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第13話 街道にて

 シンシアの先導で、修一は街道をひたすら歩いている。

 天気は幸いにも崩れそうな気配はない。気温も適温で、時折吹いてくる風が心地いい。

 だが、太陽は早くも頭上近くまで上がっている。シンシアが修一の体調を気遣い、こまめな休憩を入れているからだ。

 ペース配分に不安を抱いている修一の気配を察したシンシアは、焦る必要はないと彼に釘を刺した。


「水の調達に川にも立ち寄って、少し時間を掛けてしまいましたから。それでもあと二時間もすれば到着する筈です」

「そうか……あと、助かったよ。これ。まさか腰のポーチにこんなもの入ってるなんて」


 修一は、肩ひも付きの水袋が脇腹の位置で揺れているのを見ながら言う。

 川から水を汲むのを買って出たにも関わらず、結局上手く出来ずにシンシアと交代することになった修一は、せめてこれだけでも、と水の運搬を申し出たのだった。


「それにしても、街道沿いに歩いているとはいえ、地図なしでよく道がわかるな」

「飛ばされたあの場所については、以前周辺地図を見たことがありましたから。それに、だいたいですがどの街道でも南へ辿れば城郭都市に繋がるようになっています」


『城郭都市』とオウム返しに聞いた修一に、シンシアは続きを説明する。


「この世界の村々は、基本的にある理由から排他的で、独自に生活圏を築いています。そのため文化的発展具合も様々です。城郭都市は修一のような転移者が多く集い、その知識や能力が利用され更に発展する……その好循環で成長し続ける都市です」

「なるほど。一極集中的な都市構造ってわけか」

「ええ。物資も人も都市へと運ばれる……その過程で街道はおおよそ整備されました。そのため、城郭都市に辿り着きたければ南下するのが基本です」


 言葉がひと段落するのを待って、修一は疑問に思った点を彼女に尋ねた。


「さっきある理由で、って言ってたが……」


 問いを受けた彼女は、少し言い淀んだ。どう説明したらいいものか、彼女も思い悩んでいるのだろう。シンシアが小首を傾ぐ度に、頭の両サイドに着けた髪飾りが陽光を反射した。


「これは、その。仕方のないことでもありますし、まことしやかに囁かれている迷信と切り捨てることも出来てしまいます。つまり、要は怪物絡みなのです」


 歯切れが悪い上に、要領を得ないが、黙って聞くことにする。


「曰く、受け入れたよそ者が突如として怪物と成り、ある村は滅んだ。曰く、怪物は人に化ける。故に、知らぬ者、特に転移者は排除せよ、と」

「つまり、道中で立ち寄らざるを得ないが、村々では歓迎されないことの方が多いだろうと、そういうことか……」

「はい。入村すら出来ずに、問答無用で攻撃される可能性も頭に入れておいてください」


 シンシアは足元に転がる小石を蹴った。勢いよく飛んだそれは、数メートル先で左に向かって曲がってゆき、脇の道草に紛れて見えなくなった。

 修一は言葉が見つからず、沈黙が二人の間を流れた。頭上を、一羽の鳥が飛び去って行く。

 歩みは止めず、首を下に落として自らの両の掌を広げて見つめたままのシンシアを、修一はちらちらと横目で見ることしか出来なかった。

 そのまま時が流れ、彼が重い沈黙に耐えかねた頃、前方から荷を引く馬の姿が見えた。側には中年らしき男もいるようだ。

 シンシアは修一の方をちらりと見やると、行商人へと駆け寄った。


「いらっしゃい。旅のお方とは珍しいねぇ」

「缶詰を二つ、頂きたいのですが」

「そうさね。銅貨二枚でどうだい?」

 

 行商人の男は、修一の恰好を一瞥してからシンシアの方に向き直った。

 柔和な笑みを浮かべて対応するが、一方でシンシアは顔をしかめた。


「中身はなんです?」

「鶏さね」

「なら、銅貨一枚が相場の筈ではありませんか?」


 彼女の指摘を受けても、男は黙って人差し指を振っただけで、受け入れない。

 その様子を見ているしか出来なかった修一は、行商人に一泡吹かせようと、一計を案じることにしたのだった。





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