62話 予想外の連続
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クレシリス伯爵の1件があってから、私は多少、お茶会や夜会には参加したものの、ほぼ領地に籠っていた。(私は色んな所に行きたかったけれど、父と兄が許してくれなかったのだ)
だが、今日でそんな生活も終わり。今日から2学期になる。
久々の外出だから、いつもより学校が楽しみだ。
「ミア様、お久しぶりです。お元気な姿を見られて、何よりですわ」
上品に話しかけてくれたのは、ディアナだ。
「ディアナ様もお元気そうで良かったです。この間はお茶会に誘って頂き、ありがとうございました」
「楽しんで頂けて何よりですわ。そうだ、あの時お話しした…」
たわいも無い話をしながら、教室に入る。
「お、久しぶりだな!」
「ミア様、ディアナ様、お久しぶりです」
既にアイリーンとフェリシアは学園に来ていたようだ。
夏休み中、私達4人で話せる機会なんてなかったから、どんな事をしていたのかなど、色々な話で盛り上がった。
♢♢♢
クラスで宿題が集められるなど、ホームルームが行われた後、生徒達はホールに集められた。
毎年恒例、長い長い学園長の挨拶があるのだ。
話半分で聞き流していると、いつの間にか話は終わっていた。
本来ならシーンとしているはずが、急にざわざわし始める。
けど、私はルイスの言っていた『あの御方』について考えていて、すぐには何が起こったのか分からない。
次は留学生の紹介だったはず…と思い、ふと壇上を見ると、そこにはアルバートが立っていた。
アルバートとはからくり時計塔の1件以来、何度か社交辞令的な手紙を交わしただけだ。
だが、彼は1国の王子、しかも王太子が隣国に留学に来るなんて事は滅多にない。
ましてや婚約者もまだ決まっていないので、女子生徒達の目が一気に肉食獣的なものに変わったような気がする。
これに関しては、アルバートにご愁傷様と言うしかなかった。
♢♢♢
2学期が始まって初日は、始業式しかない為、午前中で学校が終わる。普通なら皆さっさと家に帰るのだが、今日はある一ヶ所に人が集まっていた。
第1学年と第3学年の成績発表に不手際があり、順位に誤りがあった為、訂正版が貼り出されたのだ。
結果なんと1位が私。2位が1点差でアイリーン。ちなみにソフィアは118位という結果になった。
結果を見て、どんな不手際だ、と吹き出しそうになったがなんとか堪えた自分を褒めたい。
「くそ、1点負けた!!」
横でアイリーンが悔しがっている。
それでもアイリーンは全てのテスト95点以上のはずだから、本当に凄いと思う。
私なんて、習うのは2回目である上に、この世界ではまだ発見されていない計算式まで使っているのだから、大分ズルしているようなものだ。
「次は絶対に勝つ!」
不貞腐れた顔をしたアイリーンがビシッと私を指差す。
でも、その後に笑顔になる所が彼女らしい。
ぐすん、と不意に誰かが泣いていることに気付く。
声の方向を向くと、そこにはソフィアが立っていた。
「酷いです、ミアさん。いくら私の事が気に入らないからって、嘘の順位を貼り出すなんて…」
ハンカチで目元を押さえ、泣いている風を装っている。
でも、涙が出ていないのはどう見ても明らかだ。
しかも、いつの間にか、『様』から『さん』付けに変わっているし。なんか、軽く見られ始めたみたいで悔しい。
「いくら私がヘンリー殿下と仲良くしているし、本当の成績が上だったからって、こんなやり方は無いんじゃないですか。あんまりです」
大声で喚きながら泣かれてしまい、周りは不快そうに眉を顰め、私はどうしたら良いのか困惑を隠せなかった。




