勘違
メルテの情報によると話し合いに応じる様な相手では無さそうだ。
暴力による問題の解決などは俺の好むところではない。
しかし相手が応じないのであれば止むを得ないのかもしれない。
戦いによる問題の解決。
暴力による問題の解消。
頭の血の巡りの悪い者が執る手段ではないかと思う。
まあ俺も血の巡りが良い方ではない。
それでも何とか話し合いによる問題の解決を模索したい。
猫人族への対応は俺の中では決めている。
相手がたとえ話し合いに応じなくても
それに向けて努力を怠るべきではない。
こちらとしては明く迄も話し合いによる解決姿勢をギリギリまでとる。
暴力による解決は最終手段にする。
暴力で叩き伏せるのは早くて簡単な解決法かもしれない。
しかしそれにより禍根を残すことになり兼ねない。
その場凌ぎの解決では意味が無いという思いが拭い去られないのだ。
可能か不可能化は別としても平和的解決は常に模索しなくてはならない。
・・あれ? まてよ・・
俺がそこまで考えなくてはならないことなのか?
猫が攻めてきた・・撃退した・・はい、終わり!
誰か後のこと、よろしくね・・・
これで十分なのか?
いや、いや、俺は英雄でも勇者でもない。
彼らならそれで何とかなるだろう。
何と言ってもカリスマが違う。
俺にはカリスマなど欠片も無いのだ。
たまにガキ扱いされるくらいだから全く無いと言っても良い。
カリスマの無い俺は暴れた後始末も自分でしなくてはならない。
英雄や勇者の暴れた後ならば他の誰かが後始末してくれる。
何せカリスマがあるのだ。
勇者様のため、英雄様のためにとみんなが動くだろう。
あれ? 俺にもそんな人たちがいるような・・
そう、騎士団のお嬢様たちだ。
彼女たちならば俺のためにと喜んで後始末をしてくれる。
ただ彼女たちにとっての俺はカリスマではない。
そう、俺は彼女たちにとっての餌なのだ。
サキュバスの餌、たまに撒き餌、まれに疑似餌だ。
美味しそうなご馳走である・・・
・・・やはり暴力に頼った解決策はやめよう。
皆の労力に頼る様な解決策は愚策だと思うことにした。
猫人族の要求は前回同様に機嫌が設けられていない。
そのまま放置していても問題は無いのかもしれないと
甘く考えても良いのではないかと思うのだが
そう言う訳にはいかないだろう。
前と同じでこちらから先に動くか、それとも
相手の出方が分からない以上
こちらから先に仕掛けない方が良いのか、
思案の為所である。
そうは言っても俺に何か策があるわけではない。
策が無い以上こちらから動くことは控えるべきだ。
「それで、旦那様。
面倒だから猫人族を潰してしまうつもりなのかい?」
アグラットは頭痛の種は早いうちに摘むべきだと言う。
「こちらから好んで火中に飛び込むことも無いかと」
メルテは様子を見て対処すべきだと主張する。
「旦那様、もうイゲンダー卿に総て任されては如何でしょう?」
イトラはこれ以上関わるべきではないと言う。
「面倒なので、この地から立ち去りましょう!」
アイラは占領地や獣人問題にこれ以上与しない方が良いと言う。
「旦那様は獣人族を支配下に治めるおつもりなのですか?」
ブラウが心配そうに尋ねる。
「まさか獣人族の姫様の居場所を作ってやろうと・・」
ディアナが妙な勘繰りを入れてくる。
「この地はダメです、安心して子育てが出来る様な土地とは言えません!」
何を思ったのかアイラが訳の分からない事を言い出した。
「子育って・・何?
・・・・まさか!!!!」
「あっ、いえ・・まだ授かったわけではありませんが
将来的にこの地は子育てに適していないかと」
彼女はこの地に俺が定住するのではと思った様だ。
「ああ・・・・なるほどね。
でも俺はここに定住するつもりはないよ」
「では、アザリアにお戻りになられると?」
いや、それも考えてはいない。
しかしアイラは戻りたいのかもしれないと思うと完全否定は気が引ける。
「う~ん・・・あくまでも選択肢の一つかな」
曖昧に答えることにした。
少し残念そうな彼女を見て気が引けるが
現在のアザリアは俺の理想とする街に乖離し過ぎている。
「ほら子供を育てるのならもっと
ノンビリとした雰囲気の所が良いかな、って」
子育ての事を考えてと言うとアイラの表情も明るくなった。
「そう、そうですね、大切な子供を育てるのですから
出来るだけ良い環境で育てたいですね」
そう言いながらお腹を撫で子供でも授かっている様な仕草をする。
「わ、私も頑張って育てます!!」
・・えっと、ブラウさん。
・・まだ君が先に育とうね。
・・それに寝相が良くなるべきだと思う。
・・今はまだ胸よりお腹が出てるしね。
・・頑張って育ってね。
・・お腹だけ育っても良くないし。
安心して子育ての出来る街を探そう!!!




