助力
騎士団員たちの協力を得て
占領地周辺の開墾を行っている間に
イゲンダー侯爵が猿人族たちと交渉を行っている。
彼に任せれば問題なく事を進めてくれるはずだ。
俺は空力車を用意し旅に出ることにした。
この地方にはフロンティアに相当する地域がある。
獣人族領より遥か西方に位置する未開の地だ。
何とそこは海に面しているらしいのだが
あくまでも「らしい」と言うことで定かではない。
何故その様な表現なのかと言うと
海に面しているというのは伝承であって
ここ数百年の間、誰もその地に行った者がいない。
また到底人種の住めるようなところではない場所である。
イゲンダー卿の情報に寄ればそういうことらしい。
誰も住む事の出来ない未開の地は「バーレン」と呼ばれている。
誰も住まないと誰も住めないでは大きな違いはあるが
その地に興味が湧き行ってみることに決めた。
しかしその地に関しての情報は少ない。
果たしてその様な地に奥様たちを伴っても良いものか悩んだ。
奥様たちを残していくべきなのだろう。
しかし彼女たちが果たしてそれを受け入れるか?
受け入れないのは確実だ。
行くとしたらやはり連れて行くことになる。
バーレンがどの程度危険を伴う地であるか想像もつかない。
ここは事前調査すべきだ。
ではどの様に調査する?
やはり一人で向かうべきだ。
それは許して貰えそうにない・・・ならば!
ハチに頼みバーレンと呼ばれる地域の調査を行ってもらえば
様々な角度から調べつくしてくれるはずだ。
ハチが調査を終えるまでの間、空力車の作成を行う。
二両編成の予定だが、まずは設計をすてみる。
「あの、お手隙でしたら・・・」
騎士団員から開墾の手伝いを頼まれた。
ある程度の人員の確保は出来ているのだが
決して人手が余っている訳ではなく少し足りないらしい。
そこで俺の出番がやって来た。
・・・遊んでいる様に見られていたのは秘密だ。
森林地区を農地へとするために樹木を伐採するのだが
アザリアの樹木ほど硬くはないし重くも無い。
大きさは結構大きいが素手でも引き抜ける程だ。
「「「「「えっ?????」」」」」
俺の怪力に一緒に作業をしていた騎士団員たちは驚きを隠せない。
・・・違った様だ。
「あの、魔法は使われないですか?」
バルバロスたちは魔法を使わず木を倒していたので
そのつもりで引き抜いたのだが
彼は魔法が苦手だったのを思い出した。
「ああ。そうだね・・つい、思わず」
言い訳をしてしまった。
気を取り直してエアカッターで樹木を次から次と切り倒した。
「「「「「えっ!!!!」」」」」
一度の魔法で数本の木を切り倒すと周囲の驚きの反応が。
「あの・・根っこから引き抜かないと・・・
切り株を残すと二度手間になりますから」
早く終わらせようと失敗してしまった。
普段から作業に取り組んでいればこの様な失敗はしない。
如何に仕事をしていないのか暴露した瞬間であった。
「こ、こちらの作業はよろしいですから
ディアナ様の所へ手伝いに行って下さいませ」
・・・邪魔宣言された気分になった瞬間でもあった。
ディアナの所に行くと、ブラウを手伝えと言う。
ブラウの所に行くとディアナを手伝へと言う。
ディアナから言われて来た事を伝えると
「そうですか・・では、アイラ様の所をお願いします」
あれ? そう言えばアイラ何をやってるんだろう。
ブラウにも助力適正無しと判断されアイラの元へ向かった。
「あいら、ブラウに言われて手伝いに来たけど何すればいい?」
「えっ? ・・・・よくぞ御出で下さいました。
早速ですが、こちらへどうぞ!!」
何だか凄く喜んでくれた。
これだけ喜ばれると俺も何だか嬉しくなった。
「分かった、何処に行けば良いの?」
「こちらでございます、ささ、この部屋にどうぞ。
日はまだ十分高こうございますし時間は十分です」
日が高い? 時間十分? 何だろう?
アイラは部下に何かを命じると部下たちは四方に散って行った。
今から何をするのか聞いていないでの気にはなるが
アイラと一緒に部屋に入った。
するとアイラは多重結界を部屋に張った。
不入結界に遮音結界だが・・・うん?
「今から何するの?」
やはり気になるので尋ねてみると
「開墾に伴う種蒔をやって頂きます」
その様に簡単に説明しながらアイラは服を脱ぎ始めた。
「この様な時間から種を頂けるとは幸せでございます」
アイラによる開墾作業の開始である。
その手助けを担えて光栄に思うしか道は無かった。
助力を請われるうちはまだマシである!!!




