先着
面倒は自ずとやって来る。
きっと来る・・・やって来る・・・俺の下に・・・
いや・・国家を運営していれば必然的事象と言えるのかもしれない。
日夜面倒が生じるのは国家を運営するに当たり当然至極の事である。
いや・・生ある者が活きている限り面倒は必須であるのかもしれない。
いや・・面倒を面倒と受け止めなければ良いだけなのかもしれない。
要は心の持ちようである。
しかし・・・嫌なものは、いやだ・・・
獣人族の使者とブラウに会ってもらったが、
やはり俺が会うべきだった。
ブラウは天空族との打ち合わせがある。
その準備なども考慮すれば時間に追われるような立場だ。
押し付ける様な真似をして申し訳なく思う。
気になったので様子を見に行こうとしたら、
ブラウが慌ててやって来た。
「あっ、あの者を追い返しても宜しいでしょうか！」
興奮冷めやらぬ感じでブラウが捲し立ててくる。
「失礼にも程があります、いや、無礼者です！」
何があったのか聞きたいのだが、
興奮しすぎて聞くことも出来ない感じだ。
「直ちに追い返しましょう、ええ、そうしましょう！！！」
俺に聞くと言うよりこれからのブラウのすることに
強制的同意を求めてくる。
「まあ、少し落ち着こうか、ブラウ・・
どうした。何があったんだ？」
興奮しているので真面に会話が成り立たないと思い
彼女の頭を撫でながら落ち着かせようとすると、
少し涙目になりながらゆっくりと話し始めた。
「実は・・・・」
なるほど、獣人族の使者はブラウを幼女と侮り少し小馬鹿にした。
おまけにこの様な幼女を代理に据えるアザリア元首も
国家を治める器量を持ち合わせていないのではないかと言い放った。
獣人族の代表をこの様な形で迎えるとは余りにも
礼をしならない国家元首だと相手も憤っているようだ。
ブラウの事を何も知らない相手ならば、
彼女の見た目で判断する限り幼女が応接するなど、
どう考えても不自然だ。
俺も相手の立場であったならばこの国の対応を疑問視しただろう。
「相手はブラウのこと、何も知らないんだろうね。
こんな優秀な女性を幼女の一言で表現するとか・・
相手の人の見る目の無さが分かっただけでも良いとしよう」
「ですが・・あの者は、私の事をペチャパイって・・・
私の胸を指してペッタンコって言ったんです！！！」
女性の外見について語るとは・・それも本人に・・・
「死刑だな・・・」
「そうです、死刑にすべきです！！！
ブラウお姉ちゃんをバカにする者は私も許せません！！」
いつの間にかやって来たケイも珍しく興奮気味だ。
しかし・・。ポーカーフェイスで死刑を宣告すると
何か迫力があると思ったのは秘密だ。
「あの者も私より年上のくせにペッタンなんですよ！
そのくせに・・・・悔しいです！！」
「男女問わず女性の胸への侮辱たる言を吐く者は死刑に値します。
どうかご処分を！！」
ケイよ、真顔で言うのは出来れば止めて欲しい・・と思ったのは秘密だ。
ケイも興奮しているのだろうか、なかなかにキツイ言葉を述べてくる。
「よし分かった、処分を下そう・・・しかし、その前に・・
相手の言い分も聞かないとね
ブラウにその様な事を言った理由も知りたいしね」
「えっと・・それは・・あの・・何と言いますか・・・」
何か言い淀んでいるが接見の際に何かあったのだろう。
いくら見た目が幼女だと言えこの国の元首代理を名乗る者を
卑しめる言葉を吐くだろうか。
「こんにちは、ハゲ、会えて嬉しいです」・・・とか
「ご機嫌よう、デブ、食い過ぎですか？」・・とか
「初めまして、ボケ、健忘症ですか？」・・とか
この様な言葉を会って直ぐ言う様な者が
国家や種族の代表に選出されるだろうか。
喧嘩を売りに来たのであればその限りではないかもしれない。
しかしこのアザリアに喧嘩を売るだろうか。
つい最近、猿人族と争ったばかりだ。
アザリアの国力を軽くは見ていないはずだ。
しかし、様々な観点から考える必要はあるだろう。
軽く考えるべきではない・・それで何度失敗したことか。
急ぎ獣人族と謁見しようと応接の間に向かうと
「お急ぎの所申し訳ありません。
メネス帝国皇帝が謁見を求めて都庁に参っております」
何だと・・・忙しいんだよ、こっちは！！と言いたいが言えない。
アストレアが早急に皇帝に会う様に言ってくるが、後回しだ。
「すまないが、後回しだ。
どこか控えの間にでも待たせておいてもらえるかな」
先着順という事にしよう。
先に獣人族の代表と会いその後で皇帝に会うことにした。
忙しいときに限り厄介事が多いと思うのは思い過ごしか？
厄介事じゃありませんように！！！！
