帝政
交流都市での学校生活は勉学と言う点を鑑みるとつまらないものだ。
ただ、少年少女の社交場として捉えれば悪くはない。
社交教育という点では必要なものだとは理解した。
中等クラスでは自己開発的な指導を行っているものの
これは教育なのかと少し疑問も残る。
元の世界とこの世界では教育という概念が異なっているのだろう。
元の世界の学校は俺のイメージでは進学を目的とした教育が行われているが、
こちらでは能力開発を目的とした教育のように感じた。
どちらの教育も悪いとは言えないが、
果たして良い教育と言えるのか考えさせられる。
凡そ教育の実態が把握できたので俺は退学することにした。
ケイの教育を行う上で役立つのではと思い入学してみたが、
社交性を養う上では良さそうにも思えるが、
それはアザリアでも十分可能であり俺が付き添ってまで
受けさせる価値はないと判断した。
通学を楽しみにしていたボナディアには申し訳なくも思うのだが
奥様たちに退学すると伝えると、やはり残念そうにしていた。
井戸端会議が皆名残惜しそうであるが、学校そのものには興味は無いらしい。
・・・教育とは井戸端会議なの???
折角の市長のご厚意で無料、無試験で入学しておきながら
申し訳ないのだが退学を願い出た。
市長にそう伝えると慌てて引き留めるが、得るべきものが無いと言うと
最後に高等クラスの授業を受けて欲しいと言う。
これまでの授業から推察するが程度のほどは知れている。
しかし懇願されるので仕方なく高等クラスの授業を受けることにした。
高等クラスは2つの教室に分かれ俺たちは
1クラスと呼ばれる教室に入った。
この学校には珍しく制服を着崩した妙な生徒がいる。
エルフにしては珍しいと思いながら空いている席に着こうとすると、
「おい、お前。教室が違うぞ、
この教室はエルフのみ入室が許される教室だ。
お前は、魔族だろうが・・・早く隣の教室に行け!」
そうなのかと思い教室を出ようとすると
「おっと、魔族の女はここの教室にいていいぞ。
魔族にしては良い女じゃないか。
俺の玩具として可愛がってやる。
男は出て行け・・・早く!!」
・・・何言ってんだ、この糞ガキ・・・
高等クラスの生徒は十六歳以上の男女がいるはずだが、
このクラスのほとんどが男でエルフばかりだが、
この着崩しエルフはどうやらハイエルフのようだ。
偉そうにしているところを見ると高位貴族の息子だろう。
調子に乗るのもいい加減にして欲しい、少しお説教でもして・・・
「そこ、何をしているの、早く席に着きなさい。」
この先生、ストーカか?
初等クラスからずっと同じ先生なのだが・・
「はぁ~、何偉そうに言ってやがる。
魔族を追い出そうとしているだけじゃねえか。
ちょっと、待ってろ、すぐ追い出してやる。」
「何を言っているの、止めなさい!
じゃないと、あなたをこの学校から追い出すわよ!!」
先生が偉そうにするのは当然だ、逆にそうでないと先生とは言えないだろう。
先生は師である。
教えを乞う生徒は辞を低くしなければならない。
確かに偉そうにして導かない先生は師とは呼べない、
おっちゃんやおばちゃんの類だ・・・おっちゃんたちに失礼かも。
導こうとしている師を敬わない輩を低能とだと思うのだが、こいつがそうか。
確かに偉ぶらず導く先生もいる気はするが、それはそれだ。
大人気ないが後で糞ガキを絞めようと思ったのは秘密だ。
最初の授業は重量についてだ。
重量の成り立ちの説明などではなく単位の決め、方計り方について・・・
小学生かよ・・
やはり聞くに堪えん・・・元の世界の小学生低学年レベルの授業だ。
ただ、行政の在り方については政治の仕組みが元の世界と異なるので全て初見だ。
しかし興味は無い。
と思っていると、帝政の長所や短所についての議論となった。
黙って聞いていると生徒たちは帝政に長所は存在しても短所は無いと言う。
先生は逆に悪政説を唱え始めた。
皇帝陛下が良しと思い行うのであればそれは悪政とは言わないと生徒は言い張る。
先生は皇帝により領民の生活が苦しくなるような政治を行った場合
これを悪政と呼ばず何と言うと主張する。
それに対し生徒は例え生活が苦しくなろうとも
皇帝陛下が決めたことで生活が苦しくなったとしても
素直に喜ぶべきであると言いう。
恐らくであるが、ここの生徒たちは両家の貴族の子供たちで
生活苦など経験したことがないのだろう。
生徒たちを見ていると、経験したことが無い事実をいくら説いても
漠然と感じ理解が乏しいように感じた。
まあ話を理解しようとしない者に高説を述べてもそれこそ馬の耳に念仏だ。
豊かな生活の有難味が分からない連中には
苦しい生活がどのようなものなのか経験させる方が良い。
「先生、この際、領民の生活を理解させるため
サバイバル方式で野営訓練でもさせてみてはどうですか?
自活させてみるのも一つの方法ですよ。」
話が飛躍するが、この際自立と言う意味も含め
豊かな生活から切り離したほうが領民の暮らしを
少しだけでも理解できるのではと提案した。
先生はハッとした顔をし、俺の提案を受け入れたが
生徒たちは嫌がっている。
どうして俺たちがと言うような顔をしているが、
様々な経験から学ぶことは良いことだし
領民の上に立つ貴族ならなおの事苦労してもらおう。
授業も終わり帰宅することになるが、俺には少しだけやることがある。
「そこの糞エルフ、お前このまま無事帰れると思うな。」
俺は根に持つタイプで器量の小さい男だ。
自分の女を玩具にすると言われて
そのまま放置するような度量は持ち合わせていない。
本当ならすぐにでもこの世から消し去りたい気持ちでいっぱいなのだ。
生意気の領域を超えたセリフに頭にきている俺は、糞エルフを痛めつけた。
二度と同じようなセリフを言ったら今後は
もっと酷い目を見せると脅しもした。
エルフの男は魔法を使わない魔族など
恐れるに足りないとタカを括っていた様だ。
交流都市での魔法使用は仕事や生活関係以外での私的使用を禁止している。
基本的に身体能力で勝るエルフは魔族より強い。
なので、簡単に俺を痛めつけることなど容易いと思っていたようだが
世の中舐めているとこの様なことも起きると学習してもらった。
結構痛めつけたが、プライドが高いのか目は死んでない。
いつかやり返すと言うような目だ。
面白い、来るなら何時でも掛かって来いと言いたかったが
そこまで煽るつもりもないが奴は捨てセリフを吐く。
「今に見てろ、俺に手を出したことを後悔させてやる。」
後悔なら何時もしているだが、糞エルフを無視し自宅に帰った。
糞エルフこそ、後悔させてやると思ったのは秘密だ!!!




