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7話 やっぱり心配だから

♦︎♦︎♦︎

「私に、この家の影の方を1人、ください」


この答えを聞いた兄は頭を押さえた。

それもそうだろう。影、というのは隠語だ。


護衛はもちろんのこと、諜報、尋問などを主に行う、我が家のスーパーエリート使用人集団のことだ。


それを学園の入学祝いに欲しい、と言ったことは、学園で何かしらの諜報、尋問を行う場面が出てくるかもしれない、と考えていることになる。


「今日は、本当に驚くことばかりだよ。どうして、この家の影が欲しいんだい?」

「実は本日、王太子殿下が、僕は未来の王である自覚を持って、という言葉を多用していました。ならば私も、未来の王太子妃として、色々なことを学んでいこうと思って」


兄には、私の前世の事、これから起こる事を、正直に話すわけにはいかない。

今、思いついた言葉を適当に並べて、説得を試みる。


「ならば、別の方法もあるだろう。どうして、それにこだわるの?」

兄としては別の贈り物にして欲しいのだろう。

でも、これから情報が必要になる場面が絶対に出てくる。その時、信用のおける者が必要だ。


「お兄様。王家に嫁ぐならば、新しい情報をいち早く仕入られる能力は、絶対に必要ですわ。私ももう子供ではなくなります。ならば、未来の準王族になる身として、自分の裏の護衛を持ってもいいと思いますの。誰かを不当に不幸にさせるためには用いません。どうか」

そう言って私は兄に頭を下げる。


「…ミア、準王族になる覚悟を持つならば、軽々しく頭を下げてはいけない」

兄から返ってきた言葉は厳しいものだった。


「し、しかし」

バッと顔を上げる。諦めるわけにはいかないのだ。


「分かった。ミアがそこまで本気ならば、父上に僕も一緒にお願いしてあげよう」

「…!ありがとうございます、お兄様」

承諾の答えに驚いたが、すぐに嬉しくなる。


すると、少し悲しそうに笑う兄が、ぽんぽんと頭を撫でてきた。

「もう、子供の時期はもう終わってしまったのだと思うと、存外悲しいものだな」

「私はまだ子供ですよ。これから大人になろうと努力していくんです」

「ふふっ、そうだね。妹の成長は、兄として喜ばなくてはね」


その後、馬車の中は和やかな雰囲気だった。いつも通り、兄とたわいも無い話をする。

ガタッといって馬車が停まった。

「じゃあ、父上のところに行こうか」

そういって兄が手を差し出してくれる。


さあこれが、これから訪れる困難への第1歩だ。

♢♢♢

2日後。


「本日付でミア様の専属メイドになりました。エミリアと申します」

「同じく、本日付でミア様の専属執事になりました。ヒューゴです」


結果的に父は了承してくれた。しかも私は1人、と言ったのに、2人つけてくれた。本当に感謝しかない。これからもっと仲間を増やしていかなくては。でも、その前に。


「よろしくね、2人とも。早速なんだけど、行って欲しいところがあるの」

「「はい、何なりと」」

「今から、第2王子の護衛に行ってくれるかな、明日の朝まで」

「「…はい!?」」


「一体どういうことですか」

ヒューゴが納得できない、という顔をして詰め寄ってくる。


だが、今日の夜、ノアが襲われるはずだから、護衛に行ってほしい、なんて言えるわけがない。

強引にでも、行ってもらわなければならないのだ。


「これは命令よ、詳細は話せないわ」

2人ともグッと押し黙る。その後、渋々といった感じで了承してくれた。


実は、ノアがもし殺された時のために、入学式の代表挨拶はもう準備してある。ゲームでは、ミアが務めていたからだ。


もし、このことをノアが知ったら、どう思うだろうか…


今日ノアが襲われたならば、私は濡れ衣だった可能性が大きくなる。


結果はどうであれ、どうか、ノアが無事に明日を迎えられますように…

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