

その矛先を猫人族に向けた。

正に八つ当たり。

殺意にも似た感情を一気に爆発させた。


ケイの声に驚いた猫人族たちは俺の怒りに反応したのだろうか。

皆、総毛を逆立てている。

怒りには怒りで応えようと言うことか?

その様子を見て増々、怒りが込み上げた。


「こ、小娘が・・・

 誰に向かってその様な口を・・・」


一番偉そうにしているオバサンがケイに返すが

その声には以前の様なおば様独特の迫力は無い。

ケイの圧に押され少し怖気付いたのか?

まさかその様なタマでもあるまいに。


風邪でも引いていたのか、その表情は蒼褪め

悪寒で震えているようにも見える。

しかし今の俺にはそのような事は関係ない。


「お前ら、全員・・・ぶっ殺す」


俺が独り言の様に小さな声で(つぶや)いたその時

後方より感じていた殺意が消えると同時に

気配が俺の側にやって来た。

その者は側に来るや否や俺の顔を自分の胸に押し付け耳元で(ささや)く。


「ダメじゃないか、八つ当たりなんて・・

 みっともないよ、旦那様」


この巨乳の感触、それにこの声・・・

間違いなくアグラットだ。

まあこの俺が妻の胸を間違える筈などない。

声も間違える筈もない・・・と思う。

しかしどうして彼女がここにいる?


彼女の胸や声は俺に落ち着くように訴えかける。

まるで駄々を()ねる赤子を(なだ)めるかの如く。


そのお陰で何とか平静を取り戻そうとしたその時

また新たな気配を後方より感じた。


その気配は俺の怒りが和らぐのとほぼ同時に発せられたのだが

何と言えば良いのだろう。

何か冷たい様な・・

それでいてその奥底に熱いもの感じる様な・・

地底奥深くに引きずり込まれる様な・・・

まるで奈落の底に引きずり込まれでもするような気配だ。


「猫人族ども、御控えなさい!!

 我らが主に対し無礼であろう!!」


気配とは別な者が言葉を発する。

この声は・・

また何故彼女がこの場にいる?

メネスに行っていたのでは?

それに隣にいる静かだが冷たく

地中深くに引きずり込むような気配は?



声の主と共に冷酷とも取れる気配を放つ者も

俺の側にゆっくりとやって来て猫人族のオバサンに声を掛ける。


「どういう事ですか? オヤネ・コニャン」


冷たくも恐ろしい気配を放つ者は猫のオバサンと旧知なのか?


「こ、これは、イトラ殿にメルテ様・・・

 何故このような場に?」


「それはこちらのセリフです。

 オヤネ、ここは同じ獣人族でも猿人族の領地。

 まして今では我らが主人、ノーヴ・ツァ・ロンヒル様が支配しておられる。

 何故、斯様な場にあなた方がいるのです?

 それにその不穏な者共を率いるなど一体、何の真似ですか?」


メルテがオヤネに冷たく言い放つ目は

かなり冷たく感じるのは俺だけだろうか?

彼女の表情は消え眼だけが冷たく輝いているように見える。

目は口ほどに物を言うが直にそれを垣間見ることなどない。


「旦那様、ここは我々に任せて家でゆっくり寛いで下さいませ。

 ケイちゃん、旦那様を家までお連れして」


「畏まりました、ブラウお姉ちゃん」


「あっ、ケイちゃん、その前にヤッテしまいなさい」


「はい、アイラ様、直ぐに」


そう言い終わると同時にケイは魔力を増大させ

一気に解き放つ。





あ~ぁ、これ終わった!!!


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