奔放
居残り三人組は何故かケイを恐れている。
確かに表情が豊かな方ではなく、
外見から何を考えているのか判りづらいところもあるが
気配りもできる根は優しい子だ。
その様な彼女を怖がることを疑問に思い
尋ねてみることにした。
「あんな恐ろしい女、どうしてこの世にいるんだよ!」
「話している時、噛みつかれるかと思いましたわ」
「おしっこ漏らしそうになる・・・」
何か三人とも抽象的過ぎてよく分らん。
「いや、恐さの度合いじゃなくて・・
そう、注意する時、どう注意されるの?」
俺もそうだが具体例を挙げての説明が
不得意なのかもしれないと思い
注意される様子を尋ねてみた。
「じっと瞬き一つしないで目を見て話す感じかな・・」
「そうですね、見つめられると飲み込まれそうに感じてしまいます」
「目が大きくなってきて、噛まれるって思ってしまって・・」
眼で噛むってどういうこと?
見つめられるだけで委縮してしまっているのか?
ブラウとアストレアの方を見ると何故か頷いている。
「ケイちゃんは人を襲うことはしないのですが
彼女が怒っている時は何故か噛まれるって
気にさせると言うか・・・」
「そうですね、首筋辺りに噛みつくのではという様な・・」
二人ともケイが怒った時の様子を知っている様だ。
・・俺は知らないけど、と思った事は秘密だ。
「そう言えば、アグラットお姉さまが
怒った時に雰囲気が似ているかもしれません。
少々異なるとは思いますが・・」
ブラウにアストレアが同意するが
確かにアグラットに似ているとしたら恐ろしいだろう。
「へぇ~・・そうなんだ・・・」
やはり怖いもの見たさという気持ちはある。
今度見てみようと思ったのは秘密だ。
「しかし、この有様だとケイに注意はしてもらうつもりだが
どうしてこうなったんだ?」
「あの・・コンコルディアさんを見ていたら
開放的な気分になってしまいまして・・
つい・・・」
「コンちゃん、自由過ぎて羨ましくなって真似してみようと。
つい・・・」
「う、裏切り者おおおお~!!!」
よく見ると糞尿もその辺りに・・・
食べ溢しなんか、なんのその・・
服も脱ぎっぱなしで今も下着姿・・
「ふ~ん、コンコルディアの真似ねぇ~・・」
自分の事を他人のせいにしてはいないが・・
「ブラウ、今日から全員オムツ用意してあげて。
それに涎掛けもお願いね。
そして三人とも暫くはその格好で過ごすこと、
いいね!」
コンコルディア以外の二人の気持ちは少しだけ理解もする。
この地に来るまで自由な生活を送ることが
許される環境では無かった。
それがこの地で自由に振舞っているコンコルディアを
羨ましく思って真似てみたのかもしれないが・・・
自由の程度が低すぎるというか、
自由に生きる意味の解釈の度合いに問題があるように思える。
「アストレア、この三人に道徳というか・・
社会で生きていくために必要な道理を
しっかり教えてあげて。
自室とはいえ酷過ぎる」
「「「ええぇ~、そんなぁ~・・・」」」
「折角迎えに来たというのに言う事聞かないようなら
またここに置いて行くけど?」
「言う事聞きます!」
「置いて行かないで!」
「仕方ないわね、聞いてあげる!」
別にこの地が安全であるなら無理して連れて行く必要もない。
一瞬、置いて行くことを考えたが
何かあってからでは遅い。
俺の側なら何か起こったとしても即時対応可能だ。
やはり安全性から考えても連れて帰る方が無難だろう。
連れて帰るにあたり今後の事についてタマモと少し話すことにした。
タマモは獣人族の姫様の座を奪われている。
まずはその事について彼女の意見を尋ねてみたい。
「まあ・・その様な・・」
絶句とまでは行かないにしても驚いている、
しかし何やら考えてもいる様に見えるが
この様な時は下手に声をかけるべきではない。
「承知いたしました。
この私・・姫の座を追われた私でも
お側に留め置き頂けるのですか?」
姫であろうが無かろうが身に危険が及ぶ恐れのある者を
放置するなど俺には出来ない。
「別に側にいるのが嫌ならそれはそれで何とかするけど」
「ご配慮ありがとうございます。
この様な私ではありますが是非お側において下さいませ」
「ただし、身の回りは整理整頓すること・・
あと清潔にね、トイレもちゃんとすること」
そう言うと顔を真っ赤に染め頷いた。
今更、自分の行いを恥じているのだろう。
「あっ! コンコルディアは実家に帰ってもらうとするか」
「ええ~! 何で?」
「オムツが取れるたら来ても良いよ」
「と、取れるもん、今すぐ取るもん!」
オムツを脱ぐのは別に良いが
下半身スッポンポンなのは勘弁して欲しい。
「ブラウ、替えの下着コンコルディアに用意して」
「仕方がありませんね・・コンコルディアさん。
替えの下着はお持ちではないのですか?」
「あ、あります、ブラウお姉さま。
えっと・・・これです!」
それって確か・・タマモのじゃ・・
「それ、私のではありませんか!」
「いいじゃん、減るもんじゃないし。
ちょっと貸してよ!」
その辺に適当に置いているからその様な事も起こる。
自分の物はきちんと整理するべきだ。
整理整頓を心掛けよう!!!




