対策
俺のバーレン行き計画は見直しを余儀なくされた。
奥様たちを安心させるためには仕方がない事でもある。
ブラウからも荷台用の空力車の作成を責付かれた。
まずはそちらの方から先に製作に取り掛かるが
こちらは小型で簡単にできる。
ホバークラフトの原理の応用?・・じゃないな。
簡単にしたもので軽く浮かせ風の方向を進行方向と逆にしただけだ。
馬力は低いがトルクを高めたので重い荷物も十分に運べる。
操縦性も楽で誰にでも扱える優れモノ?だ。
試作機が出来たのでブラウに伝えると驚いたようだ。
「でも、どの様に操作するのでしょう?」
あれ?・・・運転席を作るのを忘れていた。
また始めから作り直しだ。
慣れない作業なのでこの様な事も起こりうるのだ。
・・・・ブラウ、笑うな!
空力車の作成だけでも数日を要す結果となった。
運転を前後可能に、積み荷はサイドから、荷台の部分はコンバーチブル
ブラウも操作性に優れているので満足気だ。
「でも運転席を前後二か所と言うのは・・
効率が悪いのではありませんか?」
戻る時にバックで移動しなくて良い様にと思ったのだが
効率とは作業効率のことだろうか?
車重が重くなるから燃費の事か?
四輪駆動にしているので問題は無い・・はず。
トルクはもちろん、馬力も想定より上がったのだ。
燃費が少々あれだが、かなり作業効率が上がるので問題は無い。
作業用空力車も完成しそれをモデルに旅行用・・じゃない。
探索用空力車の作成に入る。
スーパーチャージャーにターボエンジンを搭載し・・あれ?
排気量を大きくすれば良いだけか・・・
いや、急な斜面などを想定すると・・
やはり馬力よりトルク重視で・・・
作業用とは動力源を別に考えないと悪路や急な斜面には対応できない。
やはりオートシフトを搭載すべきか・・
マニュアル車にすればその点は良いのだが・・
普通に運転するにはATが楽そうだし・・・
シングルギアには限界がありそうなのでそこも一考の余地ありだ。
無い頭をフル回転させているが一向に妙案が浮かばない。
ここは気分転換をすべきだろう。
「ここにいらっしゃいましたか。
直ぐに会議場までお越しくださいませ」
少し慌てた様にイゲンダー卿がやって来た。
「何かあったんですか?
今、忙しいんですけど」
嘘だ、忙しくは無い・・が。
何か嫌な予感するので彼の要請を断ろうと思ったが
そうはいかない様だ。
「凡そ見当がお付きだとは存じますが、
市場が大変な事態になっております」
あぁ、アイラの酒を巡り争いが起きているのだろう。
手に入らなかった者が手に入れた者を妬み争っているのだ。
「そうではありません。
供給が追い付かないのです」
需要はあるが供給する物が不足し住民に紙幣が行き渡らず
買物が出来ないと騒いでいる。
「えっ? 誰も何も売りに来ないの?」
「売るものが無いらしく換金を求める者が多くなっております」
確か銅貨1枚を10モン 大銅貨1枚が100モンで銀貨1枚を1000モン
大銀貨1枚を10000モン 金貨1枚が100000モン
その様に決めたはずだ。
因みにモンはこの市場の紙幣通貨単位である。
「それに売りに来るものが少なく専売所も品薄状態でして」
しかし換金を求めているとなると住民はそれなりに
金貨や銀貨を持っていたと言う事になるが、聞いた話とは異なる。
不思議な事もあるものだが住民に対する誤った認識を
代表者が持っていたのかもしれない。
「取り敢えず、会議場に行きましょう」
代表者たちが詳細な情報を持っているのか
疑問に思うが会って話を聞いてみるしかない。
また面倒なことにならなければ良いのだがと不安に思う。
会議場に赴くとそこには待ってましたと
言わんばかりに質問攻めにあった。
質問というよりほぼクレームだなと思ったのは秘密だ。
「まあ、みなさん、一先ず落ち着きましょう」
一斉に話されても何を言っているのか理解できない。
聖徳じゃないんだぞ、俺は・・と思ったのは秘密だ。
個別に順を追って話を聞くと概ね市場での品揃えが悪いと言う事と
最近盗賊の動きが活発化していると言う事だ。
「治安維持部隊の創設はどうなってるんですか?」
部隊は出来ていて領内全般の巡回などを行っているが効果が無いと言う。
威力巡回を兼ねて見回りを行っているはずだ。
それなのに効果が無いという事は余り考えられない。
「どの様な巡回を行ってますか?」
威を示すため全員で固まって巡回しているという事だが
それでは盗賊の良い様にされてしまうし
威の示し方を誤っている。
もっと頭使えよと思ったのは秘密だ。
「集団行動は問題ないですが・・・
それでは盗賊に全部隊の現在の居場所を教えているのと
同じことになりませんかね?」
盗賊が少数であるとは限らない。
それに備え大人数で巡回する事も理にかなっている。
しかし全部隊で行動を同じにするとは・・
巡回していない場所は無防備ですよと盗賊に教えている様なものだ。
巡回する部隊の運用についていくつかのアドバイスをした。
まずは部隊を分けて巡回時間もある程度不定期にする。
盗賊の被害者から情報を得て盗賊の
出没しそうな場所を特定してもらうことにする。
これだけで盗賊対策はまだ不十分だが
情報が少ないので的確な対策も講じ辛い。
情報を集め精査し対策を講じるべきだ。
この件はなるべく多くの情報を集めてもらう様に
代表者たちに頼んだ。
次は販売するための商品の確保だが主に不足しているのは食品だ。
「食品の方は仕入れが可能ですからご安心を」
売れると分かっているのなら食品は確保できる。
「イゲンダー卿、占領地内の食品を回してください」
「今貯蔵している分で宜しければ構いませんが、
こちらの食糧の補充は如何なされますか?」
「補充可能ですから安心して出せるだけ出して下さい」
しかし、何故売りが無いのだ?
仕入れが出来ないのなら売れる商品もなくなる。
品薄の要因はそこにあるのだが・・
市場に買い物に行って商品が無い。
品薄により販売価格が高騰すると購買意欲は下がる。
スタグフレーションなんか起きたら
この地の経済は終わったと言っても過言ではない。
あれ? 終わったと言えるほど経済は確立されてないな・・
いや、経済が安定してない状態でのそれは
ある種の災害の様なものだ。
貧困層拡大災害とでも言っておこう。
その要因を作った奴がいれば極刑だ!!!!




