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悪魔オヤジのムソウ  作者: 祇神 安紀
アザリア大公国
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修行

獣人族の姫様タマ・モノマエが予言をした。

このアザリアの地に災いが降りかかると言う。

時期は今年の春から夏に移り変わる頃だ。


恐らくトランによるアザリア包囲同盟が成立し、

その頃に一気に攻め込んでくるのではと推測できる。

何の備えも無いところに一気に攻め込まれたら

アザリアに多くの被害が出るのは間違いない。

しかし住民を避難させよと姫様は言うが

避難できる場所など確保できない。

やはりトランを中心とした諸国同盟に備えるしかない。


「姫様、避難させよと言うけど避難させる場所なんか無いんですけど」


「姫様はお止しになって下さいませんか・・

どうかタマとお呼びくださいませ」


気鬱(きうつ)な表情を俺に向けそう言うが・・・何か言い辛い。


「避難する場所ですが心当たりがございます。

 山々の中腹に身を置き難を免れれば良いのです」


確かにそこまで避難できれば多少は人的被害を抑えることは出来る。

しかしそこは天空族の支配領域であり許可なく入ることは許されない。

という事は天空族に一時的にせよアザリアの住民の保護をお願いするしかない。


問題は天空族が住民を受け入れてくれるかどうかだ。

俺が頭を下げて受け入れてくれるなら幾らでも頭を下げるのだが

その程度で受け入れを許可してくれるかというとまず無理だろう。

という事は、やはり交渉するしかない。


交渉するためには何か条件をこちらから示す必要がある。

どの様な条件なら受け入れてもらえるか検討しなければならない。

明日は軍事会議を開く予定だが

緊急議題としてこの問題を先に話し合うべきだろう。


「教えてくれてありがとう、助かるよ。

 明日にでも皆と話し合って対策を練るね・・・あっ!

 ところで姫様は今一人部屋だったよね?」


「一人と申しますか、補佐に身の回りの世話をして頂いております」


「そっか・・・フェアリスさぁ~。

 家事の練習がてら姫様の世話をしてみない?

 彼女の部屋に住み込みで」


「ええぇ~、俺がかよ・・・」


「そう、花嫁修業に持って来いだと思うんだけど、どう?」


「そっか~・・修行か・・・やる!!!

 お前の嫁になれるんだったら、何でもやるぜ!」


フェアリスが単純で助かった。

しかしこれだけ純粋だと結構可愛気があると思ったのは秘密だ。


「お、お待ちくださいませ・・・花嫁修業? 嫁?

 それはどう言う事でございますか?」


姫様はフェアリスの事を知らない様だ。

そこでフェアリスについて簡単ではあるが説明した。


「えっ、あの方もお妃になられるのですか?

 そんな・・・私の方が先に申し出をさせて頂いたのに・・・」


そう言われても姫様は人身御供として俺の所にやって来たのだ。

それを俺が「そうですか」と認めるわけがないではないか。

それに俺なんかと結婚する必要など無いのだ。

姫様もフェアリスも将来好きな男性が出来たらその人と結婚すれば良い。


「分かりました、私も花嫁修業とやらをやらせて頂きます!」


姫様に変なスイッチが入った様だが

結果的に良かったのかもしれない。



姫様はアザリアに来て以来引き籠り生活を送っていた。

ディアナやノアルが買い物などに誘うが

全く応じる気配が無かった。

買物どころか散歩すら断っていたらしい。

食事も部屋に運んでもらい部屋からもあまり出ることも無かった。

引き籠った部屋の中ではいつもぼんやりと外を眺めていると言う。

この世界にもインターネットやPCがあれば

それに()まっていたのではと思ったのは秘密だ。


動機が何にせよ部屋から出て行動を起こそうとするのは良い事だ。

アストレアには申し訳ないが、姫様も一緒に面倒を見てもらおう。


「旦那様、姫様は計算できるようですが一緒になさいますか?」


「そうか、ではケイが家事を教えるだけで十分なんだ」


ケイに負担を強いることになるが彼女に頼むしかない。

家事全般においてケイの右に出る者はいない。

彼女から仕込まれればかなり家事の腕も上達するだろう。

優秀な奥様たちがいて「何と俺は幸せなんだ」と思ったのは秘密だ。


「お待ち下さいませ、私もそちらの方同様に

 算術を学びとうございます。

 他の方に後れを取るわけには参りません」


言い方は柔らかく物腰も低いが、何だか闘志めいたものを感じる。

もしかしたら負けず嫌いなのかもしれないと思ったのは秘密だ。


「分かった、俺からアストレアに頼んでおくから。

 彼女の指示に従うようにしてね」


姫様はフェアリスに対抗心を抱いたのだろうか。

少しだけ彼女を睨んでいる様な気もする。

まあ後から来て先に嫁になるとか女性としての

誇りが傷付いたのかもしれない。


正直に言うと俺はどちらも嫁に迎える気は無い。

それを明確に伝えるべきかもしれないが、今は止めておく。

動機が少しあれだが彼女たちの

やる気を削ぐような真似もしたくはない。



まだ精神的に幼い女性なのかもしれない。

そのうち自我に目覚め男性に対する認識も新たになり

俺なんかより良い男性に巡り合うだろう。





これ以上、嫁さんが増えるのに反対だ!!!


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