66話 ハンナの為に
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3日後、全てのクラスの出し物と、美少女コンテスト出場者の名前が貼り出された。
色んな大会出場者の名簿が貼り出されていたのだけれど、あんまり興味が無いし、覚えていない。
貼り紙に出ているの名前を見て、やっぱり断れば良かった、と後悔した。
1年生は、私のクラスの他に、あと1クラス劇をするのだが、ヒロイン役はソフィア。ちなみにヒーロー役は一緒に留学に行ったジャック。内容は、王道の恋愛もの、とまる被り。
しかも、文化祭の劇部門審査員生徒代表は、ヘンリー。
美少女コンテスト出場者の名簿表に目を向けるとそこにもソフィアの名前が。これは投票制だが、大会運営の責任者の名前は、またしてもヘンリー。
他の大会や審査員にヘンリーは入っていない。他の生徒会の人は、3部門以上の審査や責任者を兼任しているにも関わらず。
ヘンリーは、公務が忙しくなってきた為、2つだけ担当する事になったらしいが、その2つが偶然ソフィアが参加するものと同じとは思えない。
ソフィアが「ヘンリー様が私が心細くならないように、私が参加する大会は責任者になってくれたんです」と大声で友達に話していたから、2人が示し合わせたのは全員が分かっている。
これはもう、呆れて何も言えない。
ソフィアは、私が近くにいることが分かると、ふふん、と私を見下すように見てきたが、別にヘンリーの事を何とも思っていない私からすれば、何のダメージにもならない。
むしろ、何であんな事を大声で言えるのか疑問だ。
「どう思う、ハンナ?」
「その男、ミア様の婚約者なんですよね。最低過ぎます」
家に帰ると、メイドの誰かにその日にあった事を聞いてもらうのがいつもの日課なのだが、最近は、ハンナに聞いてもらうことが多くなった。
ハンナは、海賊船で知り合った孤児の子だ。
あの後、父に頼んで、メイドとして雇ってもらう事にしたのだ。
文字の読み書きも問題なく行えるし、礼儀作法も1度教えたらできるみたい。
とても優秀な子ですよ、とメイド長が褒めていた。
年齢は16歳らしいのだが、何でもズバッと言ってくれるので、ついつい色んな話をしてしまう。
「簡単に婚約破棄できない事がもどかしいですよね」
「そうだよね。出来るなら、こっちから婚約破棄したい」
紅茶を淹れている彼女をチラリと見る。
本当に綺麗な所作だ。
彼女は多分、元貴族では無いだろうか。
文字もはじめに書いてくれた時から綺麗だし、食事のマナーもばっちりだ。
しかも、婚約破棄の手続きが大変だ、なんて知るわけがない。
年齢から考えて、習うのはもう少し上の年齢になってからだから、自身の身に起きたのだろうか…
「どうかなさいましたか?」
「いえ、何でもないわ」
にっこり笑って、紅茶をいただく。
「美味しいわ」と言うと、ちょっと嬉しそうに「ありがとうございます」と返してくれる。
何が彼女の為になるだろうか。
こんな事を考えながら、私はヒューゴとエミリアを呼んだ。




