戴冠
プトレ王国とメネス帝国を併合した後の国名も決まらない。
アザリアのままで良いのではとも思うのだが、
奥様たちはもっと良い国名をと現在思案中だ。
プトレ王国はプトレ州となり州総督にラゴスが公爵となりその任に就く。
メネス帝国も同様にスペスが公爵となり総督の任に就く。
プトレ王位はアグラットが、メネス帝位はイトラがそれぞれ預かった。
そのまま一生預かってくれと思ったのは秘密だ。
戴冠式を盛大に行おうとする奥様たちを止めるのにはかなり苦労した。
最後には俺が駄々を捏ねて
何とか身内だけで済ますことに成功した。
本来なら領民は無論、周辺諸国の者まで招き
お披露目をやるべきだと奥様たちが皆言うのだが
そんな席に俺に出席する度胸など有ろうはずもない。
内密に・・密かに・・秘めやかに・・忍びやかに・・
出来れば目立つことなく、誰にも知られず・・・あれ?
知られないと拙いのか・・・いや、問題ない。
式の終了後に領民に告知すれば良いだけの事だ。
気が付いたら大公爵から王又は帝になっていた。
へぇ~・・・そうなんだ・・知らなかった・・
その程度認識してもらえれば良い。
式典に用意する王冠などは既に用意済みとのことだが
ラゴスに冠について尋ねてみるとその様な物は無いと言う。
スペスにも同様な帝冠なのか聞いてみると
逆にその様な物があるのかと問い質されてしまった。
つまり冠など存在しない様なのだが何故に戴冠なのか少し気になった。
たぶん冠を新調するのだろう。
あまり派手なものは勘弁してもらいたいものだ。
戴冠式は庁舎で行われた。
実に質素な戴冠式である。
式典に集まった者も身内同然の者たちだ。
家族同然の者以外では上級官吏に
地方の長官クラスでほぼアザリア騎士団から
派遣された者たちなので顔見知りばかり。
イゲンダー父子にバルバロス、
トイレッター姉弟にマルカジーリ等々・・
皆が喜んでくれて何よりと無理に思うことにした。
因みに冠なのだが、やはりなかった。
プトレより譲られた物は紋章であり
魔族の王の証として受け継がれる物だ。
メネスの帝冠はと言うと・・・何故にティアラ?
「これ、女性用だよね?」
メネスに伝わるティアラを所持する女性を妻に迎えた者が
メネス帝国皇帝となる。
これだと女帝は誕生しない。
そこでこれまでの仕来りを打破し
女性でも帝位に昇ることが出来るようにとした。
だからメネス帝国の皇帝はイトラである。
そのイトラより俺が帝位を禅譲された形式をとったのだが
まさかティアラを渡される事になろうとは夢にも思わない。
「えっ、これって女性用なんですか???」
確かにティアラが女性用とは限らないが
俺の知る限り男性がティアラを用いることは滅多に無く
主に用いていたのは女性だったはずだ。
そう言えば、プトレやメネスの高位貴族の女性でも
ティアラを付けているのを見たことが無い。
基本的に装飾品という者を持ち合わせていない。
外見を飾ると言う習慣が無いのだ。
「このティアラって普段からつけなくて良いよね?」
「お好きになさって構いません」
しかし・・まあ・・何とシンプルなデザインのティアラだ。
おまけに小さいし・・あれ?銀だと思ってたけどなんか違う。
これはイトラに預けようと思ったのは秘密だ。
プトレの紋章は古びていて何の模様なのかよく分らない。
おまけに錆? 若しかしたら・・カビ?
これはアグラットに預けようと思ったのも秘密だ。
「良いか、皆の者、これがロンヒル家の紋章である!」
アグラットが声を上げ、俺の後方を指差した。
それを合図に幕が降り、そこに模様が現れた。
巨大なエンブレムのようだが・・・
金地に赤の菱形が描かれその中に・・
トカゲ? 双頭の・・何だ?
白と黒の双頭の怪物? 頭二つのキング何とかか?
これは俺が受け取った紋章を拡大した写しだ。
この紋章はプトレ王家に代々伝わったもので
それを俺の家紋とした。
これは決定事項で誰にも文句は言わせないと
アグラットが言い放ったものだが
結構、御大層なことだと思ったのは秘密だ。
式典も終わり集まってくれた者たちに食事を振舞う。
戴冠の祝辞を述べようとする者もいるが
それは遠慮させてもらった。
「一切、無礼講とする、
このひと時を皆で楽しんでくれ!」
まあ一種のお祝い事なので
皆で楽しいんだ方が良いだろうと思い無礼講とした。
この様な場で他を気にしながら食事をしても面白くはない。
・・・俺が面白くないのだ。
実際、この場から早く立ち去りたい気分なのだが
さすがに、この場の主役なのでそれは出来兼ねる。
早く皆、帰ってくれと今日は言わない。
十分、楽しんで欲しい・・折角の祝いなのだ。
しかし・・宴も酣・・ヤバい・・騎士団員たちが・・
・・いいか、ここで脱ぐのは禁止。
・・お触りもダメ!
・・不純な事は一切禁止!
・・ええぇ~、じゃない!!
お酒に酔ったサキュバスには十分注意が必要だが
彼女たちも脱がず触らず楽しんでくれて何よりだ。
好事魔多し!!!!




