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悪魔オヤジのムソウ  作者: 祇神 安紀
アザリア大公国
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潜入

ちょっとそこまで、帝都まで行ってきます・・・

その様な感じで出かけるつもりが、結構大ごとになってしまい

軽挙は慎むべきと言う教訓を受ける羽目になった。

軽挙ではあるが盲動ではないので帝都へ行く許可は下りたが

一国の長としての自覚だけはしっかり持つように

アグラットや皇妃にたっぷり言い聞かされた。


しかしどうしても一般民衆の感覚は(ぬぐ)い去れない。

元の世界で特別な教育を受け、人の上に立つ様な自覚の基に育ったわけではないし

この世界でもその様な教育を幼少の頃より受けてきたわけではないのだ。

元首としてそう簡単に振舞えるものではない。

そこの処を奥様たちにも理解して欲しいものだが・・・

なってしまったものは仕方がない。

出来るだけ自覚を持つようにしようと思う事にしよう・・出来るか謎だ。

出来る努力は(おこた)らない様にしようと思うのが関の山だ。



ボナディアとアストレアを伴いゲートを開き

帝都郊外の交流市場跡地まで移動した。

そこから徒歩で少しの所に帝都の入り口の門がある。

その門で身分証明を提示し中に入るのだがアストレアがいてくれて助かった。

門の衛兵に彼女が何か話をすると無条件で中に入れた。

通行証代わりに便利なアストレアだと思ったのは秘密だ。


門の衛兵は俺やボナディアを見て少し変な顔をした。

「どうして魔族が皇族と・・・」と言ったような具合だろうか・・

皇妹と魔族が一緒などありえないのだろう。


アストレアは何も気にしない(てい)を装い帝都内に入って行く。

置いて行かれない様にボナディアと共に彼女を追いかけたが、

その後どうするか俺は何も考えていない。

というか、帝都のどこをどのように調べれば良いのか皆目見当もつかない。


そう思っていると、アストレアに何やら小声で話しかけるエルフがいる。


「旦那様、どうぞこちらへ・・・」


アストレアに導かれるまま見知らぬエルフに付いて行くと、

この辺りでは一般的に思える家に案内された。


「アストレア様、何故このような場所に魔族などと

一緒においでになったのですか。

 魔族と一緒にいますと危険です。

 身の程を(わきま)えてもらわなければ困ります。

 ご存じないかもしれませぬが、最近帝都では

魔族狩りと称し貴族どもがやっきになり魔族を追い求めております。」


えっ? 先日の事件以降魔族との(わだかま)りもなくなってきたのでは・・・

確かに一般民衆は魔族に対する偏見が無くなってきていた。

それは帝都の一般民衆に関して・・である。

帝都の貴族の中にはまだ多くの偏見を持つ者がいる。


「魔族狩りとして魔族を捕らえ、貴族たちは密かに

自身の屋敷で今では廃止となっている奴隷として

使役しているようでございます。

 皇帝陛下に命じられその貴族たちの尻尾(しっぽ)()もうとしておりますが

何せ貴族の屋敷の中の事なので中々尻尾(しっぽ)がつかめません。

 奴隷として使っている魔族が一歩でも屋外に出てくれれば、

その者を保護し貴族を追求できるのですが、

証拠もなく貴族の屋敷に踏み入るわけにはいきませんので

今が我慢の時かと思っております。

それにここ数日、下民も捕らえられているという噂も

耳にしておりますので近日中に何やら起こるやもしれません」


帝都の情勢は俺の想像を超えている状態のようだ。

交流市場の時の買い物に来ていたエルフたちを見ていると

食糧難に(ひん)し疫病が蔓延(まんえん)していたが

決して治安が不安定と言う状況ではなかった。


しかしここで話を聞く限り治安が悪化しているようだ。

上民や貴族はそこまでないのかもしれないが

この帝都の下民つまりダークエルフにとって好ましくない状況だ。


その様な中ノアルに帝都潜入を命じた俺は浅はかだとしか言えない。

帝都の状況変化を考慮に入れノアルに危険が伴わないかと

何故考え至らなかったのであろうか。

これがハチの言っていた気の緩みなのだろう。

まさかと言う事を考慮に入れなかった俺の落ち度だ。


「失礼、俺が様子を見て・・(おとり)として行動してみましょう。

 貴族が俺を見てどのような行動に出るのか・・

 それを見極めて貴族が魔族を捕らえ

使役しているという証拠にされてみたら良いのではないのでしょうか?

 それに俺ならイザという時は何時でも逃げることが出来ますので」


俺は魔族であり身分は公爵の上をいくが、帝都で俺の顔を知るものは少ない。

悪事に手を染めている様な者なら尚更(なおさら)だろう。


「危険です、旦那様!

 もしもの時があれば一大事です。

 アグラット様やアイラさんに旦那様がエルフの貴族に捕らわれたと

伝われば彼女たちが黙っているとでもお思いですか?

 それともメネス帝国とアザリア大公国との開戦をお望みなのですか!!」


「落ち着きなさい、アストレアさん。

 もしもの時のために私や貴方が同行していることをお忘れですか?」


落ち着きを忘れないボナディアは流石と言えよう。

どの様な状況にも動じない雰囲気を(ただよ)わせている。

伊達に数千年の時を生きていない稀代(きだい)の魔女と言えよう。

さすが経験豊富なお(ばあ)ちゃんだ!


「旦那様、何か失礼な事などお考えになってはいませんか?」


・・・バレてら・・・


「ここは旦那様の思うように行動して頂き、

その補佐を私たちがすべきです。

 それで旦那様・・手段(てはず)はどのように?」



・・・考えてない、とは言えない!!!

 





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