停滞
教育は人格形成において重要なファクターだ。
机上の学問も大切だが、それ以上に重要な教育は情操教育にある。
それを行うのは保護者の義務であり人の成長において多大な影響を与える。
決していい加減な教育を行ってはいけないのだが・・・
えっと・・アイラたちなにしているのかな?
ケイの教育? へぇ~・・子が出来るまでの過程って・・
教育の一環? へぇ~・・まだケイには早いんじゃないの?
タイミングが重要? ねぇ~・・それって関係ないのでは?
俺のタイムミングって・・何のタイミング?
発射のタイミングって・・・却下です!
我が妻たちの協力の仰ぎ、ケイの教育を手掛けている。
妻たちの教育の熱心さには圧倒される。
情操教育には周りの人たちの協力も重要だ。
保護者が如何に健全な教育を行おうとも、
周りにいる人たちの影響を強く受け思わぬ、または望まぬ教育結果を招くこともある。
思わぬ方向にケイの教育が行われている気がするのは俺だけだろうか。
朝早くに従者を50人ほど引き連れ想像以上に尊大に振る舞いながら、
メネス帝国の皇帝が国境砦までやってきた。
威厳を保とうと必死なのか、生まれつきなのか、
敗戦による降伏など歯牙にも掛けぬと言った感じだ。
しかし上国の皇帝が一地方に赴いたのだ。
如何に敗戦国とは言え無下にする習慣は俺の元の世界には無かったはずだ。
俺は皇帝に対し危害を加える意思が無いことを証明する意味も込め、
迎えに出ることにしたが・・・・
「控えぬか、無礼者め!
メネス帝国皇帝陛下の御前である。脇に下がり跪き控えろ。」
列の中の騎士が飛び出し俺の目前までやってきて、
俺は不審者扱いされてしまった。
俺は彼らかすれば、不審者と思えたかもしれない。
「えっと、俺はアザリア自治州総督のノーヴ・ロンヒルだが
それでも控えろ、って言うつもりかな?」
俺は見た目からして総督と言うには見窄らしいのかもしれない。
・・・ちょっとだけショックだ。
帝国の騎士は驚き慌てたように釈明した。
「勝者が敗者を迎えるとは思いもしませんでした。
ご無礼の程お許しください。」
こちらの世界の常識はやはり元の世界と異なることを改めて思い知った。
勝者と敗者の関係以外には力関係は存在しないのかもしれない。
長い歴史を持つ国は大国、新興国は小国とか関係ないのか?
大国と小国の関係などは無いに等しいのか・・謎だ。
民族的風習も関係している可能性もあるし、
その様な事を理解せず相手国と仲良くすることなど
可能なのだろうとか考えてしまう。
相互理解の精神などを世に知らしめ広めた人は偉いな~・・
この世界でもその理念が広がれば民族間や国家間の争いももっと減るかもしれない。
誰か広めてくれと願うばかりだ・・・・俺じゃ無理だし。
「会議は踊る、されど進まず」とか言う言葉を聞いたことがある。
あれは元の世界の歴史上、最初に開かれた多国籍国際会議だったような・・
あの会議は意図的に進展を遅らせた?
いや進めなかった感さえ伺える。
帝国との会議は進まなかった。
皇帝は俺の望みを言えの一点張り。
俺の望みは無い、の一点張り。
俺から出した要求はあるのはあるのだ。
「今後一切、アザリア自治州に関わらないで頂きたい。」
関わるなと言うと、それは望みとは言わないらしい。
要は、領地、賠償、奴隷の要求を行うべきだと言う。
そのようなモノを望むことは無い。
今回の戦争で費やした戦費はほとんど無いし、
領地が広くなったら面倒が増えるだけでメリットはない。
金も困ってはいないし、奴隷など以ての外だ。
魔族は人口を増やそうにも、子が出来辛い種族だ。
人口が増えれば別だが、広い領地を持てば管理が行き届かない。
必要以上に人口が増加してもこれも問題が様々な形で起きる。
まあ増えないよりは増えた方が良いのだが・・・
皇帝は腹を探っているのではと俺を警戒している。
周りの家臣たちも世間話程度しか口にしない。
「いや~、奥様がお美しい。」
「いや~、夜はお盛んでしょう。
お若いからその辺りは羨ましいです。」
「いや~、どうのようにしたらその様なお美しい奥様を
娶ることが出来るのですかな?」
「いや~、ご子息、ご息女も数多くおいでになるのでしょうな。」
話すことがないので、在り来たり?な会話が続く。
しかし、エルフの国も女性は美人が多いはずだが、お世辞が上手くないか?
「このままでは埒が明きません。
如何でしょう、お互いの国で相手に要望書を
御作りになって交換すると言うのは。」
二日後に会議の再開を約束し、皇帝は引き上げた。
早く会議を終わらせたい!!




