72話 相手は都市伝説
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ハンナはアルバートの言葉に目を見開く。
「…嘘よ、私、確かに聞いたもの」
「ですが、周囲の人にも確認した所、10年前私がそんな言葉を言っている所は誰も見ていません。第一、君にはずっと敬語で接していたはずなんです」
ハンナは心当たりがあるのか、言葉を詰まらせた。
「そう、でした。でも確かに私は聞いて…」
「実は、貴方の専属メイドが、私の有る事無い事を吹き込み、貴方を精神的に不安定にさせていた事が新たに分かりました」
「何ですって!」
聞くことに徹していようと思っていたのに、思わず声を出してしまう。
「当時働いていたメイドの証言です。信憑性は高いと思います」
「その人の行方は」
「その後の消息は分かっていません。ですが実は、自分達が気に入った仕事のみを請け負うという、トラプラ団の一員だったかもしれないんです」
「え、嘘…」
トラプラ団と言えば、都市伝説のようなものである。
人数、構成員不明。
どうしてそう呼ばれるようになったかも不明。
全てが謎に包まれ、どんな目的で活動しているのかも謎に包まれている。
「どうして、トラプラ団の人だと思われたんですか」
「実は、本人から手紙が届いたんですよ。『貴方が最近、私の事を嗅ぎ回っているのは知っている。けれど、10年前の事はNo.12の命令に従っただけで、何も知らないの by No.1』とね」
「No.12の命令…しかもNo.1が実行犯ですが…」
ほとんど何も分からないトラプラ団だか、1つだけ分かっている事がある。
それは、No.11、No.12、No.13と呼ばれる3人の幹部、そして団長ジャックの4人が団を率いていること。
そして、構成員は全員数字で管理されているということ。
3人の幹部については年齢は分かっていないものの、No.11とNo.13は男性、No.12は女性であると言われている。
団長ジャックについては年齢、性別全て不明。
どの事件にどの様に関わっているかすら分かっていない。
「No.12の命令で動いた事件はほぼ耳にしませんが…」
「No.12は3人の幹部の中でも、1番存在感が薄いですからね。ほぼすべての事件がNo.11とNo.13によって引き起こされたものですから」
「もし良かったら、トラプラ団について分かっている事があれば教えてくれませんか」
何とも言えない嫌な感じがして、アルバートに尋ねる。
だが、アルバートは困った顔をした。
「私も詳しい事は何も分からないのです。だが、新たに分かった事があれば、すぐに連絡しましょう」
「よろしくお願いします」
予想外の言葉に驚いたが、素直にお願いする。
「君には恩がありますから。私にできる事があったら、いつでも助けますよ」
「ありがとうございます」
「ところで、ハンナ嬢は私と一緒に帰国するという事で良いだろうか」
「はい、構いません」
「では、それまでの間、こちらがホテルを用意しよう」
「いえ、出立までの間、私はミア様の侍女として仕えます」
私とアルバートはハンナの言葉に驚く。だが、ハンナの強い意志を感じ、何も言えなかった。
「嬉しいわ。あと少しの間だけだけど、いっぱいお喋りしましょうね」
「はい、お嬢様」
2人でふふっと笑い合った。




