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90話 強制力には抗えない

♦︎♦︎♦︎

倒れた騎士は、そのまま起き上がって来ない。

いきなりの事で何が起こったのかわからず、観客は皆ザワザワしている。


対戦相手だった騎士団長が駆け寄り、声を掛けているものの、応答がないようだ。

すぐに救護班の人達が彼を担架に乗せて運んでいく。


「えー、申し訳ありません。只今の結果は第四騎士団長の不戦勝ということになります」

進行役の女の人も若干声が上擦っているが、何事もなかったかのように御前試合は続いていく。


途中、国王の元に人が来て、何かを耳打ちしていたから、彼が倒れた原因が分かったのだろう。

それを聞いた父が、思いっきり顔を顰めていたので、何か大変な事が起こっていたに違いない。

けれど、何を言っているのか、ここからは分からなかった。


結局、私の兄、クラークは準々決勝敗退。ディアナの兄、イーサンは去年と同じく準決勝止まりとなった。


だが、私はさっき倒れた彼が、ゲームの中で出てきた劇薬のある症状に似ている気がして、あまり試合に集中することが出来なかった。


♢♢♢

「お疲れ様でした。お兄様」

「格好悪い所を見せちゃったけどね」

「いえ、そんな事ありませんわ。とても素敵でしたよ」


御前試合が終わった日の夜。本当なら父と3人で、晩餐時に兄の健闘を讃えようと話していたが、父が一向に帰って来ない。

こんな時、私はどうしたら良いの。


先に2人で夕食を食べておく?

でも、もうすぐ父が帰ってくるかもしれないし…


父を待つ?

でも、父は、突然の用事で日が変わるぐらいに帰ってくる事も多いから、これ以上兄の夕飯を先延ばしにするのも…


この2つの考えで揺れていると、玄関の方が騒がしくなった。


急いで玄関まで行くと、案の定父が帰っていた。

兄も既に玄関にいて、2人で話し込んでいる。


うーん。お帰りなさい、って言いたいけど、父と兄の雰囲気を見ていると、話しかけづらい。

部屋に戻ろう、と思い、踵を返した瞬間、私に父が気付いたようだ。


「すまない。ミア、遅くなってしまったね」

「いえ、お帰りなさいませ。お父様」


「クラーク、よくやった」

「ミアが来ているのに、わざと負けないといけないなんて…」

…ん?今、すごい言葉が聞こえたような…


「いくらお前が強くても、騎士団には位の差がある。

騎士団の権力構造は、貴族の中でも異質だ。あそこでは、騎士団長達が1番偉い。私が何か言うことも難しいくらいだ。今後、イーサン殿のように騎士団長達に目の敵にされたくは無いだろう」

「確かに、危険な任務ばかり回されたくはありませんが…」


釈然としない、といった兄の顔になんとなく話が見えてくる。

騎士団の中でイーサンの名前を聞かないのは、去年目立ちすぎたせいで、騎士団長に目をつけられてしまったからだったのね。


「続きはサロンで話そうか」

「え、あの、お父様…?」

無表情でスタスタと歩いて行く父と兄に続いて、サロンに入る。


部屋に入り、ソファに父がいつもより乱暴に座り、その横に兄がため息をつきながら座る。

「今日、御前試合で倒れた騎士がいただろう。彼が倒れた原因が、この間話した劇薬を摂取してしまったことらしい」

「あ、あのお父様。その劇薬というのは、一体どのようなものなのですか」


私の言葉を聞いた瞬間、2人の顔が強張る。

え、私、何か聞いてはいけない事を聞いてしまったのかしら。


2人は視線で何かを話すと、兄が私の方に向き直った。

「その劇薬の主な原材料はね、粉状にした魔石なんだよ」


あぁ、やっぱり、この世界は(悪役令嬢)が何もしなくても、事件が起こってしまうのね。

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