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第47話 ”似た者同士”



 修一の提案を否定したのは、シンシアだった。


「修一がそこまでする必要ありませんよ。行程に遅れは生じていませんし、当初の予定を変えるつもりはありません。このままでいいんですよ、修一」

「けど、こんなことになってるのは、俺が巻き込んだからだ。俺があの夜、シンシアの腕を掴んだのがそもそもの発端だ。俺に責任がある」


 それでも食い下がる彼の顔を見ながら、シンシアはどうしたものかと憂慮していた。

 寿命を二年分差し出すと言ってのける彼の『責任感』を何とか押し留めたかった。こんなにも簡単に、瞬時に命を投げ出す決断を下す彼を見て、彼女は少々空恐ろしい思いがした。もし、もっと切羽詰まった事態になったらどうだろうか。彼は状況打開の為に、より重い代償すら厭わないのではないかと思う。それこそ言ってしまえば、自らの命と引き換えだとしても彼は構わず突き進むことを選んでしまいそうだった。それは『責任感』という言葉の範疇を大きく超えた『行き過ぎた責任感』なのではないかと、彼女は憂いた。


「では、こうしましょう。予定通りに進んで問題ないかどうか、私の千里眼を使いましょう。それではっきりします」


 まっすぐに修一の目を見て告げるシンシアの思いとは裏腹に、彼は歯痒い思いを抱えていた。


「そうしたら……それじゃ、俺はいつも頼ってばかりだ。俺がすぐに役に立てそうなのは、これくらいしかない」

「だからといって、そんな……私は賛成出来ません」

「なら、何故ラウラに追加で、村まで帰還する場合の対価を聞いたんだ? 十年分の寿命は確かにでかい。対価を払った瞬間に、寿命を迎える可能性を否定出来ない。それじゃ妹を確実に救うには、リスクが大きすぎる。なるべく対価が押さえられるような手段を考えた結果、あの問いになった筈だ。シンシアだって、命を張ろうとしてるのは変わらないだろ」


 修一は早口で捲し立てた。シンシアの瞳が段々と陰っていくのを感じながら。不本意にも彼女を傷つけていると自覚しながら。


「シンシアの妹を助けるのは、シンシアにしか出来ない。何の能力もないこの俺じゃ助けようにも方法が思いつかないし、適任じゃない。だけど、この代価を払うのは俺にも出来る。結果も変わらない。だったら、それは俺だって良い筈だ」

「……それでも、いいんですか? そこまでしてもらっても、私は何も返せないかもしれません。確かに私は、アリシアを救う為にある程度の犠牲を払う覚悟をしています……ですが、その犠牲はあくまでも私自身が被るべきであって、他者ではありません。身代わりになってもらっても、私はそれに見合う何かを返せる自信がないから……修一には、危険な橋を渡って欲しくはありません」

「別に、いいさ。俺がそうしたいからそうするだけで。……葬送(おく)りに同行した時と一緒で、そうするべきなんだと、最初から答えは出てるんだ」


 シンシアは修一の言葉を反芻する。

 しばしの沈黙の後、彼女は小さく笑った。このままいっても話は平行線を辿るだろう、その理由がはっきりわかったからだった。


「……結局考えていることが、似た者同士というわけですね」

「ん? 何て?」

「いいえ、なんでもありません。改めて提案します。私の異能力を使います……それでもし懸念が生じた場合、ラウラに頼みましょう。視たものに嘘は言いません」


 シンシアは、修一の顔を正面から見た。その瞳にはもう憂いも影もなかった。


「修一の二年分の命を、私にください」




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