我慢
開放感溢れ自由を満喫していた居候三人組も
占領地に移すことにした。
本来なら姫様一人だけ移せば良いのだが
贔屓は良くないだろうと思い三人同時に移動させた。
問題は三人組の占領地での住居だ。
イゲンダー侯爵の屋敷に泊めてもらっても良いのだが
迷惑をかける可能性大だ。
そこで占領地の立ち入り禁止区画で空き地に仮設住宅を建てる。
仮設住宅といってもプレハブ住宅の様なものではない。
昔俺が建てたログハウスの様な物だ。
・・・小屋とも言う。
中の部屋は広めであるが畳ではない。
それなりの数のベッドも用意しなければならないし
部屋の中を分けるパーティションも必要だ。
トイレと風呂も別に用意しなければならないし
キッチンはどうするか考えなければならない。
ログハウスを用意した後ディアナに頼み
トイレや風呂にキッチンの件をお願いした。
俺が風呂などを作るより彼女に任せた方が
より良いものを作ってくれるからだ。
「お任せください、最適なものを建てますので!
あっ、部屋の中の仕切もやらせて頂きますね」
ディアナは快諾し即座に作業に取り掛かったので
この場は彼女に全て任せて俺はノアルを探しに出かけた。
彼女は騎士団員たちに混じり開墾作業を行っている。
うら若き女性たちが労働に精を出している。
その姿はまるで楽しんでいるかの様に俺の目に映った。
笑顔で何か話をしながら作業に勤しむ姿は
小鳥が何か囀っているかの要にも見えて微笑ましく思えた。
その小鳥たちの中に一際目立つ存在がいる・・ノアルだ。
俺の奥様たちは指導者など指示を出す立場にあたる者ばかりだ
彼女もその一人なのだがこの様な作業を行う時は
何故か指示を受ける方に回る。
今日も騎士団に混ざり作業中だ。
美人が笑顔を絶やさず汗を滲ませ働く姿はより麗しく見える。
しかし、撓わな胸が揺れ・・汗が曲線を描く・・・
・・・ヤバい、ご立派さんが反応しかけている。
「あっ、これは気が付きませんでした。
お越しになっていらっしゃったんですね」
より一層笑顔を見せるノアルだが・・
今はダメだ・・・・思い切り我慢した。
俺の反応に気が付いたのか
彼女は駆け寄ると俺の耳元で囁く。
「今、汗を流してまいりますので
人目の付かぬ所でお待ちくださいませ」
いや、そうじゃない、
そっちの用で来たわけではないのだが・・
ぐっと堪えるのに苦労をした・・・が、
この様な様を見過ごさない者がこの作業場にはいる。
俺のこの様な気配に気が付いたのかその者も駆け寄って来る。
「ノアルさん、一人抜け駆けは許しませんよ!
さあ旦那様、今すぐあの場にて致しましょう」
だから・・・違うって・・・
休憩のための小屋を指差すアイラの勘違いを正すのに苦労した。
「ノアル、アザリアの状況を探りたいんだけど
配下の者はまだ結構アザリアに残っているの?」
アザリアの情報収集に関してはノアルを置いて他にいない。
「はい、アザリア内の情報の収集はお任せくださいませ。
至急行ってまいります」
「いや、ノアルにはこの地に留まって欲しいんだけど
ノアル自身が行かないと情報収集は無理そう?」
「配下の者はアザリア領内に留めておりますので
私が赴かなくても収集可能です」
情報収集の件についてはノアルに任せて良さそうだが・・・
アイラよ、何故に瞳を潤ませる!
みんな作業に勤しむ中
その様なお楽しみを望んでも良いのか?
「お忘れでございますか?
旦那様の御仕事が何なのかを」
俺は引退したG1ホースではないし・・・
シンジケートも組まれてないし・・・
そろそろ種馬扱いは止めて欲しいと思ったのは秘密だ。
興奮冷め止まないアイラを説得するのは不可能に等しい。
しかし俺にはまだやらなければならない事がある。
「そうだね、奥様たちみんな揃ってからだね。
そうそう、みんなの都合が良い時間に集まって欲しいんだ。
アイラ、それをみんなに伝えてもらっても良いかな?」
こういう時のアイラを落ち着かせる?宥める?ためには
何かしらの任務を与えると良い。
勤勉な彼女は直ぐに正気を取り戻し即座に取り掛かってくれる。
今は皆、忙しいのだ。
その様な中、奥様たちと勤しむのは気が引ける。
俺もヤリたいのをグッと我慢するのであった・・・
しかし、今夜は大運動会になるなと思ったのは秘密だ。
我慢のし過ぎは体に毒だ!!!




