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短篇

月と星

作者: 不知火 初子

「こんばんは。私は夜空です。これから私がお月様に聞いた話をします。

 どうぞ、良い夜をお過ごしください」

 


 夜空の星たちは、思いました。


 この街は、いつも電気の灯りで明るい街です。

 だから、この街は、ぼくたちを必要としていないのかもしれません。

 この街は、もう、ぼくたちを見上げることはないのかもしれません。


 星たちは、お月さまに言いました。


 お月さま、どうかお願いをきいてください。

 ぼくたちを必要としてくれるところへ、行かせてください。

 ぼくたちを見上げてくれるところへ、行かせてください。


 お月さまは、答えました。


 この街は灯りがたくさんあって、いつも明るいけれど。

 わたしは、星たちが去ってしまうのは悲しいよ。

 星たちを見上げることはできないけれど、となりに一緒に並んでいることはできるよ。


 お月さまには寂しそうに、そしてお願いをするように、星たちに言いました。

 けれども、星たちは頷きませんでした。


 お月さま、とても嬉しい言葉をくれて、ありがとう。

 楽しい思い出をありがとう。

 だけど、ぼくたちは、ぼくたちの光を見てくれるところへ行きたいのです。

 ぼくたちは、ぼくたちのことだけを探しているところへ、行ってみたいのです。

 だから、どうかお願いを許してください。


 星たちの言葉に、お月さまは涙を流しました。

 それでも、お月さまは星たちに頷きました。


 ここから離れてしまっても、わたしは星たちのことを忘れない。

 この街の夜空に、星たちがいたことを忘れないよ。


 そして、お月さまは言葉を贈りました。


 どうか、星たちがまた輝くことができますように。

 どうか、星たちがまた街に求められますように。


 お月さまは、星たちが去っていくのを、静かにいつまでも、いつまでも見守っていましたとさ。



「おしまい」

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