成長
ディアナとボナディアはアグラット一行と
交代しなければならない日時を無視し俺の側に居続けた。
何時まで経っても交代しない彼女たちに業を煮やしたアグラットが
探知魔法を使い俺を探し回ったが見つからない。
それで各地に手配書を回し俺の居場所を探すことにした。
「えっ? ノーヴ様はお越しになっていませんが
ディアナ様たちならお越しになってます」
俺・・いるんですけど・・影薄いのか・・
ボナディアは鉱山の街に入る以前にサキュバスから
俺を隠す目的で隠遁系の結界魔法を張っていた。
それで俺の存在を見誤った騎士団員は
俺がこの街に来ていないと思い込んでいたようだ。
しかし、まあ、何だ・・
俺って顔があまり知られていない様だと思ったのは秘密だ。
鉱山の街の騎士団から連絡を受けたアグラットの血相を見た者は
この世の終焉を覚悟したという。
魔族間で契約までは結んでいなかったにしろ
約束を破るなど契約破棄に準じる行為に当たる。
かなりのお怒りを周囲の者に向けたのかもしれないがご愛敬という事で・・
済まなかった様だ。
アグラットの怒りを鎮めることが出来る者は近くにメルテしかいない。
たまたま近くに居合わせたメルテは
彼女の怒りを鎮めるべく何やら提案を持ち掛けた。
その提案を聞いてアグラットは怒りを鎮め冷静になったらしいのだが・・
どの様な提案をしたのかは謎である。
タップリとお説教を受けたディアナたちは公都へと戻って行き
代わりにアグラットたちが残り旅のお供を引き継ぐことになった。
鉱山の街の改革案は概ね出来上がっておりディアナの指示で
新たに新興都市として生まれ変わる筈だ。
ここの街だけではない。
アザリアの街や村の殆どが都市計画の見直しの対象になっているので
今後ともアザリアは発展していくだろう。
「旦那様、この街の次はどこに向かわれる予定ですか?
若し、お決まりでないようでしたならば、お願いがございます。
精霊族の国に向かって頂きたいのですが・・」
ブラウの頼みなら行かないわけにはいかないが、理由は知りたい。
「行っても良いけど何か用事でもあるの?」
面倒な事が待ち受けている様ならば内容次第では
ブラウの頼みとは言えども行きたくはないのだが・・・
「精霊族の食糧事情についてもっと詳しく知りたいと思いまして」
アザリアにおいて農業面の行政はブラウが一手に引き受けている。
植物や動物の育成に興味がある様なので飼育や栽培が好きなのかと
尋ねてみると思わぬ答えが返ってきた。
「どの様に育てたら美味しくなるのか興味があります」
食い意地が張っているだけなのか?・・と、思ったのは秘密だが
食生活を充実させることは生きていく上で重要な事だと思い直し
ブラウの考えを称賛することにした。
ブラウの意見を取り入れて精霊族の治める国へ旅立つことにした。
思い切り説教が出来たアグラットの機嫌も直っている。
怒りをまき散らしながらの旅など周囲の者へ
どのような影響を与えるか想像も出来なかったのだが
これなら安心して旅も出来る。
・・・あれ? アグラットを怒らせたままの旅の方が良かったのか?
・・・周囲の魔物の事を思うと襲われる心配がないのでは?
・・・魔物除けに持ってこいだったのでは?
・・・またアグラットを怒らせるか?
・・・それは流石に止めるべきだろうな・・
アグラットやケイは魔物に襲われても心配はない。
問題はブラウだ。
彼女は普段、戦闘訓練に参加していない。
早朝の訓練時には既に農地へと赴いているのだ。
まあ、俺が側にいるので襲われても問題は無い。
しかし万が一の事は起こり得る。
それに備えることは必要だ。
ケイに頼みブラウに魔法を施してもらい怪我を負わない様には準備をした。
「御心配には及びません。
こう見えても私、結構強いんですよ」
・・などと言われても、やはり心配はする。
「そうです、ブラウお姉ちゃんは強いです」
「そうだね~、見違えるくらい強くなったね。
大したもんさね」
「そうです、私は成長期ですから!」
何時まで経っても膨らまない胸を大きく張る。
えっ? そうなの? 本当に?・・・・
外見の変化が全くないので気が付かないのかもしれない。
見えない所で成長しているのだろうと思うと
何だが嬉しくなり涙が出そうになった。
子の成長は大人の楽しみだ!!!




