不届
市場の襲撃を指示したのは予想通り貴族だった。
貴族が何故その様な暴挙ともいえるべき行動を起こしなのかは分からない。
ギルドに頼まれたのだろうとは察しが付くが、
頼まれただけで普通は動かない。
金銭的癒着によるものか、または利権によるものか、
果たして民族的理由なのか。
襲撃を行った貴族を抑え込むのは簡単だ。
しかし理由を把握しておかないと、
一貴族を取り抑えたくらいでは襲撃などの
妨害工作が収まらない事態も考えられる。
利権に絡む問題や、金銭的問題ではないような気がする。
エルフは高潔な民族でありその様な下世話な理由で
行動を起こす輩が多いとは考えにくい。
となると、やはり理由は民族問題によるものなのかと思ってしまう。
しかし夜襲など卑劣な行動をとる奴だ。
今後どの様な卑劣な行動に出るか分からない。
早めに対処しなければならないだろう。
どのような対策を講じれば良い結果を齎すのか考えていると
帝都の騎士がやって来てこの市場の責任者の騎士団詰め所までの出頭を強要した。
この騎士団は近衛騎士だ。
近衛騎士団詰め所への出頭命令を受けるが、
行くかどうか少し悩んだが行くことにした。
出頭義務は無いし、出頭理由も述べない。
ただ上からの命令だと言う。
本当はこの市場の責任者は俺ではない。
俺が前面に出ると色々拙いと思い、名目上は市長にお願いしている。
実際に現場指揮を執っているのは俺なのだが・・・
まさか近衛騎士団詰め所に皇妃に出向いてもらう
わけにはいかないので俺が行くことにした。
皇妃に出向いてもらった方が手っ取り早いのは事実だが・・・
連行される形で近衛騎士団詰め所に行くと、
そこには近衛騎士団第一師団長を名乗る騎士がいた。
平民の俺に上から目線で色々質問してきたが、決して暴力的ではない。
言葉使いが荒いだけだった。
質問内容は市場の開設の目的、場所を選んだ理由、
開設資金の流れ、開設期間、誰の許可を得たのか・・などなど。
帝都郊外であるため市場開設の申請を帝都には出していない。
その事は不届きであると御尤もなお叱りを受けた。
受理される、されないは別としても開設の届け出は
必要不可欠であり場合によっては皇帝陛下への不敬、
または帝国に対する侮辱と捉えられても仕方が無いのだと、
かなり長い時間お説教を受けてしまった。
そして開設許可の申請と罰金を求められた。
この師団長に要求の不当性を訴えようかと思ったが、面倒なので止めた。
市場の解散を要求してこなかっただけマシだとも思う。
しかし、この帝国内での秩序を乱す行為は何人たりとも許さんと
きつく念を押されたのには参った・・おまけに執請い。
・・・おい、師団長・・どこまで俺に付いてくる
市場はしばらくの間近衛騎士団の監視下に置かれることになった。
裏門に数名、正門に数十名常に待機し見張るらしい。
こいつら、暇なのかと思ったのは秘密だ。
見張りは24時間交代で騎士団員が見張ることになった。
夜間は市場周辺を警備隊が見回りをしてくれている。
ある意味厳重な警戒態勢が出来上がってしまった。
近衛騎士団のお蔭もあり、販売予定物資も滞り無く到着し
市場を開催することが出来た。
市場開催初日から大盛況・・・ではない。
帝都民は誰も来ない・・・
一体何がどうしてこうなった?
一人も客らしき人が訪れないではないか。
確かに帝都内で宣伝らしきことはしていなが、
帝都の門からは良く見えているので市場の存在自体は確認できているはずだ。
しかも、門から門までの道のりには帝都内からも見えるようにノボリも立てている。
安くて良い品ならば簡単に売れると思った俺の考えが足らなかったのか?
何か重要な事が抜けていて客が寄り付きもしないのか?
何だ・・・何が足りない・・
何か対策を講じなければ、市場の存在意義がなくなってしまう。
その為にも情報を集めなければならない。
帝都民が市場の存在を全く知らないわけではない。
誰も市場に訪れない理由が何かある筈だ。
帝都内に人を送り市場に関する情報を仕入れたいのだが送れる人材がここにはいない。
ここは困ったときのハチ頼みしかない。
ハチ・・よろしく頼みます!




