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悪魔オヤジのムソウ  作者: 祇神 安紀
アザリア大公国
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要求

メネス帝国の政変に対しアザリア大公国は

表向き静観の構えを取り帝国内の情報収集を行った。

今回の情報収集には帝国内の警備局内の者が秘密裏に行っているので

こちら側としても比較的信頼を置いている。

誤った情報は持ち帰ってこないと思う・・・だよね?


俺としては今回の件に関し深く係らないつもりだが、

義理とは言え皇帝は身内に当たる。

このまま放置するつもりはない。

相手の出方を見てそれから皇帝を救出しようかと考えている。

皇妃やアアストレアは気が気ではないだろうが、しばらくの間我慢してもらおう。

流石に大帝国の皇帝を処刑したり暗殺したりはしないはずだ。

そこまで愚かな貴族ならあの皇帝が簡単に幽閉されたりはしない。

バカではないはずだ・・・俺以上の愚者だとは思うが。



徐々に帝国内の情報は集まってきた。

今回の事件における大義名分は

「皇帝陛下が行政を(おこた)った結果、領民が生活苦に(あえ)

国力も(いちじる)しく低下し国難へと至った。

その後の改善策や対策を提示するどころか

増々国難へと導こうとしたので我ら高位貴族は

政策の見直しや改善を言上したが、

一切聞く耳を持たれることなく悪政を断行されようとされたので

止むを得ず大権をお預かりすることになった」

・・・としている。


まあ皇帝の行政改革の結果、

領民が苦しんでいるのでそれを正すための行為であると

貴族は主張しているが、実際に苦しんでいるのは貴族の方だ。

今までの生活が維持できなくなり、元に戻すよう懇願していたらしいが

皇帝が聞く耳を持たなかった。

それに業を煮やした一部の貴族が他の貴族も巻き込み皇帝の幽閉に至った。


主に貴族を苦しめた改革は奴隷の開放だ。

奴隷を開放し使用人としての雇用義務を命じたのだが、

それが貴族の懐を圧迫した。

帝国ギルドの不正にも貴族が関与していたことも発覚した後、

貴族特権もかなり制限されそれまでの既得権益も

放棄せざるを得なくなった貴族もいる。


また領民の保護のため貴族に対し納税の義務を強化した。

皇帝は帝国の領民の生活を豊かなものにすることにより

国力の充実を図るがその(しわ)寄せは貴族に及ぶ。

それに対する不満が皇帝の幽閉へと繋がったのだが、それだけでもないようだ。

今回の事件の表向きの主犯は皇族だ。

公爵の名において大権を停止している。

この公爵は皇太子の地位に俺が就くことに猛反発したらしい。

「エルフの民が魔族に支配される」

この様な事は断じて許されないと(いき)り立っている。


基本的には帝国内におけるほとんど貴族も同様のようだ。

魔族に対する認識を改めた貴族も多いのだが、

やはり魔族をエルフ帝国の頂点に立てるのは嫌らしい。

その点は俺も少しは理解できる。

先日まで奴隷身分として扱われていた民族の者が

いきなり国の頂点に立つなどあり得ない事だ。

余程開明的な者でないと理解しがたい事だ。

まあそこまで開明的な人物が多ければ

もっと帝国は豊かになっていたのかもしれない。



貴族が皇帝を幽閉した理由は凡そ分かった。

そして今後アザリアに対して様々な要求もしてくるだろうという事だ。

実際にはまだ何も言っては来ていないのだが、帝国内では色々動きがある。

まずは辺境軍を帝都周辺に集める準備に取り掛かっている。

たしか辺境軍だけで十万前後の軍勢になる筈だ。

その様な大人数を集め、果たして帝都は大丈夫なのだろうか?

食料などを賄いきれるのかと少し心配だ。



数日後、メネス帝国の使者を名乗る者が交流都市にやって来て、

都市の明け渡しを要求してきた。

この都市は先の三か国会議での条約でアザリアに割譲されている。

その条約は無効であるとし使者は返還を要求してきた。

無効である理由などは一切述べることもなくただ返還を求めている。

当然交流都市側はその要求を拒否したのだが、

使者は領土侵犯だと強く主張し

領土返還及び侵犯への賠償も要求するようになった。

それのみか、アザリアへ送り出した避難民も

帝国に返還するように言い始めた。

まあ拒否すればするほど要求が拡大していったのだ。


条約に関しては調印文書もあるので

こちらもこの条約を無効とする使者の言葉を聞く気になれない。

また条約を無視する使者の態度もかなり横柄だ。


現在のメネス帝国は皇帝が幽閉され、

皇族が皇帝代理人として元首を務めている。

理屈の通らない人物なのだろう。

魔族との条約など条約とは呼べないと豪語しているらしい。

魔族だろうが何だろうが国際条約を締結させた以上は

守らなくてはならないのだがその様な享受など持ち合わせていないようだ。

条約を無視するのであれば話にならない。



道理を弁えぬ者を匹夫と言う!!




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