休息
ドラムスからの事情聴取は捗らない。
既に盗賊行為を指示したことを白状しているので罪状は明らかだが
動機や目的が曖昧であり自分から進んで犯行に及んでいない節さえ伺える。
彼は誰かに指示を受けたり、唆されて犯行に及んではいないと言う。
独自の判断で盗賊行為をしたのならば明確な意図を供述可能なはずだが
その点が不明瞭過ぎる。
・・もしや、アホ過ぎて明確に意図を述べることが出来ないのか?
・・その様なアホが大勢を率いて盗賊行為を?
・・アホの心理を俺が理解できないのか?
・・もしや俺がアホ過ぎて分からないとか?
色々考え過ぎてしまい混乱を招く結果となった。
心身共に疲れてきたのだろうか、放心状態に陥ることもしばしば。
ドラムスの相手など出来ない。
・・・何か、あいつの顔を見るだけでムカつく・・・
暫くドラムスの取り調べは行わない。
少し期間を開けて再開する。
今の俺の状態からまともな取り調べを行うことは困難だと判断したからだ。
奥様たちは盗賊退治で頑張ってくれた。
労いの言葉すらまだ掛けていない。
取り調べより先に声をかけるべきだった。
遅くはなったが彼女たちに声をかけて回った。
「私たちより旦那様の方が少しお疲れの様に
お見受けいたしますが如何なされたのでしょう?」
俺の様子がおかしいとボナディアが気を使うが
占領地に戻ってから彼女は盗賊の治療で大忙しだった。
「いや、俺よりもボナディアの方が大変だったね。
盗賊の治療、ご苦労様、少し休むと良いよ」
お互いの疲労を気遣いあったのだが
彼女は心配そうに俺に横になるように勧める。
しかし横になって体をいたわるべきは彼女の方だ。
大そうな人数を治療し魔力もかなり消耗している。
是非、体を休める様に勧めるが彼女は首を横に振る。
「私は慣れておりますので大丈夫です。
それより旦那様の方こそ、心配でなりません」
そんなに疲れた様に見えるのだろうか?
「お顔色も優れませんし・・・
何があったのかお聞かせ願えませんか?」
余りにも執拗く聞いて来るのでドラムスの取り調べの件を詳細に話した。
「なるほど・・・そうですね・・・
一度、そのドラムスと話をさせて頂けませんか?」
彼女はドラムスの様子を聞いて何か思い至ったようだ。
「一部に奇妙な点がございます。
もしかすると・・・・・いえ・・しかし・・・」
歯切れが悪い彼女だが一度会わせることを約束した。
「旦那様、少々こちらでお待ちいただいても?」
ボナディアの作業部屋で少し休息をとり横になることにした。
・・・これって、診療用のベッドだよね?
気にせず横になり窓の外を眺めると
元気な騎士団たちが何やら燥いでいる。
何故かそれを見ていると微笑ましい気分になる。
やはり殺気に満ちた少女を見るより無邪気な彼女たちの方が良い。
少しするとボナディアが戻ってきた。
「お待たせいたしました、どうぞこれを」
そう言いながら俺に飲み物を手渡した。
どうやらお茶のようだが・・
今まで嗅いだことの無い香ばしい飲み物だ。
紅茶か? 烏龍茶? ドクダミ茶? 鳩麦茶?
「特別な葉を煎りまして煮出した飲み物でございます。
気分が優れない時などに飲用すれば気も楽になるかと」
なるほど、ハーブティーの様なものか。
苦手だと思ったのは秘密だが
彼女の気遣いには感謝して有難く頂くとしよう。
確かに変わった味はするが不思議と気が和らぐ。
飲み物は人にも種類にもよるが気分転換を図る効果が期待できる。
その人の状態に応じて選択を間違えなければ
効果覿面と言ったところだろう。
「態々(わざわざ)俺のためにありがとう、ボナディア」
「どういたしまして、これも妻の務めで御座います」
優しく微笑む彼女の笑顔も俺の気持ちも安らぎを与える。
「そうそう、それと・・」
何やら言いにくそうな感じなので続きを促した。
「夜のお勤めは暫く御控えになられて下さいませ。
それに出来ましたら寝るときは必ず
ブラウとケイを侍らせますようお願い申し上げます」
・・・ゲッ!!
ケイはまだ良い。
寝相が良いので・・・しかし。
ブラウはこの間の胡桃事件以来避けてきた。
ブラウは寝付きが早いので最近は営みの際に
メルテが寝かせつけてくれていた。
しかし言われてみると俺の寝付きも彼女たちが側にいる方が良い。
ここは一つ、潰される覚悟でブラウを側に寝せることにする。
「でもアイラとか文句言いそうな気がするけど大丈夫?」
「大丈夫でございます。
この私に文句を言える者などおりません」
アグラットは平気で文句を言いそうだと思ったのは秘密だ。
夜の営みの休息宣言をするぞ!!!




