肥満
甘味処を出るとそこにはブラウが
満面の笑みを浮かべていた。
この笑顔の裏に隠されし陰謀は?
何かを企て俺を陥れるつもりなのか?
それとも・・・お仕置きでもするつもりなのか?
「どうして私たちをお誘い頂けないのでしょうか?」
誘うって・・・
彼女は美味しい物を俺たちだけ食べに行って
自分は置いてけぼりにされたと思っている。
確かにそのような事をされたら誰しも何かしら思う処はある。
その気持ちは理解できるのだが・・・
あの場に居合わせなかった者を誘うのは
少し難があると思うのだが
彼女に言わせるとそのような事は関係ないのであろう。
「何故、誘わないんだ~!」
「ズルいぞ~!」
「私たちも食べたいんだ~!」
「甘い物大好きなのに~!」
ブラウの後ろに控えている侍女のシュプレヒコールだ。
「あなた方、陛下の御前で端ないですよ。
その様な事を言わなくても陛下はちゃんと
ご馳走してくれます。
そうですよね? へ・い・か!」
どうやら甘味を食べるのを誘わなかった事に御立腹の様だが・・
満面の笑みのブラウも大の甘味好きだ。
ご馳走も何も、食べたい時に食べれば良いだけの事だと思う。
しかし勝手にすればと言いたいが言えない。
全身から絶対自分も食べるぞという迸るオーラを
隠し切れないでいる。
「ああ~、みんなも好きな物を食べると良いよ。
俺はちょっとアイラの所に行ってくるからね」
そう言い残し代金を貰いに行こうとするとブラウが引き留める。
「今はお戻りにならない方が賢明かと」
あら・・まだ、アイラさんは怒っていらっしゃるようだ。
「でも、ここのお代を何とかしないと」
「ご心配なく、ここの支払いは
私が御立て替え致しますれば」
「大丈夫なの? 親衛隊の分もあるんだけど」
「ええ、この程度の支払いでしたら
私のお小遣いで問題ありません」
「えっ? お小遣いとか貰ってるの?」
俺、そんなの貰ったことないんだけど・・・
「妻たちは皆、アイラ様より賜っております」
「じゃあ、ケイも?」
「はい、ケイちゃんの分は私が責任を持って管理させて頂いております」
奥様たちは給与を受け取っているのだが
まさかお小遣いという名目だったとは思いも寄らなかった。
ケイの給与をブラウが管理しているのは
ケイが一人で甘味を食べに行かせない為の措置だ。
ケイに給与を持たせると必ず親衛隊を率いて
おやつの時間と称し毎日甘味を食べてしまう。
それが許せることではないとブラウが判断した結果だ。
親衛隊を伴っているので
独りで食べに行っているわけではないのだが
ブラウを誘わない事に対し
苛立ちを覚えての事だろうと思ったのは秘密だ。
さすが成人女性だ、食べる速さそれに量共に
親衛隊とは比較にならない。
別に飢えていた訳ではないとは思いたいのだが・・・
普段から何も食べていないのではと疑いたくなってしまった。
「あのさ~、そんなに食べて大丈夫?
肥満って言葉の意味わかるかな?
ブヨブヨって綽名が付いちゃうかもよ・・・」
急に食べるのを止めご馳走様をする侍女にブラウ・・・
少し後悔している様にも見えるが今更だろう。
独りの侍女が俺に耳打ちするのだが、
今回、甘味の事はアイラには内緒にして欲しいと言う。
恐らくブラウもアイラから甘味を制限されているのだろう。
確かに以前、少しだがブクブクしている時期があった。
ブクブクは女性が触れて欲しくない問題の様に
元の世界では記憶していたような、していないような・・
甘味の件はアイラ次第で報告させて貰おう。
怒りの矛先を躱す盾として
利用させて貰おうと思ったのは秘密だ。
おやつタイムも終わり今後の予定について指示を出した。
まずはケイに清掃活動がまだ終わってないなら
その手伝いをして終了後に公庁に来るように指示を出す。
ブラウには奥様たち全員を俺の執務室に集める様に指示を出した。
何か準備する物が必要かと尋ねられたが今回は必要としない。
今日起きた出来事を備に報告し対応を検討する予定だ。
今回の事件で一番気になったのは人事及び貴族制についてである。
この二点は早急に対処しなければならないと思う。
貴族制は出来れば廃止したいのだが
奥様全員がその案に反対の姿勢を取っている。
貴族制の問題点に対し改善策を講じているとは聞いているのだが
まだ生温いのかもしれない。
その点は確認し再度、改善策を練り直すべきだ。
あの男爵の様な者をそのままにしておく訳には行かない。
何としても排除しなくてはならない。
貴族制、反対!!!




