回避
皇位継承権を有する妻を迎えた者に対する義務で不可避である。
その様な風習が残るエルフは古風であると言えるのか?
あくまでも過去の悲惨な出来事は女帝が招いたのは事実だったのだろう。
しかし過去の女性が皆惨劇を招いたわけではないはずだ。
名君と謳われた女帝もいたはずだ・・・たぶん。
男性ならば確実に善政を行うのか?
否である! 断固として違うと言い切る自信はある。
俺などが皇位に就いたらその場限りのいい加減な政策を打ち出す事請け合いだ。
アストレアと皇妃に皇位継承についての見直しを要求しよう。
魔族の俺が色々言うべき問題ではないのかもしれないが、
帝位を継承するとなれば話は別だ。
口出すどころか手も出すし金も出す。
何でも出すので帝位に就かないよう取り計らって欲しい。
緊急家族会議招集令を発動し皆を集め
皇太子への道を閉ざす方向で話し合いをする。
「有無を言わすことなく、皇太子になりません。
その為の策を練って下さい・・俺からのお願いです」
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奥様たちは無言を貫くが・・・無策なのか?
「あの・・・どうしてもお嫌なのですか?
帝位を継承するわけではありませんし、
陛下に何もなければ摂政としての役割も果たす必要もないので、
今の生活と何も変わらないのですが・・」
「いや、そういう問題ではなくて・・・えっと・・・」
奥様たちの前で面倒なので嫌だとは言えない。
断る理由としては我儘すぎるような気もする。
基本的にはそうなのだが・・少し格好もつけてみたい。
奥様たちに見栄も張ってみたい気もしただけなのだが
断るための適当な理由を思い付かない。
「俺がメネス帝国の皇位に就くことにより
帝国の民に混乱を生じさせるわけにはいかないと思ってるんだ。
やはりエルフの国はエルフによる統治が望ましいと考えてもいる。
風習や習慣を熟知し民族性を重んじるような政治を行うが好ましいと思う。
それらを踏まえ改めて考慮するとおれは皇位に就くべきではないよね。
今現在の皇帝はその辺りを主におき統治を心掛けてきた。
それを俺が継承することは困難極まりないんだ。
無理な事はしないに限るし、断じて帝国民に迷惑をかけるわけにはいない」
思いつがままの詭弁を弄してみるが、
奥様たちの反応を見るといま一つ納得がいかないようだ。
所詮正論のように聞こえるが、
思い付きで発した言葉では真実味が伝わらない。
「えっと・・みんなは俺が皇帝になることに賛成してるわけ?」
「反対する者はこの場にはいません。
恐らく旦那様は帝国を支配するものと思っておりましたので」
「皇族として言ってはならないことかもしれませんが、
以前旦那様と帝国との戦いで帝国は完膚なきまで叩きのめされております。
その時から遅かれ早かれエルフの帝国は滅び去るものと覚悟を決めておりました」
「そうだね・・旦那様の性格を考えると、帝国は無事じゃあ済まないと思っていたよ」
「プトレ王国の爵位を返上為された理由をずっと考えておりました。
今日を迎え、帝国を支配下に置くためと思い至った次第です」
「総てはこの時の為、忍耐をなさっていたのですね・・・」
「自然に帝国を手に入れるいい方法です!」
「エルフを奴隷にしなければ良いんじゃないですか?」
「旦那様がどこを支配しようと誰にも文句は言わせません!
その為に騎士団は日夜励んできたんですし」
「旦那様、文句がある奴は掛かって来いと言ってくださいよ~」
「叩きのめせばいいんですよ~」
「そうです、ぜ~んぶ、叩きのめして世の中を平和にして子供を沢山作りましょう!」
「そうです、朝から晩まで子供増産計画立てましょう!」
「日夜愛し合えれば問題ありません。
早く世の中を平和にしましょう!」
世の中は平和になることは大賛成だが・・・子供増産計画って何?
要約すると平和な世になれば何でも良いし
誰が皇帝でも構わないのだけれど、俺が世を支配する方が
一番の近道だと奥様たちは思い込んでいる・・皇妃までも。
戦いを好まない者が平和な統治を行える者ではない。
抑止と言う言葉もある。
俺は平和主義とかその様な御大層な主義を持っている訳ではない。
ただ、争うのが嫌いで回避しているだけなのだ。
世の中が平和であればその分ノンビリできると思っているだけだ。
暴君が出現しなければ結構世の中平和に過ごせるのではないかと思う。
暴君と呼ばれる暴力至上主義者が為政者となるのは断固反対だ。
一方的に他者を攻撃するような行為は戦いとは言わない。
その様な行為を暴力と言い、人として行いうる最低の行為だ。
俺の知る限り戦いを好む者で暴力を振るう者はいなかった。
戦いを好む者を悪人だとは思わないが暴力を振るう者は悪人としか思わざるを得ない。
問題はその様な悪人が為政者になれば平和などと縁遠い国になる。
何か問題が起これば暴力に訴える。
野蛮な行為と言わざるを得ない。
俺は暴力が嫌いだが、為政者としては不適格だと自負している。
奥様たちはまだ何か俺に言っているが、耳に入ってこない。
ある意味拒否反応でも出ているのだろう。
「えぇ~・・やっぱり無理・・皇太子何か嫌だから」
「旦那様、帝国の行く末が懸っています。
ここはもっと熟慮すべきだとも思います。
ただ帝国の形式上、皇太子の地位にお就き頂き
その上で地位返上を後程ご検討されてはいかがでしょうか。
それに皇太子として何か政務を行わなければならないという訳ではありません。
今まで通りの生活をされても何も問題はありません。
旦那様にとっては無用な肩書の一つが増えた位のことでございます」
どうしても俺を皇太子にしたいのかよ!!!




