回避
騎士団員を伴い町に入ってみると、あまり人気を感じない。
小さな町だからなのか、国境の村もあまり人がいない様だったのだが。
聞いた限りではそこまで人口が少ないとは思えなかったが、
聞くと見るとは大違いというか人が少な過ぎる。
「誰かいませんか?」とここで大声を出しても仕方がない。
食事処か宿屋かで人に会うだろうと思い店を探すことにした。
町の中心付近までやって来たが誰とも会わないし
店らしき店も見当たらない。
閑散とし過ぎてはしませんか・・と思っていると
「はい、そこのお兄ちゃん、ちょっと待ちな。
お前らどこのモンだ?
この町に何しにやって来たんだ?」
物陰から20代少し過ぎたくらいの男5人が出てきて行く手を遮る。
「はい、王都までの旅をしている者ですが
この町で宿を取ろうかと思いましてやってきました」
「ふぅ~ん・・・・お前ら魔族だな。
俺たちはこの町の自警団だ。
お兄ちゃんはこの町に入れるわけにはいかねえな。
そこに書いてあんだろ、魔族お断りってな。
ああ、お嬢ちゃんたちは町に入れてやらぁ。
ただし、身体検査をしなくちゃならねえがな」
「兄貴、ついでだ、そこの兄ちゃんも剥きしましょうや」
「おっと、そうだな・・おい、兄ちゃん、
身体検査だ、身包み脱いで置いて行きな!」
「へへっ、お嬢ちゃんたちはこの俺が丁寧に調べてやるぜ。
体中全部調べねえとな」
「おっと、俺様が先に調べる、お前らはその後だ」
「兄貴、そりゃひでぇ、三人もいるんだ。
俺たちに二人は回してくれなきゃ」
自警団を名乗る男どもは女と金品を奪い取るつもりだ。
このような輩が自警団とは一体どういう事だ。
強請り集りを行う様なゴロツキが権力を持つと
白昼堂々と恐喝を行うのか?
恐喝だけではない、女性も襲うとは恐れ入る。
「えっと、お兄さんたち勘弁してくださいよ。
この子たちは大切な仲間なんです。
守らないといけないんですよね、どうかこれで許してください」
この様な輩をまともに相手は出来ない。
かと言って、自警団を名乗る者を痛めつけるわけにもいかないだろう。
それにまだ相手は手を出してきていないのだ。
「どうか、これで・・・」
大銅貨5枚を差し出した。
「お前、舐めてんのか、こんな端金・・」
アザリアでは大銅貨一枚もあれば結構豪華な食事に有り付けるのだが、
この町の物価は高いのか?
町の雰囲気からするとそうでもないように思えるのだが
俺も少し軽率だった。
この手の類は有り金全部要求するだけではなく
無理難題を押し付けてくる。
他者が困っているのを見て楽しむ糞みたいな奴らだ。
少額なら恵んでたろうと思った俺が悪かった。
事を荒立てたくないと言う思いから金を差し出し
この場を逃れようとした俺の判断ミスだ。
相手は凄みを増し俺を睨みつける。
「三人とも、急ぎアグラットの所へ戻って心配ないって伝えてくれ」
町の外から怖ろしい程の魔力反応が感じられる。
この魔力は間違いなくアグラットのものだ。
恐らくだが町の様子を魔法か何かで察知し
俺に危険が迫っていると思ったのだろう。
この膨大な魔力量で魔法を放つと間違いなくこの町は消えてなくなる。
この糞みたいな奴は焼却処分されても何も問題は無いと思うが
関係ない者まで一瞬で消し炭になってしまうのは拙い。
流石にそれはやり過ぎだ、急ぎ止めなければヤバい。
同行した騎士団員たちにアグラットの所へ行ってもらい
心配ない旨を伝えてもらう事にした。
「待ちやがれ、何処に行く!!」
速攻で彼女たちにアグラットの元へ向かってもらった。
数人が彼女たちを追いかけるが、速度が違うので追いつけるはずもない。
あっという間に見失った様だ。
「おい、小僧、女たちを何処へ逃がした!
正直言えば痛い思いだけで勘弁してやる。
じゃないと、殺す!!」
「恐い事を言いますね、この事を巡回中の監察官の方に伝えると
大変な事になるのはお兄さんたちじゃないですか?」
「ああ? 監察官だぁ? さっき言っただろうが、俺たちは自警団だと。
この町は自治が認められてるんだ。
監察なんか関係ねえ。
国の役人なんざ、俺たちに手出し出来ねぇんだよ!!」
この町は自治領で全てを自警団が取り仕切っている。
つまり自警団のトップがこの町の領主みたいなものだ。
どうしてそのような事になったのかは分からないが
自警団はこの町の若者で組織されその中で最も強い者が
組織のトップという事らしいく
好き勝手し放題のやりたい放題で一種の無法地帯と化している。
「分かったか? 分かったなら女たちの居場所をさっさと言え!」
俺に襲い掛かるとは愚かな連中だ。
返り討ちにしてやる・・・と、思ったが止めた。
「ど、どこに消えやがった???」
瞬間移動で町の外で待つみんなの所に飛んだ。
ゴロツキを相手にしても時間の無駄だし、価値も無い。
「三十六計逃げるに如かず」だ。
恐くて逃げ出したわけではない、厄介事の回避だ!!!




