養女
皇帝陛下は晩餐が終わり次第帝都へ帰ることになった。
プトレ国王は何処かに逃げ去ってしまっている。
やれやれと思いながら、俺も帰るかとアイラに告げようと探してみると
居残り組の帝国の紳士たちや王国の騎士たちに何やら言い寄られている。
これはどうしたものか、割って入った方が良いのか悩む暇もなく、
魔法を使おうとアイラが身構えた。
その瞬間、さすが皇帝や国王の御付きだ、瞬時に退避していった。
アイラの男性への攻撃癖はそう簡単には治らないようだ。
退避した男性陣も大したものである・・と言うか懲りない。
次はディアナへと向かい話しかけ始めたら・・・説教が開始された。
ディアナ手強しと思ったのか、次に向かったのが大福たちの方だ。
大福たちはこの様な事に慣れているのだろうか、終始笑顔で対応しているが
逆に男性陣の方の顔が強張り始めた。
大福たちは魅了のスキルは使っていないが、
そばに寄ってくる男性たちから遠慮することなしに精力を奪っていた。
これが噂に聞く野良のサキュバスのテクのようだ。
男性陣は大福たちを避け今度はブラウとケイの方へと足を向けるが、
流石にこれには俺もムッとしてしまい、
思わずブラウたちの方へ駆け寄ろうとしたら・・・
男性陣は圧に押され早々に撤退した。
ブラウたちの後ろにはアグラットとメルテが
凄いオーラを放ち威嚇していたのだ。
まあ、あれに耐えることが出来る奴はそういないだろう。
俺でも一瞬たじろいでしまう。
ノアルはエルフの女性陣に囲まれている。
よく見ると皇妃が側についており男性陣としても簡単には近づけない。
ある意味鉄壁にガードされている。
「いや~、流石総督の奥方たちだね、凄いよ。
男性の扱い方に長けているね~。」
いつのまにか国王陛下が戻ってきている。
国王は今後俺がどのように振る舞うのか気にしているようだ。
現状の維持か、勢力の拡大か・・・
彼は俺がこのまま大人しくアザリア州に留まるつもりはないと
感じているようにも思えるが俺には野心や野望など一切ない。
しかし俺の持つ力を思うと色々考えてしまうのだろう。
「陛下は俺に何かやらせたい事いや、やって欲しい事とかあります?」
「別にないよ、だがね・・
世間は何か期待しているようにも思えるんだよね。
貴族連中の中にもいるかもしれないが、領民が特にね。
君は王都、いや王国を変えたじゃないか。
もっと良くなると領民は期待してしまうんだよ。
その証拠が移住さ、君がアザリアに移って以来結構増えているだろう。
それはね、君対する期待の表れのさ。」
その様に言われると嬉しい反面、
期待に応えないといけない義務のようなものを感じ嫌気も差す。
「領民の期待に応えないといけないのは国王陛下自身ですよ。
俺にはその期待は重荷でしかありませんので、期待されると困ります。」
俺は近いうちに総督の座から降りるつもりだ。
後任を見つけ次第降りることが出来れば降りる。
これは確定事項だ。
今はまだ口にはしないが、そのうち皆に告げなければならない。
今はまだその時期では無いだけだ。
帝国との和平が成立し同盟でも連合でも結べればそれで俺の仕事は終わりだ。
それまでに何とか後任が育ってくれれば嬉しいのだが・・・
皇妃が俺の所へ挨拶に来た。
放っておいてもらえる方が嬉しいのだが総督という立場がそうさせてくれない。
かなりご丁寧なご挨拶だ、卑屈なくらいに丁寧な挨拶を受けた。
「まさか、アグラット様やメルテ様のご主人様とは存じませず、
大変なご無礼、平にご容赦願い申し上げます。」
アグラットやメルテに敬意を払っての事だ。
別段俺は無礼を受けたとは思っていないし
そこまで丁重な扱いを受ける器でもない。
その様に伝えると益々敬意を払われ困ってしまった。
「その辺にしておきな、旦那様が困ってるじゃないか。
それに皇妃たるものがそこまで卑屈になるんじゃないよ。」
アグラットが困っている俺を見かねて助け舟を出してくれた。
「ところで本気かい? ノアルをあんたの養女に迎えたいって。」
ノアルを皇妃の養女とし俺に嫁いだ形にしたいらしい。
その真意が何か測りかねるが、これはノアルの判断に任せたい。
確かに俺の奥様連中は全員元貴族だ。
そのことに多少ノアルが引け目を感じていることも知っている。
奥様連中がノアルを下に見ることは一切ないのだが、
帝国内において元は下民にあたるノアルは
どうしても自分を卑しいものだと思ってしまうようだ。
その点を皇妃は考えてくれたのかもしれない。
俺の奥様の中でエルフ族はノアルだけだ。
それもダークエルフだ、それを憐れんでのことかもしれないが、
この問題はノアルに任せ他の奥様方がノアルの相談相手に
なってもらえれば俺は何も言う事はない。
「ええ、本気です、それで提督殿の許可を頂きたくお願いにまいりました。」
「全てノアルに一任しますが、ノアルの相談くらいは受けますよ。」
「ありがとうございます、これで決まりですね。」
皇妃はすごく喜んでノアルの方に行ってしまった。
この事が後に自分で自分の首を絞めることになろうとは想像もしなかった。
やはり後悔後に絶たずだ!!!




