別荘
ノアルが俺の横で満足そうに寝息をたてている。
何か夢でも見ているのだろうか良い寝顔をしている。
顔を見ているだけでまた元気になって来た。
美しい女性の良い寝顔は男心を程良く擽るらしい。
このままではまた突入しそうなので、起きることにした。
三日間ぶっ続けのバトルも終了し、清々(すがすが)しい気分でもある。
つい先ほどまでの情熱に満ちた愛の語らいは何処へ行ってしまったのか。
感慨を含みながら今を想う、これが俺にとっての幸せなのだろうかと。
ノアルはこのまま寝せておくことにした。
自室を出て食事でもするかと州庁舎の食堂へ向かう途中、
なぜか恐ろしいほどの笑顔を見せる奥様たちと出会った。
アイラが開口一番、今夜が楽しみでなりませんと・・・
失念していた、ノアルのお勤めが終わると次のお勤めが待っている。
頑張りますとも、期待していてください、励みますよ~・・たぶん。
「あの・・今からでも構いませんが、如何なさいますか?
えっと・・かなりお元気になっていらっしゃいます。
他の女性たちがそれを見てどのように思うか・・」
いかん、俺は元気いっぱいになっていた、迂闊だ。
三日間のバトル終了で気が緩んだのか、余韻に浸っていたのか・・
奥様達には見なかったことにしてもらった。
ブラウがなぜか残念そうにしているが、君はまだ早い。
今日の順番は回ってこないので悪しからず。
奥様方と朝食を取り、交流都市へと向かうと市長が待っているので至急訪ねるよう言われたが、何か事件でも起きたのだろうかと不安になった。
好事魔多しとも言う。
ノアルと過ごした恍惚の時間を好とすると魔が待っている可能性は高い。
まあ案ずるより産むが易しとも言う。
余り急がず市庁に向かうと。待ってましたとばかりに助役?が駆け寄って来た。
市長が首を長くして待っているらしい。
面倒ごとならば避けたいところだが、
市長の手前そう言う訳にもいかないので会いに向かうと、
やはりここでも待ち兼ねていたようだ。
挨拶もそこそこに相談を受けたが、内容はプトレ王国の領事館を
交流都市に建てたいとの申し出だ。
別に建てたければ希望通りに建てれば良いだけだが、
四か所も建てることを望んでいるので、
それを一つにするよう何とか交渉して欲しいとのことだった。
その様な我儘は無視して一カ所の許可だけを出してしまえばいいのだが、
そうはいかないらしい。
申し出たのがアグラットだ、なぜか市長は彼女に頭が上がらないらしく、
申し出を拒否できない。
それで俺に相談を持ち掛けたのだ。
「俺からアグラットに言っておきますので、一カ所の許可だけ出して下さい。
お願いします。」
市長としては土地が余っているので問題はないが、
王国の領事館が小さな都市に四カ所というのは見過ごすことはできない。
アグラットに何故そのような妙な申し出をしたのか聞いてみると
国王に頼まれたので言っただけで、別段他意は無いとのことだ。
早速国境砦へと向かいマルカジーリさんに事の真相を確認すると
国王、宰相、内務卿、軍総司令の別荘を兼ねて
建てる様になっているとのことだ。
少しムッとしたので、俺が市長に頼み一度出した許可を取り消すことにした。
帝国と王国も蟠りがないように俺が悪者になればいいだけだ。
それにしても別荘などと怪しからん・・・それもありだな!
市長に会い別荘の件を話と、すでに建設予定のとのことだった。
皇女の来都に合わせ完成予定で、都市内で一番見晴らしの良い場所に建てる。
アグラットと綿密な打ち合わせの上、
三階建てで一階部分は親衛隊の詰め所を兼た宿泊所。
二階部分は奥様達+市長の寝室+防衛施設、三階部分は俺の部屋とした。
地下には数か月分の食料を保存できる倉庫を作るとのことだが・・
ちょっとだけロンヒル街の城塞を思い出したが、それを模したらしい。
俺の知る別荘と様相を異にするが、仕方がない。
奥様達の度重なる相談上にこのようになったのだ。
俺が今更文句を言うべきではないだろうが、
できればもっとのんびりとした作りにならなかったのだろうか。
俺の住処は物々しい!!!




