政変
三か国首脳による秘密会議が開催された。
表向きは男性専門豪遊会議ということにした
男性の男性による男性のための遊びを
どの様に行うべきかという事だ。
しかしその実は俺が他国の首脳から
如何に資金援助を引き出すかの為の会議だ。
流石に帝国からの資金援助は難しいというかそれは拙い。
帝国は金欠症状に悩まされている最中だ。
とは言え、何もさせずに高みの見物をさせている訳にもいかない。
資金以外の何かの援助がある筈だ。
それを引き出させる・・・必ずだ!
「えぇ~・・・お金無いんだけど~・・・
そうだよね? コルネ卿・・・」
「いえ、少額でよければ工面します。
陛下の可処分所得程度の額で宜しければ今すぐにでも」
「う~ん・・・・プトレ王国軍からも何とか軍事費を工面し
その分を援助致しましょう」
「そうですな~・・帝国側からは人材派遣を行わせて頂く事は可能です。
全員技術職員を回しましょう。
他に何かお役に立ちそうな物資でもあれば優先的にお渡しします」
文句を言う国王は放置だ。
他の人たちは俺の意見に協力を惜しまないと言ってくれたので
援助を受けた分をアザリアの為に使う。
少しはアザリアの財政の役にたつだろう。
「そんなことよりさぁ~、豪遊しようよ、豪遊!
ノーヴ君の豪遊ってどういうモノか気になるじゃない?
豪遊してみたいと皆もそう思うよね?」
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
本音と建前の区別がつかなくなっている国王が
一人で遊び方について持論を展開し始めた。
「重要会議中、失礼します。
緊急事態です、 帝国内にて陛下が失権なされました!!」
緊急事態? 失権? 陛下?
帝国にとって大変な事態が起こった事だけは分かったのだが・・・
具体的に何がどのようになったのか詳細については全く分かっていない。
報告に来た者も緊急事態だという事以外詳しくは知らないようだ。
詳細についての報告を求めるも分からないと言う。
「急用が出来ました、先ほどの話はまた後日・・・」
イゲンダー侯爵も動揺気味に言いつつ即座に席を後にした。
俺も急ぎ皇妃の元へと向かった。
彼女の元ならもっと詳細な情報が齎されているだろう。
皇妃の所へ行くと既に奥様たちは皆揃っていた。
「皇帝が失権したと聞いたが、詳細は分かるか?」
「詳しい事は何も・・・
ただ陛下は貴族に幽閉され、大権を他者に委ねたとだけ・・・」
「陛下を幽閉した貴族の名は?」
「分かりません・・ただ多くの貴族がこの件に関わっているものと」
「多貴族による反乱? 陛下は多くの貴族に反感を持たれていたってこと?」
「陛下の政策に異を唱える者は多くいたとは思われますが
反乱を起こすほどではないと」
「多くの貴族に反乱を起こすほど反感を持たれていた訳ではない・・・
だとすれば、反旗を翻した貴族は少ないのでは?」
「少数の貴族が陛下を捕らえ幽閉するなど不可能です。
ましてや大権を委ねさせるなど到底出来るわけはございません」
「事情は分からないが、陛下を幽閉まで出来る貴族はそういない・・
複数、それもかなりの数の貴族が関与していなければ出来ないということか」
「そうなります・・・
そこまで貴族に反感を抱かれていようとは・・・」
有力貴族の単独ではなく大勢の貴族の賛同支援を受けた者が
引き起こしたと考えるべきだろう。
反乱を起こした貴族が皇帝を幽閉して大権を横奪し何を目論んでいるのか、
また多くの貴族がその行動に賛同した理由も気になる。
皇帝が気に入らないからとか言う理由ではないだろうが、
貴族の間での不平不満が爆発した結果だ。
何をどうしたので不満が起きたのかその原因も調べるべきだ。
「それで今後の帝国への対応は如何いたしますか?」
妻の身内の身に係る事件だ、即座に助け出すべきだろうが
今回は妻の身内が幽閉されたのでそれを助けますという訳にはいかない。
反乱とは言え道義的理由で他国の内政に干渉するわけにはいないのだ。
このまま放置でいいのか?
殺される心配は?
殺されないにしても身体に異常など起きていないか?
心身的に疲弊はしているだろうが・・・
「皇帝陛下には申し訳ないが、少し様子を見たい。
アストレア・・兄が心配だろうが今は辛抱してくれ。
今回の件、そう簡単に介入するわけにはいかないんだ」
「この様な事態が起こりうるだろうとは思っておりました。
兄もその備えとして旦那様に跡を託されたのだと・・
今にして思えばその時から私も備えておくべきでした。
恐らく帝国軍をアザリアに移動させたのも、
貴族たちに軍事利用されないためかと思われます」
確かに軍事クーデターなど引き起こされていたら
帝都民など堪ったものではない。
場合によっては同じ帝国軍で戦いも起こりえる。
そうなって一番被害を受けるのは領民だ。
領民の事を思うと領民のそばに軍などない方が安全なのかもしれない。
いや・・・軍が行動を起こす必要のない行政措置をしっかりと執る。
それが為政者の務めだ・・・皇帝・・色々考えてたんだ。
アザリアとして今回のクーデターに直接関与しないことにした。
しかし今後の成り行きによっては直接間接を問わず
介入することも視野には入れておく。
今後の帝国の動き如何によってはアザリアへ
何らかの影響があるかもしれない。
その辺りも含め警戒をする必要もある。
今は情勢を見守り、今後アザリアとしての対応を決めなければならない。
その為にも情報収集は必要不可欠だが、ノアルにはもう頼まない。
「情報収集の件、お任せください、旦那様。
私とアストレアさん、それに皇妃様で集めて見せます」
ブラウがここぞとばかりに胸を張る・・・胸ないけど。
「お任せを! イゲンダー侯爵いますか?」
「はっ、 ここに控えております」
「情報収集を任せます」
「仰せのままに」
皇妃がイゲンダー侯爵に情報収集を頼む。
ブラウの侍女が侯爵とどこかで見たことのなるオジサンをこの場に案内していた。
このオジサン・・・警備局局長だった・・・はず。
「いいですか、ラティア。
あなた方侍女はこの様な事態の備えとしてアザリアにいると心得なさい。
必ずや情報を持ち帰るのですよ」
温和なブラウがかなりきつい口調で侍女たちに厳命している。
皇妃やアストレアもそうだ。
憶測かもしれないが、暗に俺に動くなという事だろうか。
頼もしい奥様たちだ!!!




