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悪魔オヤジのムソウ  作者: 祇神 安紀
アザリア大公国
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陳情

獣王軍の敗残兵は各村落に逃げ込んだようだ。

猿人族の本拠地に乗り込む途中にそれらの村落を回り兵士だった者は捕縛した。

捕縛した兵の中には我々に協力的な者もいるが、

大猿族のゴリの様な者もいる。

敵対心丸出しの者にはゴリの二の舞になってもらった。



獣人族の村を回りながら情報も集めるもそう多くは集まらない。

猿人族の村から人が戻って来ないからだ。

交渉に行った者、様子を見に行った者、誰一人として戻って来ない。

村々へは猿人族からの通達があるだけで、

ただアザリアとの戦争の際に出陣を強制した。

拒否すれば捕らえた村の者を処分するという強迫も行っていたようだ。



捕縛した兵士は身体検査や健康診断を行い

事情聴衆を行った後、問題が無いようならば開放する。

麻薬に手を染めた者など獣王に協力した者は

それなりの処罰は覚悟してもらう。

止むを得ず協力した者、自ら進んで協力した者などは刑量を定め罰する。

まあ、ある程度酌量を加えるつもりなのだが

どの程度加えるか判断の分かれるところでもある。



猿人族の本拠地に近づいた時、ある集団に出会った。

猿人族の本拠地周辺の各村長の集団だ。

俺に会い陳情を述べる為に態々(わざわざ)待っていたようだ。


一切の敵対行為はしないので、村を襲わないで欲しいとのことだ。

誰が襲ったりするものか・・と思ったのは秘密だ。

各村長には他の村々同様の事を述べ協力を約束させた。

まあ、中には従属を申し出る者もいたのだが・・保留だ。

折角村長が来てくれたので、猿人族について色々教えてもらう事にした。


猿人族は上下関係が他の種族と比べ厳しい社会組織を構成している。

つい最近その頂点に立った者が獣王を名乗り

他の種族の村に圧力をかけ若者を集め軍を組織したらしい。

そしてある程度集まったところでアザリアに対し

己の欲望を満たすため攻め入った。


元々獣人族の長は各種族の代表者たちの中から選抜し決めていた。

ただ、各種族の代表も滅多に集まることは無い。


獣王を名乗る者の前の獣人国の長は獅虎族の長が就任していたが

獅虎族の長は急な病で逝去しその後すぐ

猿人族の者が勝手に獣王を名乗った。

獣人の習慣で国長が逝去してもすぐに次代を決めることは無く、

何か問題が起きて各所属の長が集会した時、

ついでの事として獣人国長を決めてきたようだ。

面倒な事はあまりしたくないと言うのが獣人の本音のようだ。


つまり勝手に獣王を名乗る者が軍を集め、

自分の思うが(まま)にアザリアに攻め込んだという事だ。

今回の戦は各種族の(あずか)り知らぬ事だと主張したいようだが・・・

その様な言い訳は許されない。


獣王を名乗り獣人国としてアザリアに行軍して戦ったわけだし、

猿人族以外の種族もその戦に加わったわけだ。

また獣王の行為を見て見ぬ振りしていた行為も許される行為ではない。

善政を行っているのであれば分かりもするが、

他国との戦をそのまま許した罪は決して軽くはない。

戦後処理に協力してくれればその点は不問にするつもりだが、

今後の事もあるので少しは損害賠償を請求する・・・本当に少しだけね。



各村長には追って沙汰すると言い、この場から帰ってもらった。


「大公様、猿人族本拠地に到着、包囲完了です。

 一気に殲滅(せんめつ)しますか?」


「まずは安全確保のため周辺を調べて報告を」


「了解しました、その後殲滅(せんめつ)作戦はどの様になさいますか?」


「周辺の安全が確保でき次第、これまでの村同様俺が少数を率いて乗り込む」


「いや、敵の本拠地ですぞ、それは危険すぎます。

 どうか御控えください」


「いや、いい・・俺が乗り込むから。

 その間、みんなでこの地を包囲し誰も逃がさない様に頼む」


「お止め下さい、危険です、どうか何卒」


「じゃあ、俺より強い者がいるのならそいつに頼むから連れて来て」


「いや・・流石にそれは・・・」


「でしょ? こう言っては何だが俺が行って危険と言うなら

他の者が行ったら危険どころじゃ済まないよね?

 この場合は俺が先に進んだ方が被害も出ないと思うから。

 まあ俺なら大丈夫だから・・心配してくれてありがとね」


心配するバルバロスを率いて中に入ってみると・・・


「な・・何だ? この匂いは・・」


汚物の匂いが凄い・・・その中に人の気配も・・


「これは下民階級の住処でしょうか・・・」


結構な人数が(うごめ)いている? 人なのか? マジですか・・・

今まで階級社会の下民の生活を結構見たつもりだったが

ここまでは酷くなかった。

人が住んでいるとはとても思えない状況だ。

家などとは言えない・・小屋とも言えない・・


柱の上に屋根の役割なのか板や布を架けているだけのものだ。

壁もないけど・・瓦礫(がれき)の中に住んでるのか?


糞尿の匂いが立ち込めている・・トイレもない・

ゴミダメの中を歩いている気分だ。

これも為政者の責任なのか・・・

頂点に立つ者が最悪だと下々の者の生活は極貧だ。

いや、生活と言える水準ではない。

この地に足を踏み入れたことを少し後悔したのは秘密だ。



獣王を名乗る者に大いなる鉄槌を!!!!


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