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悪魔オヤジのムソウ  作者: 祇神 安紀
バーレン
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判決

今回の裁判における判決が下った。

下したのはイトラだが当然不服申し立てをする者がいる。


「判決対する異議または再審請求は一切受け付けません」


この一言で無事終了・・・か?


「判決、モラーウゼ・フォン・ヨコドリー伯爵。

 国家反逆罪により無限牢獄送りに処す」


「異議あり、帝国貴族の刑罰は処刑が上限ですぞ。

 今の判決は無効です!」


ヨコドリーめ、自分から処刑される道を選んだか。


「では先の者、国家反逆罪により処刑とする」


・・あれ?ヨコドリーのやつ今、笑ったような・・


「畏まりました、謹んでお受けします」


「では早々に処刑の準備を!」


イトラが即座に処刑を執行せよと警備隊に告げる。

それを見ても尚、ヨコドリーは笑いを失わない。


「アハハハッ、結局は無罪と同じだ。

 爵位は失うが財を得て余りあるので良とするか」


あれ? 処刑なのに無罪って思ってるの・・

気でも狂ったか?


「イトラ様、御存じであろう?

 帝国貴族には恩赦がある。

 私の爵位は伯爵位なので

 四階級の恩赦が賜れるはず。

 よって処刑より四階級の恩赦ならば刑罰は無い」


メネス帝国の裁判は貴族の爵位に応じ恩赦がある。

騎士爵・男爵・子爵・伯爵・侯爵・・

伯爵は四等級に位置し刑罰は四階級恩赦を受けることが出来る。

代わりに爵位は失うのだが命よりはマシだ。


「では私はこの場から帰らせてもらおう」


もうアザリアには未練は無いと言わんばかりに立ち去ろうとする。


「お待ちなさい、四階級の恩赦を受けたとしても

貴方の処刑は確定です」


「な、何故だ? 恩赦を無視するつもりか!!!」


慌てふためくヨコドリーやその他の被告人たちにイトラが言う。


「貴方たちは罪を犯し過ぎたのです。

 累積により処刑相当となります!」


彼の犯罪は国家反逆罪に留まらない。

詐欺・横領・背任・犯人隠匿・犯罪教唆・有印公文書偽造・・

総て有罪が確定し最早、逃れられないのだ。

 

「警備隊、連行しなさい!」


イトラの命により警備隊が犯罪者を連行した。

因みにイトラはメネス帝国皇帝としてこの裁判を行った。

そしてプ裁判の長としてトレ王国の承認も得ている。

両国承認の基に裁判管理者及び執行者としての立場らしい。


「えっと・・イトラの皇帝の立場って理解できるけど

 プトレ王の承認って誰が出したの?」


「お戯れを、ブラウ様に決まっているではありませんか」


ブラウは形式上のプトレの王位継承者だ。

俺の知らぬ所でその様に決めていたらしい。

・・・ラゴスの入れ知恵か・・・

消滅したはずの両国は形式上存続させることに

奥様会議で決定していた様だ。

知らぬは俺ばかりなり・・ってか!



犯罪者として連行される者のうち一人を呼び止めた。


「ナイゼーはこの場に残れ」


諦めた様な怖気づいた様な顔をする男が残った。


「お前に質問がある。

 確か以前、お前は教育制度に反対した貴族だったよな?」


「はいそうですが、それが何か?」


「現在でも教育は不要と思っているのか?」


「私は一度も教育が不要とは申しておりませんが」


彼は教育が不要ではない、制度そのものに不満があったと言う。


「教育ではなく義務化することに反対だったのです」


教育とは無理に受けさせるのではなく、進んで自ら受けるもだ。

主体的に教育に臨まなければ意味を成さず習得できない。

返って当人に悪影響を及ぼしかねないと言う。


続けて彼は主張する。

アザリアに越して来たのは帝国の制度に嫌気が差したからだ。

古い制度に縛られ闊達な意見も述べることを

許されずその自由が認められない。

まるで制度の奴隷と化した国などに未練はなかった。

心機一転アザリアでは帝国と違うと期待を胸に膨らませたが

教育の義務化によりそれも覆されてしまった。

教育も義務化するのではなく自由に受けさせるべきだ。


「我々は制度の奴隷となるべきではありません。

 もっと自由に選択できるようにして欲しかったのです」


彼の言い分も理解できる。

あまり制度や法に振り回されると束縛された気分になる。

しかしそれも事に因る。


「つまり教育は受けたいと思う者だけ受けさせれば良いと?」


「そうです、そうあるべきなのです!」


「では聞くが、俺は基本三歳から教育を受けさせようと

思っていたのだがそれは覚えているよな?

 三歳児が教育の必要性を解してると思うのか?

 その年齢で必要性について正しい判断が出来るなら

お前の言う事が最もだろうな」


「・・・いえ、その年齢で正しく理解する者は稀かと」


「それに教育をある程度受けさせないと

判断も出来やしねえんだよ」


本人の中に判断基準も無いのに判断させるとかある意味無責任だ。


ナイゼーはバカではない。

ただ少し思い込みが激しい様にも思える。

俺もだが・・


「もっとさ、多くの人を見ろよ、他者の立場で考えてみろよ。

 自分の中だけの判断基準でやれ束縛だとか

自由がないとか奴隷だとか

少し料簡が狭いんじゃないか?」


俺たちのやり取りを傍聴席の領民も聞いているが

今回の裁判である程度の教養が必要だとは感じているみたいだ。


「ここにいる領民に尋ねる。

 教育は必要か?要らないものなのか?」


誰もが(ささや)き合い(ざわ)つくが答えようとしない。

自分の意思も表せない様では彼らの将来が危ぶまれる。


「この現状をどう思う? ナイゼー」


「はっ、(いささ)か危惧するものであります」


ナイゼーも領民に対し学習機会を与えなくてはと感じている。


「ナイゼーに処罰を申し渡す。

 今後のアザリアについてこの場にいる領民とよく話し合え。

 いいか、結果が出るまで幾日かかっても構わん。

 徹底的に話し合え」


イトラが少し呆れた顔をするも

彼女もナイゼーに同様な処罰を与え裁判の閉廷を宣言した。


後で裁判は公開すべきではないとイトラに叱られたのは秘密だ。





公開処刑よりマシだろうが!!!


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